- 著者
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平岡 敏夫
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.10, pp.1-11, 1986-10-10
「作者」という語が直接登場しているように、夏目漱石「虞美人草」では作家の<自我>が露出し、<虚構>はその支配を受けている。だが、先行する小栗風葉「青春」の男女密会の「大森」行きに象徴される恋愛の<引用>として、さらには「青春」や小杉天外「コブシ」の「兄妹」の<引用>として「虞美人草」は<虚構>の新たな活性化をはかっている。とくに宗近の妹よし子の<妹の力>としての<虚構>は必ずしも<自我>に従属していない。この作品の<自我>と<虚構>は見合っており、そこに「虞美人草」の独自の構造と魅力がある。