著者
平塚 健太 田宮 高道 松岡 審爾 木村 一志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.361-367, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
32
被引用文献数
2

〔目的〕脳卒中患者の発症時における機能評価から15日後の歩行自立因子を決定木分析にて明らかにすること.〔対象と方法〕対象は急性期脳卒中患者612名.発症時における年齢,性別,疾患名,Stroke Impairment Assessment Set(SIAS),Short Form Berg Balance Scale (SFBBS)合計点,Timed Up and Go Test-Reserve(TUG-R),認知Functional Independence Measure(FIM)合計点,10 m歩行テストの計26因子を独立変数,発症15日後の歩行可否を従属変数とした歩行自立予測モデルを作成した.〔結果〕バランス評価であるSFBBSが上位で採択され,強い歩行自立因子であることが示唆された.また,各因子が低値であってもそれを補填するように他の因子と相互関係を持つ結果が得られた.〔結語〕脳卒中発症早期の歩行予測においてもバランス機能や歩行機能を評価する重要性が示唆された.
著者
平塚 健太 吉田 整 大家 佑貴 倉本 祐里 田宮 高道
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1079, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺患者の歩行パターンの一つにExtension Thrust Pattern(以下,ETP)がある。ETPの改善策として装具の調整が多くなされるが,それのみでは改善できないことも少なくない。そこで今回,装具療法と機能的電気刺激(以下,FES)を併用してETPに対して介入を行った。【方法】症例は50歳代。男性。脳梗塞(右延髄内側)。左片麻痺。介入時評価は,Stroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS):35点。SIAS-下肢Motor(以下,SIAS-m):1-1-0. Functional Ambulation Categories(以下,FAC):1と歩行に介助を要する状態であった。発症当日より段階的に理学療法介入を行った。発症4週後にはSIAS:48点,SIAS-m:4-3-1.7-item Berg Balance Scale(以下,7-item BBS):20点。10m歩行:15.8秒。Timed Up and Go Test(以下,TUG):21.8秒,T-caneと油圧制動継手付Ankle Foot Orthosis(以下,AFO)を使用下でFAC:3と運動機能の向上が認められた。しかし,下腿三頭筋のModified Ashworth Scale(以下,MAS):2と筋緊張の亢進が認められた。加えて,川村義肢社製Gait Judge System(以下,GJS)を測定した。底屈モーメントはLoading response(以下,LR)時の底屈モーメント平均値(以下,FP):5.9Nm.Pre swing(以下,Psw)時の底屈モーメント平均値(以下,SP):5.1Nmであった。なお,LR~Mid Stance(以下,Mst)に底屈モーメントが出現し,ETPを認めた。この時期より,ETPに対して装具療法とFESの併用療法を開始した。FESには帝人ファーマ社製歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイド(以下,WA)を用いた。介入内容はKnee Ankle Foot Orthosis(KAFO)およびAFO装着下にて歩行練習や部分練習を行い,セラピストがWAをPsw~Mstにかけて足関節背屈筋群に対して電気刺激を与えた。介入時間は40~60分/日とし,4週間介入を行った。評価項目は,SIAS,SIAS-m,MAS,7-item BBS,10m歩行,TUG,FAC,GJSによる底屈モーメント平均値とした。【結果】介入後の結果は,SIAS:49点,SIAS-m:4-4-2,下腿三頭筋MAS:2,7-item BBS:22点,10m歩行:11.7秒,TUG:15.9秒,FAC:4,GJSによる底屈制動モーメント平均値:FP;10.3Nm,SP;7.1Nmと向上が認められた。下腿三頭筋のMASは数値に変化のない範囲で筋緊張軽減が認められた。さらにLR~Mstに出現していた底屈モーメントが減少し,ETPの軽減を認めた。【結論】ETPの原因として前脛骨筋の筋活動の関与(田中ら,2014)や足関節底屈筋の痙縮の有無(Perry,2010)が報告されている。それに伴う歩行中のロッカー機能の破綻がETPの出現に関与していることが考えられる。油圧制動継手付装具はロッカー機能の改善に寄与し,ETPの改善が期待されるが,本症例においては装具のみでは改善が困難であった。WAを併用することによって前脛骨筋の電気刺激による下腿三頭筋の相反抑制効果や立脚期までの電気刺激によりロッカー機能における下腿の前傾を促せることができ,ETPの改善に寄与したものと捉える。FESとの併用により装具療法で得られるロッカー機能の再構築が効率的に行える可能性がある。