著者
宮田 幹夫 奥 英弘 福島 一哉 堀内 浩史 難波 龍人
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

スギ花粉症の増加が近年種々話題になってきている。今回実験スギ花粉症におよぼす生活環境因子の検討を試みた。その結果身近な環境汚染物質りある、有機燐殺虫剤、有機燐除草剤、トリハロメタン、パラジクロロベンゼン、タバコ煙、食品色素としてタートラジン、および赤色3号、食品酸化防止剤などがスギ花粉によるモルモットのアレルギー性結膜炎を増悪させることが判明した。しかもそれらの増悪を引き起こす濃度はppmまたはppbレベルという極めて微量な濃度であった。むしろ高濃度ではその増悪作用はやや弱い傾向があった。これらの結果は従来の古典的な中毒学の細胞の変性、死を目標とする濃度とはまったく異なり、免疫系への毒性は極めて低濃度でその毒性が発揮されているのが分かる。いまだそれらの混合負荷、すなわちtotal body burdenに関する実験は行っていないが、今後の研究課題も残ったままである。なお実験経過中に化学的環境のみでなく、物理学的環境にも眼を向ける必要性があるかと思われ、VDT作業で問題となるCRT画面曝露の影響を観察したが、機械的は角膜上皮障害のみでなく、CRT曝露によるアレルギー性結膜炎の著しい増悪作用が認められた。CRT画面からは低周波の電磁波が放射されており、各波長による電磁波の影響が今後の研究課題としてのこった。近年の花粉症の増加の原因をスギ花粉の増加に求めようとするのは余りにも非科学的な発想であり、むしろ生活環境の変化に求めるべきである、今回の実験から免疫系に及ぼす環境因子の重要性を明らかになし得た。