著者
渡辺 敏 井澤 和大 小林 亨 平澤 有里 松澤 智美 大宮 一人
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.442-442, 2003

【目的】大動脈瘤症例は慢性期の再解離や血圧評価に一定の見解がないため,客観的な評価手段がなく運動療法の効果判定が困難である。我々はSF-36を効果判定として利用することを考え,遠隔期の症例に断片調査を実施しその有用性を報告した。今回はSF-36とHAD(Hospital Anxiety and Depression)を利用して急性期症例の断片調査と,2症例の追跡調査を実施したので報告する。【方法】当院で急性期治療を受け外来通院中の大動脈瘤症例を対象に,本調査の趣旨を説明し同意を得てSF-36とHADの質問調査を実施した。急性期断片調査は内科治療5例(68歳±9歳)・外科治療5例(58歳±9歳)を退院時に調査した。追跡調査は外科治療を受けた2例(症例A65歳・症例B44歳)を,退院時と術後3ヵ月の2回調査した。【結果】急性期断片調査結果は,内科例外科例それぞれHADの平均値anxietyが12・11,depressionが15・14で,SF-36各項目の平均値は身体機能(PF)65・58,身体的日常役割機能(RP)25・50,体の痛み(BP)70・51,全体的健康観(GH)54・39,活力(VT)46・48,社会生活機能(SF)55・53,精神的日常役割機能(RE)20・67,心の健康(MH)61・67であった。2症例の追跡調査結果は,症例AはHADの平均値anxietyが11から11,depressionが11から12と変化し,SF-36各項目の平均値はPF45から80,RP100から100,BP61から90,GH50から57,VT5から55,SF75から87.5,RE100から100,MH60から92と変化した。症例BはHADの平均値anxietyが14から12,depressionが15から12と変化し,SF-36各項目の平均値はPF55から85,RP50から100,BP 74から100,GH20から57,VT50から65,SF62.5から75,RE33.3から100,MH52から83と変化した。【考察】急性期断片調査結果ではHADの値が高く,身体運動能力の改善と血圧管理の会得による,不安の改善が重要であると考えられた。SF-36では内科例でRP・REの低下を,外科例ではGH・VTの低下を認め,遠隔期とは違う経時的な因子の影響が予測された。2症例の追跡調査結果ではHADの改善傾向とSF-36の明らかな改善を認めた。これは運動療法の実施によって症例のQOLが改善したことを示したと考えられ,運動療法効果の判定が可能であると考えられた。【まとめ】大動脈瘤症例の運動療法効果判定としてSF-36を利用して,急性期断片調査と2症例の追跡調査を実施した。SF-36での運動療法効果判定が可能であると考えられ,今後症例の追加検討が必要であると考えられた。
著者
平澤 有里 笠原 酉介 大森 圭貢 渡辺 敏 武者 春樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1202-D1202, 2005

【目的】慢性心不全患者は,急性憎悪期に安静臥床や活動の制限を受けることが多い.そのため,入院を契機に歩行能力が低下する症例が少なくなく,その傾向は高齢であるほど顕著である.高齢患者の歩行能力を規定する因子としては下肢筋力があるが,高齢心不全患者の下肢筋力は健常高齢者に比べて低値であることがすでに報告されている.そこで本研究では,後期高齢心不全患者を対象に,歩行能力と心機能,下肢筋力の関係を検討したので報告する.<BR>【対象】対象は,75歳以上の後期高齢心不全患者計28名(男性9名 女性19名,平均年齢82±17歳,基礎疾患は陳旧性心筋梗塞10名,拡張型心筋症6名,その他12名)であった.いずれも心不全の急性期を脱しリハビリテーションが施行可能となった症例であり,重度の痴呆や運動器疾患を呈する症例は除外した.<BR>【方法】検討項目は,心機能として脳性ナトリウム利尿ペプチド(以下BNP)と左室駆出分画(以下EF),入院日数,下肢筋力,歩行能力とした.下肢筋力は,アニマ社製μ-TasMT-01を使用し,等尺性膝伸展筋力体重比を測定した.歩行能力は院内歩行の可否,可能な連続歩行距離とその制限因子を調査した.分析はSPSS12.0Jを使用し,χ<SUP>2</SUP>検定,Mann-WhitneyのU検定,Spearmanの相関係数を用いて検討した.<BR>【結果】平均値と標準偏差はそれぞれ,BNP1315±1095pg/ml,EF47.7±17.7%,入院日数41±24日間,下肢筋力29.3±9.1kg/kgであった.院内歩行可能が12名,不可能が16名であり,内4名は歩行不能であった.歩行の可否で有意差が認められたものは性別(p<0.05)下肢筋力(p<0.01)であり,性別では男性の方が歩行可能な症例が多かった.また,連続歩行距離(平均277±264m)と有意な相関が認められたものは年齢(r=0.555,p<0.05)と下肢筋力(r=0.686,p<0.01)であり,心機能(BNP,EF)と歩行能力は相関がなかった.連続歩行の制限因子は下肢疲労が14名(50%),息切れが10名(36%),異常心拍血圧反応が2名(7%),その他2名(7%)であった.<BR>【考察】今回の結果より,後期高齢心不全患者の歩行能力には下肢筋力が大きく関係していることが示唆された.連続歩行の制限因子が下肢疲労である症例が多く存在することは,同程度の心機能でも下肢筋力増強によりさらに歩行能力が向上する可能性があることを表している.後期高齢心不全患者のリハビリテーションは下肢筋力トレーニングが非常に重要であることが改めて考えられた.