著者
多田 実加 大森 圭貢 佐々木 祥太郎 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎 宮﨑 登美子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-74, 2018-03-30 (Released:2019-08-07)
参考文献数
47

本邦におけるHand-held Dynamometer(以下,HHD) を用いた膝伸展筋力測定方法を文献検証した.医中誌のデータベースを用い,「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」のキーワードで文献検索を行った.抽出された文献のうち膝伸展筋力測定方法に関して再現性と妥当性が検討された32文献を対象とした.運動器疾患を有さない対象者において再現性を検討した報告は16文献あり,その内15文献はHHDにベルト固定を併用していた.端座位でベルト固定を併用した測定における級内相関係数は,検者内,検者間ともに1つの論文を除きすべて0.9を超えていた.一方,筋力水準が高い場合,ベルト固定なし条件での再現性は不良であった.同時的妥当性を検討した8文献では,7文献においてベルト固定が行われていた.いずれも等速性筋力測定装置などによって得られた値との間に強い相関関係を認めていた(0.73~0.98).運動器疾患を有する対象者で検討した8文献では,4文献においてベルト固定が併用されており,検者内級内相関係数は0.9を超えていた.ベルト固定を併用していない1文献でも,級内相関係数は0.9を超えていたが,測定された筋力は極めて低値であった.運動器疾患のない対象者においては,端座位でのベルト固定を併用したHHDによる測定方法が選択されるべきである.
著者
大森 圭貢 熊切 博美 小野 順也 立石 真純 笠原 酉介 武市 梨絵 横山 有里 岩崎 さやか 多田 実加 最上谷 拓磨 笹 益雄 飯島 節
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1089-Ab1089, 2012

【はじめに、目的】 両側松葉杖での一側下肢完全免荷歩行(以下,松葉杖免荷歩行)は,下肢の免荷を必要とする際の有効な移動手段であるが、その獲得に難渋することは少なくない.松葉杖免荷歩行には,肩甲帯下制筋,肘伸展筋,肩内転筋,手指屈筋などの筋が関与し,それぞれ徒手筋力検査法でgood以上の筋力が必要とされている.しかし,徒手筋力検査法による筋力評価は客観性が低いことが指摘されており,臨床での指標としては不十分な面がある.松葉杖免荷歩行の獲得に必要な上肢筋力を客観的な尺度で明らかにすることができれば,トレーニング内容や期間などを考える際の有用な情報になると考えられる.本研究の目的は,松葉杖免荷歩行獲得の可否と等尺性上肢筋力の関連を検討し,松葉杖免荷歩行獲得に必要な上肢筋力を明らかにすることである.【方法】 対象者は松葉杖免荷歩行練習の指示があった者のうち,20歳以上,上肢に骨関節疾患の既往がない,評価に必要な指示に従える,研究に同意が得られる,の全ての条件を満たす者とした.前向きコホートデザインを用い,年齢,身長,Body Mass Index,性別,松葉杖歩行の経験,松葉杖免荷歩行獲得の可否,上下肢筋力を評価,測定した.松葉杖免荷歩行が可能か否かは,200m以上の安全な歩行の可否で判断した.理学療法開始日から毎回の実施日に3名の理学療法士が確認し,2名以上が一致した評価を採用した.そして理学療法開始日に歩行可能な者を歩行自立群,理学療法開始から1週間以内に歩行可能になった者を獲得群,歩行可能にならなかった者を不獲得群に分類した.理学療法開始日に,握力,肘伸展筋力,肩伸展筋力,肩内転筋力,肩甲帯下制筋力,膝伸展筋力を測定した.測定には,油圧式握力計と徒手筋力計を用い,上肢筋力は左右それぞれの最大値の平均,膝伸展筋力は非免荷側の最大値を求め,それぞれ体重比を算出した.松葉杖免荷歩行と上下肢筋力の評価は,それぞれ異なる理学療法士が行い,さらにお互いに得られた結果を伏せるようにし,測定者バイアスを排除した.分析は,松葉杖免荷歩行獲得に関連する変数を検討するために,獲得群と不獲得群間の各変数をχ2乗検定とMann-WhitneyのU検定で比較した.次に有意差のあった筋力の変数が,獲得群と不獲得群を判別できるかをReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線の曲線下面積から検討した.統計的有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院臨床試験委員会の承認を受け(受付番号第244号),対象者には十分な説明を行い,書面による同意を得て実施した.