著者
平松 和昭 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.流域モデル構築にはGIS技術を利用し,DEMや土地利用,河川網,点源などの詳細な流域情報を統合することで分布型モデルを開発した.また,定量化が容易でない排出負荷や閉鎖性水域の水質動態のサブモデルには,適宜,人工知能技術や時間-周波数解析手法を導入し予測精度を向上させた.モデルの構築に当たっては,九州最大の河川流域で,流域内に多様な土地利用が拡がる筑後川流域と,福岡市西方に位置し,混住化が進行している農業流域である瑞梅寺川流域という,流域規模・特徴の大きく異なる二つの流域を精査流域と位置付け,個々の素過程の定量化やサブモデルの検討,全体モデルへのネットワーク結合方法の詳細を検討した.
著者
岡田 裕子 平松 和昭 四ヶ所 四男美
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.55-60, 2003-10

山地流域における洪水流出現象は複雑な要素から成るため、個々の雨水流の持つ平均的法則性を通じて出水現象を把握する方法が有効である。本論文では、個々の雨水流の持つ局所的法則の平均化の手段として流域貯留量に注目し、流域貯留量と流出量の関係から出水形態に関する考察を行った。また、流出解析に必要なパラメータの最適値探索には、現在盛んに応用研究が行われている最適化手法である遺伝的アルゴリズムを用い、その探索能力を検討した。得られた結果を要約すると以下のとおりである。すなわち、1.遺伝的アルゴリズムは、短時間でパラメータの最適値探索を行うことができる。2.流域貯留量と流出量の関係は、ピーク流出量発生時点の付近では直線になり、その傾き(P)は流域貯留量7.6mmを境に変化する。3.この7.6mmは水文活性層の厚さに対応し、流域貯留量が7.6mm以下では中間流が卓越しており、7.6mm以上では表面流が発生し始めていると推察される。以上のように、流域貯留量と流出量の関係から試験流域における出水形態を考察することができた。
著者
田齊 秀章 平松 和昭 森 牧人 四ヶ所 四男美
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.173-183, 2004-10

近年、流域の物理性がある程度考慮され、集中定数型と分布定数型それぞれの特徴が組み合わされたモデルとして、準分布定数型貯留モデルであるOP-MODELが注目されている。OPMODELは、地下水貯留部の水収支は集中定数型として扱い、地表流出および地下水涵養までを含めた表層および土壌部分は分割されたグリッドごとに分布定数型として扱うという特徴を持つ。すなわち、地下水は集中定数型の特長である単純な構造で表し、流路網を形成する地形や、時空間的に変動する流出寄与域については分布定数型モデルのパラメータで表現される。OPMODELの特長は、DEMから計算される地形指標をもとに、流域表層土壌の空間的な乾湿状態を計算し、地表流の発生を空間的に算定できる点にある。本研究では、御手洗水試験流域(流域面積0.095km2)を対象とし、山地小流域の長短期流出解析におけるOPMODELの適用可能性の検討を行った。7個の未知パラメータの最適値探索には単純GAを用いた。検討の結果、単純GAによる最適値探索で得られたパラメータを使用することで、ハイドログラフの低位部から高水部までを良好に再現可能であり、山地小流域の長短期流出解析にOPMODELが有効であることが明らかになった。なお、本研究で検討したOPMODELでは、流域が乾燥状態にある時に少量の降雨があった場合、計算ハイドログラフに流量の上昇波形が出現しないという問題点が見られた。これは、1.根群域の水収支に用いられた蒸発散位の過大評価、2.流域の表層土層厚は流域内で一様でないにもかかわらず、OPMODELの根群域の計算および関連パラメータは流域内の全グリッドで共通としていること、3.河道降雨の影響、などが考えられたがこれらの点は今後の課題としたい。