著者
見上 彪 岡崎 克則 中島 員洋 松田 治男 平井 莞二 高橋 英司 東原 朋子
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

現在,マレック病ウイルス(MDV)に起因する鶏のマレック病(MD)の予防には,主として七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)の単価ワクチンが野外で広く用いられている。しかし現行のワクチンでは予防し得ない超強毒MDVによるMDが存在する。本研究はこのようなMDに対応し得るワクチン,組み換え体ワクチン,多価ワクチンあるいは成分ワクチンの開発を最終目的としている。以下結果を記載する。1。MDVのA抗原をコ-ドする遺伝子をBCに捜入し,リコンビナントウイルス(RCV)ーAを得た。これを接種した細胞の表面にはA抗原が発現していることが蛍光体法により確認された。 ^<35>S標識抗原とA抗原特異的単クロ-ン性抗体を用いて免疫沈降を行ったところ,感染細胞可溶化液中には多量の抗原が58ー68Kの位置に,また感染細胞上清には少量の抗原が46ー54Kの位置に認められた。発現A抗原はMDV感染血清と特異的に反応し,この抗原を接種した鶏の血清中にはMDV感染細胞と特異的に反応する抗体が検出された。2。MDV遺伝子中には単純ヘルペスウイルス(HSV)のgBに類似する糖蛋白をコ-ドする領域が存在する。この領域をBCに捜入して得たRCVーBは感染細胞の細胞質および細胞表面にMDV感染血清によつて認識される蛋白を発現した。この蛋白はMDVのB抗原に対する単クロ-ン性抗体や免疫血清とも反応した。またSDSーPAGEおよびMDV感染血清を用いたイムノブロット法により88/100,64および54Kdの分子量からなる蛋白であることが明らかとなった。3。胸腺切除および抗鶏CD4ないしCD8単クロ-ン性抗体投与によりCD4ないしCD8陽性T細胞を欠損させた鶏に強毒MDVを感染させた。CD8欠損鶏においては神経腫大とリンパ腫が認められたのに対して,CD4欠損鶏においては神経腫大のみが認められた。
著者
見上 彪 内貴 正治 松田 治男 板倉 智敏 平井 莞二 加藤 四郎 森口 良三
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はマレック病(MD)のワクチンブレイクに対抗しうる有効なワクチンの開発を最終目標としている. 以下に3年間で得られた成績の概要を述べる.1)MDウイルス(MDV)・七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)のウイルス群は血清型として3型に分類されている. それぞれの血清型あるいは免疫原として用いたウイルス株に特異的な単クローン性抗体が班員により, 多数樹立され, これら抗体を用いることにより野外分離ウイルスの同定が容易になった. また, MD腫瘍細胞を免疫原として用いて, MDに特異的な単クローン抗体も作出され腫瘍細胞の同定に有用と思われた.2)ニホンウズラにおけるMDの浸潤状況とHVTによるワクチン予防効果を検討したところ, 実質臓器のリンパ腫瘍を主病変としたMDがウズラの間で多数発生していること, リンパ腫病変とMDV羽包抗原との間に正の相関が, またリンパ腫病変とHVT血清抗体との間に負の相関があることが明らかとなった. MDワクチンブレイクの発生をみたウズラ群から4種のMDVが分離され, これらウイルスは単クローン性抗体により血清型1に属し, 鶏に対しても強い腫瘍原性が示された. 同様にニワトリ群からも5種のウイルスが分離された.3)MDに対するワクチン候補株として, 非腫瘍原性MDVの分離が急がれている. 我々はニワトリ及びキジ類それぞれ13羽, 10羽からウイルス分離を試みたところ, 調べたすべてのニワトリからウイルスが分離され, 単クローン性抗体により血清型2に属していることが明らかとなった. 今後, これらウイルスを用いてワクチンブレイクに対抗しうるワクチンが開発されることが期待される.