著者
李 振泰 塔 娜 渡来 仁 柿谷 均 小沼 操 趙 丹丹 保田 立二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.169-174, 1997-03-25
被引用文献数
3

陽性荷電リポソームが, ウシ白血病ウイルス(BLV)感染細胞への毒素遺伝子の導入に応用可能かどうかを調べた. 陽性荷電リポソームは, N-(α-trimethylammonioacetyl)-didodecyl-D-glutamate chloride(TMAG), dioleoyl phosphatidylethanolamine(DOPE), dilauroyl phosphatidylcholine(DLPC)(モル比1 : 2 : 2)から作製し, 遺伝子を封入させた. ルシフェラーゼアッセイにより, 陽性荷電リポソーム(TMAGリポソーム)によるBLV感染細胞(FLK/BLV細胞)への遺伝子導入効率を調べたところ, TMAGリポソームの遺伝子導入効率は, ホスファチジルセリン(PS)から作製されたリポソームに比べ高い導入効率を示した. さらに, ルシファラーゼ遺伝子とともにプロモーター活性を持つBLVのLTRの下流にジフテリア毒素遺伝子を挿入したプラスミドDNA(pLTR-DT)をTMAGリポソームによりFLK/BLV細胞にco-transfectionし, ルシフェラーゼ遺伝子によるルシフェラーゼ活性が, TMAGリポソームにより導入されたpLTR-DTにより, どの程度阻止されるかを調べることにより, pLTR-DT封入TMAGリポソームの, BLV感染細胞に対する殺傷効果を検討した. その結果, ルシフェラーゼ活性は, pLTR-DTを導入することによりdose-dependentに抑制された. また, pLTR-DTをFLK/BLV細胞に複数回導入すると, FLK/BLV細胞の増殖が顕著に抑制された. さらに, pLTR-DT封入TMAGリポソームを血清あるいは核酸分解酵素と反応させたところ, TMAGリポソームに封入された毒素遺伝子は分解されなかった. これらのことから, 陽性荷電(TMAG)リポソームはBLV感染細胞への遺伝子導入法として優れており, 毒素遺伝子封入陽性荷電リポソームによる, BLV感染細胞の遺伝子治療の可能性が示唆された.
著者
Syakalima Michelo CHOONGO Kennedy 中里 幸和 小沼 操 杉本 千尋 坪田 敏男 福士 秀人 吉田 光敏 板垣 匡 安田 準
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.315-318, 2001-03-25
被引用文献数
9

ザンビア国カフエ川湿原で, 銅鉱山排液が混入するロッキンバー及びブルーラグーン国立公園に生息する野生生物, 重金属被爆がもたらす環境危険因子について食物連鎖解析を行った.ここでみられる食物連鎖因子は, 水, 魚, 植物(草).カフエレチュエ(Kobus Leche Kafuensis)であり, 重金属は, 銅, 亜鉛, マンガン, 鉄である.銅は水:0.03-0.04, 魚3.0-6.0, 草11.0-44.0, レチュエ肝臓:痕跡-199.0であった.亜鉛は水:0.01, 魚32.0-82.0, 草:15.0-21.0.レチュエ肝臓:52.0-138.0であった.マンガンは水:0.15-0.16, 魚:7.0-18.0, 草:51.0-1450, レチュエ肝臓:40.0-53.0であった.鉄は水:0.13-0.14, 魚:26.0-134.0, 草:1766.0-1797.0, レチュエ肝臓:131.0-856.0であった.濃度単位は水がmg/l, その他の試料はmg/kgである.水以外の全ての因子で重金属濃度が高かったが, 毒性は裏づけられなかった.
著者
小倉 知子 昆 泰寛 小沼 操 近藤 高志 橋本 善春 杉村 誠
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.59-66, 1993-02-15
被引用文献数
2

