著者
土師 誠二 宇佐美 真 平井 昭博 阪田 和哉 小谷 穣治 磯 篤典 金丸 太一 笠原 宏 山本 正博 斎藤 洋一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1652-1657, 1996-07-01
被引用文献数
8

大侵襲の消化器外科周術期の真菌血症の発生について検討した.対象は臓器真菌症を有さない胸部食道切除6例,胃全摘12例,膵切除4例で,術前,術後2,10日目に末梢静脈血を用いて細菌培養,カンジダ抗原価(Cand-Tec),β-D-glucan値(トキシカラー値とエンドスペシー値の差)を測定し,真菌血症の診断を行った.カンジダ抗原価,β-D-glucan値陽性率は2PODにはともに42.8%と有意に上昇し(p<0.01),カンジダ抗原価は10PODにさらに増加するのに対し,β-D-glucan値は減少し,一過性の上昇を示した.血液培養は全て陰性だった.術式別では食道切除術で陽性率が高かった.陽性群と陰性群で比較すると,カンジダ抗原価陽性群は手術侵襲が大きく,低栄養の症例が多かった.以上より,消化器外科手術後早期には培養陽性とはならぬが一過性の真菌血症が生じ,手術侵襲の程度や栄養状態と関連し,microbial translocationの可能性が強く示唆される.