著者
吉田 奈々絵 山田 容子 平原 大志 和田 浩 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.927-933, 2014

症例は18歳女性. 主訴は失神. 家族歴は兄が18歳で突然死. 現病歴は朝通学中の電車内で立位時に失神し, 次の駅で意識回復し当科に救急搬送となった. 来院時は意識清明. 心電図上, QT間隔は正常だが連結期の短い同形の心室性期外収縮より開始する非持続性多形性心室頻拍の頻発を認めた. 心臓超音波では軽度左室拡大のみで器質的心疾患は認めなかった. 発作時も含めQT延長はなく運動負荷によるQT延長, 多形性心室頻拍も認めなかった. カテコラミン負荷で増悪なく, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍およびQT延長症候群は否定的と考えた.  ピルジカイニド負荷で4連の多形性心室頻拍を認めたがベラパミル投与で抑制された. 遺伝子解析ではQT延長症候群, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍, Brugada症候群に関連する遺伝子変異は陰性であった. short-coupled variant of torsade de pointesを最も疑い, 家族歴も考慮しICD植え込みを施行後ベラパミルの内服を開始し退院となった. その後は, ICDが作動することなく経過している.
著者
小林 貴 久保 典史 坂倉 建一 高田 宗典 平原 大志 荒尾 憲司郎 宇賀田 祐介 森 将之 船山 大 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1438-1443, 2010

たこつぼ心筋症(transient left ventricular apical ballooning, takotsubo cardiomyopathy; TTC) では診断時, 冠動脈の有意狭窄を除外基準とすることが多い. しかしながら, 高齢者に多い病気であり, 最近, 冠動脈に有意狭窄のあるたこつぼ心筋症の存在もいわれるようになってきた. 症例は83歳, 女性. 普段から行っているわけではない, 緊張を伴った神社参拝, 豆まきという行事直後の食事, 飲酒をした際に著明な冷汗と意識が遠のく感覚を自覚したため, 救急要請となり当センターに救急搬送された. 急性冠症候群(acute coronary syndrome; ACS)が疑われ, 緊急心臓カテーテル施行. 左冠動脈前下行枝(left anterior descending artery; LAD)#7に90%狭窄を認めたため, 緊急経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention; PCI)を行った. 直後の左室造影(left ventriculography; LVG)では, LADの支配領域に合致しない左心室基部の過収縮と心尖部の無収縮を認め, 高度冠動脈狭窄を合併したTTCと診断された. TTCとLAD病変の関与したACSは最も重要な鑑別点である. ACSとして判断されていた症例の中にも実際には詳細に検討すると, たこつぼ心筋症が潜んでいる可能性があることを示唆している. また, 診断方法の感度を考慮すると, 疾患概念による形体描写に基づかない命名の必要性が指摘されている. 病態解明の進歩が, 今後一層期待される.