ニワトリのリンパ組織におけるT Cell Subsetsの分布をCD4, CD8に相当するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に検討した. 胸腺においてCD8^+細胞は皮質にのみ認められ, 一方CD4^+細胞は皮質のみならず髄質にも認められた. 被膜直下の皮質細胞は両抗体に反応しなかった. 盲腸扁桃においてCD8^+細胞は固有層浅層に限局し, 固有層中層ないし深層では多数のCD4^+細胞が胚中心を囲むように存在していた. 脾臓においてCD8^+細胞は赤脾髄にのみ存在し, CD4^+細胞は動脈周囲リンパ組織ならびに静脈周囲リンパ組織に認められた. 胚中心内にこれら抗体に反応するリンパ球は認められなかった. 骨髄ならびにファブリキウス嚢に反応は認められなかった. 夕ンパク抗原(みょうばん沈澱ウシ血清アルブミン)投与実験によって, CD4^+細胞が胚中心内に認められ, 一方CD8陽性を示す細胞は赤脾髄領域から減少した. これらの結果はニワトリのリンパ組織におけるT Cell Subsetsが明らかな住み分けをしていることを示すものと思われる.
著者
見上 彪 喜田 宏 生田 和良 小沼 操 速水 正憲 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本研究目的は、各種動物由来レンチウイルスを分子生物学的観点から総合的に比較研究することにより、レンチウイルスに共通に見られる遺伝特性を明らかにするとともに、その生体内での病原性の発現メカニズムを分子レベルで探ることにある。代表としてネコ免疫不全ウイルス(FIV)についての研究成果を報告する。1.日本,オーストラリアおよび米国で分離されたFIVのLTRの塩基配列を比較したところ,日本の各分離株は遺伝子レベルで米国やオーストラリア各分離株から離れた位置にあり、系統学的に異なるものと考えられた。2.組換えキメラウイルスを用いてFIV株間の生物学的性状の相違を解析したところ、LTRのプロモーター活性には有意な差は認められなかったものの,CRFK細胞への感染性やMYA-1細胞での巨細胞形成能はenvおよびrev領域が決定し,ウイルス増殖の速さや細胞障害性の強さはgag,pol,vif,ORF-Aの領域が関与しているものと考えられた。3.FIVのORF-A遺伝子に変異を導入した変異株を用いてその機能を解析したところ、ORF-1遺伝子はウイルスの効率的な増殖を促進していると考えられた。4.CRFK細胞にネコCD4を発現させた後、CRFK細胞にたいして非親和性のFIV TM1株を接種してもウイルスは増殖せず、さらに可溶化CD4とFlVenvは結合しないことから、ネコCD4は、FIVのレセプターとして機能していない可能性が示唆された。
著者
見上 彪 松浦 善治 川喜田 正夫 児玉 洋 喜田 宏 永井 美之 小沼 操
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究はニュ-カッスル病ウイルス(NDV)の生態と病原性を総合的に解明することを目的とする。そこで病原性に深く関るNDVのヘモアグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN)ならびに膜融合蛋白(F)をコ-ドする遺伝子をリコンビナントワクチニアウイルス(rVV),リコビナント鶏痘ウイルス(rFPV)あるいはバキュロウイルス(BV)に捜入し,発現HNあるいはFの生物性状、免疫原性などの検討し,以下の成績を得た。1)。NDVのHNを発現するrVVを作出し,NDV感染防御におけるHNの役割を検討した。8×10^6PFUの生rVVを接種した鶏は,すべて強毒NDVによる致死的に耐過した。一方同量の不活化rVVを接種した鶏は,同様の攻撃により死亡した。攻撃耐過鶏はHNに対する抗体産生が攻撃前あるいは攻撃前あるいは攻撃後に認められたのに対して,非耐過鶏では認められなかった。2)。FPVのチミジンキナ-ゼ遺伝子内にVV由来のプロモ-タ-P.7.5制御下にNDVのHNを発現するrFPVを作出した。このrFPVはNDVのHNに特異的なウイルス中和活性のある単クロ-ン性抗体と反応し,SDSーPAGE上でNDV HNとほぼ同じ移動度を示すHNを産生した。3)。NDV宮寺株のHNをコ-ドする _cDNAを組みこんだBVは感染細胞表面にHNを発現した。このrHNはSDSーPAGE上でNDV感染細胞で発現するHNと同じ移動度を示し,ツニカマイシ処理により,そのアミノ酸配列から予想される分子量とほぼ同じ大きさとなった。4)。NDV F蛋白の全長あるいはC端のアンカ-部位を除いた遺伝子を組み込んだ。これらのうち強毒株由来の全長の遺伝子を発現したもののみ下蛋白の前駆体がF_1F_2サブユニットに解裂し,これらはジスルフィド結合でヘテロダイマ-を形成していた。
著者
笛吹 達史 メアス ソティー 今内 覚 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.287-289, 2003-02-25
被引用文献数
2 10

