著者
永吉 絹子 植木 隆 真鍋 達也 遠藤 翔 永井 俊太郎 梁井 公輔 持留 直希 平橋 美奈子 小田 義直 中村 雅史
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.762-771, 2016-08-01 (Released:2016-08-18)
参考文献数
19
被引用文献数
3

今回,我々は腸管子宮内膜症に対し,腹腔鏡手術を施行した5例を経験したので,報告する.症例は20~40歳代の未産婦の女性で,4例は繰り返す腹痛と腸閉塞症状の検査により腸管子宮内膜症が疑われ,1例は原因不明の消化管穿孔の診断で,腹腔鏡補助下に腸管切除が行われた.3例は回腸に,2例は直腸に狭窄病変を認めた.病理組織学的検査より,全例で腸管子宮内膜症と診断された.いずれも術後経過は良好で退院し,現在のところ再発の所見は認められていない.低侵襲性に優れた腹腔鏡手術は,腸管子宮内膜症に対し術後の早期回復と早期退院に有用で,拡大視効果により子宮・付属器が温存でき安全に手術を行える可能性が示唆された.
著者
八尾 隆史 平橋 美奈子
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.415-423, 2012 (Released:2012-04-25)
参考文献数
108
被引用文献数
3

特発性腸間膜静脈硬化症は比較的まれな疾患であるが,現在ではひとつの疾患概念として定着している.平均年齢60歳代で,やや女性に多く,日本人を中心としたアジア人のみが罹患している.その病変は回盲部から横行結腸までが最も多いが,S状結腸・直腸へも広がっている症例もみられる.腹部単純X線写真では右側腹部に線状石灰化像あるいはCT検査にて腸管壁および腸間膜に一致して石灰化像を認めるのが典型的である.組織学的には静脈壁の著明な線維性肥厚と石灰化,粘膜下層の高度の線維化,粘膜固有層の著明な膠原線維の血管周囲性沈着などが特徴的所見であり,びらんや潰瘍部以外では炎症所見に乏しいことも重要なその特徴の一つである.無症状の場合は保存的に管理し,自覚症状の出現や潰瘍・狭窄を伴った場合は外科的切除されるのが一般的である.その原因は不明であるが,漢方薬を含めた何らかのToxic agentが特発性腸間膜静脈硬化症の発症の要因の一つとして注目されている.今後,発症原因が解明され予防法が確立されることを期待したい.