【結果】 対象者32名のうち,歩行自立群13名を除いた19名を分析対象とした.単変量解析の結果,獲得群(6名)/不獲得群(13名)の中央値は,身長168.5/161.0(cm),握力0.64/0.46(kgf/kg),肘伸展筋力0.24/0.19(kgf/kg),肩伸展筋力0.14/0.11(kgf/kg),肩内転筋力0.21/0.13(kgf/kg)であり,いずれも獲得群の方が有意に高値であった.その他の変数は,いずれも有意差がなかった.ROC曲線の曲線下面積は握力が0.95であり,獲得群を判別できる有意な指標であった.さらに握力0.57kgf/kgでは,感度83%,偽陽性度8%の精度で獲得群を判別できた.同様に肘伸展,肩伸展,肩内転のそれぞれの筋力の曲線下面積は,順に0.87,0.85,0.89であり,それぞれの筋力(kgf/kg)が,0.23,0.13,0.17では,感度80%以上,偽陽性度25%以下で獲得群を判別できた.【考察】 理学療法開始日に松葉杖免荷歩行が可能な者は半数以下であり,1週間の訓練後にも松葉杖免荷歩行獲得が困難な者が少なくなかった.獲得群と不獲得群間では身長,握力,肘伸展筋力,肩伸展筋力,肩内転筋力で有意差があったことから,理学療法開始1週程度の間に松葉杖免荷歩行を獲得できるか否かには,これらの因子が関連すると考えられた.さらに握力0.57 kgf/kg,肘伸展筋力0.23 kgf/kg,肩伸展筋力0.13 kgf/kg,肩内転筋力0.17 kgf/kgでは,それぞれ高い精度で獲得群を判別できたことから,これらの上肢筋力を上回った者では,1週間程度の理学療法によって松葉杖免荷歩行獲得が見込まれると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 松葉杖免荷歩行の獲得が容易ではないこと,そして歩行ができない者が1週間内に獲得できるか否かを理学療法開始時の評価によって予測できる可能性を示した研究であり,理学療法評価及び予後予測において有用である.
著者
植松 光俊 新垣 盛宏 梶原 史恵 酒井 美園 大森 圭貢 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.201-206, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
3

障害を持った人の運動, 動作分析や評価のプロフェッショナルである理学療法士(PT)にとって, 日常生活動作のあらゆる動作について自立度判定を的確にできる能力を有していることは必要最低限の資質というべきである。自立度判定というと「ある動作について自立, 監視, 介助レベルの動作方法を特定し, 各段階での介助度, 条件および適応環境条件(使用する介助支持用具や福祉機器等の提示)を評価する」とある。しかし, 今回のワークショップでは, 「歩行自立」に限定して明らかにするための判定要因, 基準および手順を明確にすることに拘ることにした。歩行自立度序説 1. 歩行自立度判定の必要性 1)なぜ自立判定が必要か? 自立している動作, 自立可能な方法, 自立できる生活範囲をできるだけ正確に早期に把握し, その情報を生活に密着したリハビリチームスタッフである看護, 介護職に提供し, 実際に「自立生活」を日常的に取り入れることができると, 患者さんが理学療法(以下, PT)場面だけで得られる動作量よりはるかにその動作機会は多くなり, そのことによる全身調整能力, 他の体力指標の改善効果は大きいといえる。
著者
寺尾 詩子 山崎 裕司 横山 仁志 大森圭貢 笠原 美千代 平木 幸治
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2004-03-31

本研究の目的は,昇段動作に必要な下肢筋力水準について検討することである.対象は,運動器疾患を有さない高齢患者166名(74.4歳)である.昇段能力は高さが40cm,30cm,20cm,10cmの練習台を用い,上肢の支持がない状態での昇段の可否を調査した.下肢筋力は,椅子座位,膝関節屈曲度位での等尺性膝伸展筋力を測定した.昇段能力が優れた群において膝伸展筋力は有意に高値を示した(p<0.001).膝伸展筋力が体重の17%を下回る場合,いずれの段差においても昇段は不可能であった.筋力が30%を上回る場合,全ての症例が10cmの昇段が可能で,80%の症例は20cmの昇段が可能であった.筋力が40%を上回る場合,80%の症例が30cmの昇段が可能であった.さらに,筋力が50%を上回る場合,80%の症例が40cmの昇段が可能であった.本研究から,高齢患者における昇段能力の規定要因としては膝伸展筋力が重要であり,昇段動作が手すりなしで自立するためには最低限の下肢筋力が必要なことが示唆された.