牛免疫不全ウイルス(BIV)ならびに牛白血病ウイルス(BLV)血清疫学調査を行った。北海道内10地区より採取した390検体を検査したところ, BIVとBLV陽性率はそれぞれ11.0%と33%であった。和牛の調査ではBIVが16.6%の陽性率を示した。一方,BLV陽性の乳牛を調べたところ,18.7%と高率にBTV陽性を示した。これらの結果から,BIVが北海道全体に分布することが明らかとなった。
著者
間 陽子 小沼 操
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本及びアメリカ大陸のウシ材料を用いて独自に開発したsequence-based typing(PCR-SBT)法を、フィリピン牛のDNA を用いて、東南アジアのウシにも適応できるように改良し、牛白血病発症に対して抵抗性・感受性の牛主要組織適合性遺伝子複合体(BoLA)クラスIIDRB3 遺伝子のアジア地域における分布調査を行った。最初に、フィリピンの5 つの島に生育するHolstein、Sahiwal、Brahman、固有種およびその交雑種の計981 頭のDNA を収集し、nested PCR によりBLV の検出を行ったところ、BLV 感染率は1.6%~11%と島によって異なるものの全体的に低かった。次に、フィリピン牛に適応できるように改良したPCR-SBT 法に6 種類の新規を含む81 種類のBoLA-DRB3 アリルが検出されたことから、アジア牛のMHC が高度な多様性を示すことが示された。また、白血病発症を規定するアリルはフィリピンのウシ品種では非常に低い頻度であることも示された。
著者
品川 森一 平井 克也 本多 英一 見上 彪 小沼 操 堀内 基広 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

1.PrP遺伝子に関連する制限酵素切断断片の多様性:日本で飼育されている羊のスクレイピ-の感受性に関わる遺伝的な背景は知られていない。潜伏期及び感受性に関係するPrPの遺伝子に関連した染色体DNAの制限酵素切断断片に多様性(RFLP)が認められ、このRFLPのパターンと潜伏期あるいは感受性の間に関連があることが明らかにされている。日本の羊におけるRFLP型の調査と特定の型とスクレイピ-の関連の有無を検討した。日本各地から集めた羊の組織から染色体DNAを分離し、EcoRIあるいはHindIIIで消化したDNA断片を羊のPrPコード領域をプローベとしてSouthern Hybridizationを行なった。日本の羊はI〜VIの6型に分けられた。またI〜III型は英国で報告された型と一致していた。スクレイピ-の羊18頭の型はI型に8頭と集中しており、一方II型とVI型は、正常な羊128頭で見られる頻度に比べて低く、抵抗性であることが示された。さらにスクレイピ-感受性にかかわる遺伝学的な背景を明らかにするために、地方別のRFLP型の分布を161頭の羊で調べたところ、ある程度の地域差が認められた。2.PrP^<Sc>検出によるスクレイピ-汚染状況の調査:1988年から1993年までに北海道、東北、関東および中部地方から集めた主にサフォーク種の羊197頭の脳、脾臓およびリンパ節からPrP^<Sc>の検出を行った。そのうち北海道の16頭および他地域の2頭からPrP^<Sc>が検出されたが、後者も北海道から導入された個体であった。このことから、日本では現在なおスクレイピ-の汚染は北海道に限局していることが示唆された。しかし北海道外で発生を見た地域では、その地域での伝播が起きていないことが確かめられるまで、中枢神経症状を示した羊があれば詳細に検索する必要があろう。また北海道からの羊の移動および有病地(国)からの導入は慎重を期す必要がある。
著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。
著者
中島 千絵 SILVA VAZ Jr. Itabajara da 今村 彩貴 今内 覚 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1127-1131, 2005-11-25
参考文献数
24
被引用文献数
2 26

吸血中のフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)より唾液腺を採取してcDNAライブラリーを作成し, ランダムに選んだ発現タンパク遺伝子の配列をblastx (NCBI)等のプログラムを用いて解析した.得られた633配列はその相同性によって, 同一あるいはごく近縁の遺伝子由来と思われる213配列に集約された.全633配列のうち, blastxを用いた相同性検索により発現タンパクの機能予測がなされたものは全体の36%であり, 残りの64%は未知の遺伝子であった.機能が予測されたタンパクの大半は細胞の生存に必要なハウスキーピングタンパクであったが, 血液凝固阻害因子類似の蛋白を含めたプロテアーゼインヒビターやメタロプロテアーゼ, 他のダニで分離されている免疫抑制物質に類似したタンパク遺伝子等も同定された.これらのタンパクはダニの吸血に際し何らかの重要な役割を演じている可能性があり, 新たな抗ダニワクチン抗原の候補となりうると考えられる.
著者
渡来 仁 杉本 千尋 尾上 貞雄 小沼 操 保田 立二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.17-22, 1995-02-15
被引用文献数
3

