著者
品川 森一 平井 克也 本多 英一 見上 彪 小沼 操 堀内 基広 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

1.PrP遺伝子に関連する制限酵素切断断片の多様性:日本で飼育されている羊のスクレイピ-の感受性に関わる遺伝的な背景は知られていない。潜伏期及び感受性に関係するPrPの遺伝子に関連した染色体DNAの制限酵素切断断片に多様性(RFLP)が認められ、このRFLPのパターンと潜伏期あるいは感受性の間に関連があることが明らかにされている。日本の羊におけるRFLP型の調査と特定の型とスクレイピ-の関連の有無を検討した。日本各地から集めた羊の組織から染色体DNAを分離し、EcoRIあるいはHindIIIで消化したDNA断片を羊のPrPコード領域をプローベとしてSouthern Hybridizationを行なった。日本の羊はI〜VIの6型に分けられた。またI〜III型は英国で報告された型と一致していた。スクレイピ-の羊18頭の型はI型に8頭と集中しており、一方II型とVI型は、正常な羊128頭で見られる頻度に比べて低く、抵抗性であることが示された。さらにスクレイピ-感受性にかかわる遺伝学的な背景を明らかにするために、地方別のRFLP型の分布を161頭の羊で調べたところ、ある程度の地域差が認められた。2.PrP^<Sc>検出によるスクレイピ-汚染状況の調査:1988年から1993年までに北海道、東北、関東および中部地方から集めた主にサフォーク種の羊197頭の脳、脾臓およびリンパ節からPrP^<Sc>の検出を行った。そのうち北海道の16頭および他地域の2頭からPrP^<Sc>が検出されたが、後者も北海道から導入された個体であった。このことから、日本では現在なおスクレイピ-の汚染は北海道に限局していることが示唆された。しかし北海道外で発生を見た地域では、その地域での伝播が起きていないことが確かめられるまで、中枢神経症状を示した羊があれば詳細に検索する必要があろう。また北海道からの羊の移動および有病地(国)からの導入は慎重を期す必要がある。