- 著者
-
倉鋪 桂子
末次 聖子
平井 由佳
- 出版者
- 鳥取大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2004
平成17年度の実施事項1.研究の対象および方法二ケ所の介護老人福祉施設から軽度の認知症でアクティビティへの意思を表明できる者10名を選び、研究の承認を得た。研究者二人で8月〜12月の間、週2回施設を訪問した。対象者一人について1回1〜1.5時間を用いた。2.研究経過および結果第1期(8月-9月)「対象者の意思表出がない」時期「今最もしてみたいこと」について話し合ったが利用者の意志表示はなかった。「施設のスタッフは忙しい」とか、「叱られる」などの発言があった。第2期(10月-11月)具体的な意思表出された時期A:ソ連の捕虜収容者の生活を懐かしみ、写真集や記録書を頼りに言語障害があるがロシア語を思い出したり、当時を生き生きと話す。B:「定期的に外出したい」に対し、利用者の日課と人材(職員やボランティア)、健康状態から実行可能な計画をたてて外出ができた。C利用者:「揚げたてのテンプラ」「自分用のコーヒー缶」など食に対する興味が強い。嚥下困難があるためSTの介助でてんぷら、すし、あんぱん等を摂取できた。第3期(12月)積極的な行動が現れた時期C:家族関係が複雑で、妻・息子とも交流は無かったが「孫に会いたい」と言われ、関係者の努力で孫の面会を得られ、それにより家族との関係回復も出来た。D:クリスマス会の最後に利用者代表で感謝の言葉を述べた。それまでは催し物に受動的であった。3.男性利用者のアクティビティ・ケア男性は団体行動より個別の行動を好んだ。男性利用者のアクティビティには、本人の施設入所に対する「肯定感」「施設生活への存在感」を確認する必要がある。それには、彼らが施設の生活にどれだけ主体的に行動をしているかが重要であった。一方施設のスタッフも食事・入浴等個人の好みには気遣うが全体生活にアクティビティとしての主体的な行動の理解が乏しかった。今後、男性利用者自身が生活の企画や自らの組織つくりへの参画が必要と考える。