Theileria sergenti のレセプターとして, ウシ赤血球膜ガングリオシドが機能しうるか否かを調べるために, ウシ赤血球膜由来のガングリオシドならびにウシ赤血球膜のガングリオシドと同じ糖鎖構造を持つガングリオシドをリポソームに組み込み, 原虫によるリポソーム凝集反応を行った. 原虫は, N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)を持ったI型ガングリオシドを組み込んだリポソームを弱く, またN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を持ったI型ガングリオシドを組み込んだリポソームを強く凝集したが, GM3(NeuAc), GM3(NeuGc), sialosylparagloboside(SPG) (NeuAc), SPG(NeuGc), i型ガングリオシド(NeuAc)ならびにi型ガングリオシド(NeuGc)を組み込んだリポソームは凝集しなかった. このことは, ウシ赤血球膜のI型ガングリオシド(NeuAcおよびNeuGc)が, T. sergenti のレセプターとして機能していることを示唆するとともに, I型ガングリオシド(NeuAc)に比べてI型ガングリオシド(NeuGc)のほうが, ウシ赤血球膜において, T. sergenti のレセプターとして強い活性を持っていることを示唆している. さらに, T. sergenti 感染前後の赤血球を用いて, ウシ赤血球膜のガングリオシド組成の変化を分析したところ, T. sergenti 感染後において, I型ガングリオシド(NeuAc)の量が僅かに(p < 0.05), またI型ガングリオシド(NeuGc)の量が顕著(p < 0.01)に減少した. しかしながら, 他のガングリオシドにおいては, T. sergenti の感染に伴う変化が認められなかった. この現象は, T. sergenti 感染後の赤血球においては必ず認められ, T. sergenti感染に伴う特徴的なガングリオシドの組成の変化であることが示された.
著者
間 陽子 竹嶋 伸之輔 小沼 操 竹嶋 伸之輔 小沼 操
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

我々は以前に、ウシ主要組織適合遺伝子(BoLA)-DRB3遺伝子のタイピング法(PCR-SBT)を開発して牛白血病ウイルス(BLV)誘発性牛白血病の発症に対して感受性および抵抗性を示すアリルを同定した。本研究では、南米に生育するウシ品種に適応した新規タイピング法を開発し、日本のウシを用いて同定した感受性・抵抗性アリルのアメリカ大陸(米国、アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ペルー、チリ)における分布調査とBLV感染の有無を調査した。
著者
小澤 真 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1237-1241, 2005-12-25

ニューカッスル病(ND)はニューカッスル病ウイルス(NDV)により引き起こされる鶏の最も重要な感染症のひとつあり, 生および不活化ワクチンにより制御されている.しかしNDVは多種類の野鳥など, ワクチンされていない鳥に感染し, これらの感染がNDの発生・伝播に重要な役割を果たしているので, 野外での新たなNDの制御法が必要である.ファージディスプレイ法は目的の標的分子に結合するペプチドの検索方法として有用であり, バイオパンニング法によりNDV結合性ペプチド3種類(EVSHPKVG, WVTTSNQW, およびSGGSNRSP)を同定した.ファージ上のこれらのペプチドのNDV結合特異性は抗NDV鶏血清を用いた競合ELISA法により確認された.またこれらのアミノ酸配列をもとに作製した合成ペプチドはin vitroにおいて部分的にNDVを中和した.今回同定したペプチドモチーフは, 免疫系に依存することなくNDV感染を阻止する新規分子の同定へと発展する可能性を有している.
著者
花房 泰子 趙 庚五 兼丸 卓美 和田 隆一 杉本 千尋 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1127-1132, s・iv, 1998-10
被引用文献数
16

Babesia caballi実験感染馬の病態解析を行った.病理学的検索の結果, 直接の死因は肺水腫による呼吸不全と考えられ, 腎臓の特殊染色を行った結果, 増殖性糸球体腎炎が認められた.2頭の成馬にB.caballiを接種し, 末梢リンパ球におけるサイトカインmRNAの発現を調べた結果, 1個体においてはinterferon-gamma, tumor necrosis factor-alpha (TNF-α), interleukin (IL)-2, もう1個体においてはTNF-α mRNAの発現が増強されていた.両個体において, IL-4 mRNAの発現に変化は見られなかった.また, B.caballi感染馬における血清中の一酸化窒素(NO)の産生量を調べたところ, 3頭のデキサメサゾン(DX)投与馬の死亡直前(感染末期)にNOレベルの上昇が認められた.DX投与馬の1頭にNO合成酵素の阻害剤であるアミノグアニジン(AG)を投与して感染経路を調べたところ, AG投与馬では非投与馬と比較して高い寄生率と低いNOレベルが観察されたが, ウマは最終的に死亡した.本研究の結果より, B.caballi感染症においてサイトカインとNOが病態形成に強く関与している可能性が示された.
著者
大橋 和彦 高木 道浩 杉本 千尋 小沼 操
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ウイルス、細菌などの病原体には標的細胞への吸着の際、細胞表面糖鎖をレセプターとして利用しているものが多く、このようなレセプターをワクチンなどに利用すれば、株間で抗原性が異なる病原体に対しても広く有効な防除法を開発することが可能になる。そこで感染症防除のためにこれらの糖鎖を擬態できるようなペプチドを探索・同定し分子擬態利用法を開発するため、ウイルス(NDV)をモデルとしてNDVレセプター構造を分子構造的に模倣するレセプター擬態ペプチド分子を探索し、そのNDV感染に対する防御能を検討した。NDVヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)抗原を標的として特異的に結合するペプチド分子をランダムペプチドライブラリー(6mer〜8merのペプチドを含む)よりファージディスプレイ法とバイオパンニング法により探索した。その結果、NDV HN抗原に対して特異的結合性を示す3種類のファージクローンが得られた。得られたクローンの塩基配列・アミノ酸残基を解析した結果、EVSHPKVG、WVTTSNQW、SGGSNRSPの3種類のアミノ酸配列が擬態分子として同定された。さらに各ファージクローンのNDV特異的結合能は、抗NDVニワトリ抗血清を利用したELISA競合阻止試験によっても確認された。次にこれらの各ファージクローンより予想されたアミノ酸配列をもとに合成ペプチドを作製し、NDV粒子に対する結合能や感染防御能を解析した。3種類の合成ペプチドはNDVによる赤血球凝集活性を阻止できなかった。しかしながら、ウイルス中和試験の結果、これらのペプチドが部分的にNDVの感染を中和できることが示された。今後、これらのペプチドが結合するNDV粒子状の分子を明らかにするとともに、そのアミノ酸配列をもとに、よりNDV感染阻止能力の高いアミノ酸配列を模索し、in vivoにおける効果を検討することが、臨床応用に向けて必要となる。
著者
壁谷 英則 大橋 和彦 杉本 千尋 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.475-480, 1999-05-25
被引用文献数
3

BLVエンベロープペプチドにより引き起こされる免疫調節活性について検討するために, 2種類のヘルパーT細胞エピトープペプチド(peptide98および61)をヒッジに免疫した. 免疫した8頭のヒツジのうち4頭しかリンパ球幼若化反応を示さず, 残りの4頭はコントロール同様反応を示さなかった. このそれぞれ異なる2種類のペプチドにより誘導される反応について検討するためにそれぞれのペプチドに特異的に反応する細胞株を樹立した. peptide98特異的細胞株はCD4陽性細胞からなるが, 対照的にpeptide61特異的細胞株はCD8, およびMHCクラスII発現細胞から構成されることがフローサイトメトリー解析により明らかとなった. さらに, RT-PCRによる解析から, peptide98特異的細胞株は, IFN-γを産生するがIL10を産生せず, 逆にpeptide61特異的細胞株はIFNγは産生しないがIL10を産生することが明らかとなった. peptide61により誘導されるIL10産生及びMHCクラスII発現亢進という特徴は一般的なBLV感染症の病態進行にともなう特徴と一致しており興味深い. BLVエンベロープのpeptide98と61は, ヒツジ末梢血単核球に質的に異なる免疫反応をもたらし, BLV感染症の病態進行に影響をもたらしているのではないかと考えられる.