著者
田中 瞳 植田 拓也 安齋 紗保理 山上 徹也 大森 圭貢 柴 喜崇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】高齢者における睡眠は加齢性変化によって中途覚醒の増加,午睡の増加,睡眠効率の低下などが認められる。高齢者の中でも認知症の前駆段階である加齢関連認知的低下(以下,Aging-associated Cognitive Decline:AACD(Levy R, 1994))者と類似概念の軽度認知障害高齢者において,健常高齢者より日中の眠気が弱い傾向であるという結果が示されている(Jia-Ming Yu, 2009)が,AACD者の睡眠の特徴を示したものは少ない。そこで本研究の目的は,健常高齢者とAACD者の夜間睡眠と日中の眠気を比較し,違いを明らかにすることとした。</p><p></p><p>【方法】対象はA県B市在住の認知症の確定診断がなされている者と要支援・要介護者を除く65歳以上の高齢者116名で,B市の広報誌と基本チェックリストの返送により募集した。除外基準は認知症の可能性(Five Cognitive Functions(以下,ファイブ・コグ)の総合ランク得点が5~10点),うつ症状(Geriatric Depression Scale-15が5点以上),睡眠剤の使用,脳血管障害による片麻痺・高次脳機能障害,データ欠損がある場合とした。調査は郵送で自記式アンケート,会場でファイブ・コグを実施した。調査項目は基本属性,認知機能(ファイブ・コグ),主観的な睡眠習慣や睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(以下,Japanese version of Pittsburgh Sleep Quality Index:PSQI-J)),日中の眠気(日本語版Epworth Sleepiness Scale(以下,Japanese version of ESS:JESS))である。分析方法はファイブ・コグの総合ランク得点が15点を健常群,11~14点をAACD群として,2群においてPSQI-JとJESSの総得点はMann-Whitney U Test,カットオフ値を基準とした良否はχ二乗検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】健常群37名,AACD群18名の計55名(男性:18名,女性:37名)を選定し,AACDの出現頻度は母集団の19.83%,基本属性(年齢:健常群72.73±4.91歳,AACD群73.50±4.96歳,教育年数:健常群12.62±2.74年,AACD群12.72±2.08年)に有意差は認められなかった。除外者は,認知症の可能性4名,うつ症状41名,睡眠剤の使用7名,データ欠損9名であった。2群において,PSQI-Jの総得点と良否(健常群31名,AACD群16名),JESSの良否(健常群35名,AACD群16名)に有意差は認められなかったが,JESSの総得点(健常群35名,AACD群16)に有意差(p=0.003)が認められ,健常群に比べ,AACD群の日中の眠気が弱かった。</p><p></p><p>【結論】高齢者において健常群とAACD群の主観的な睡眠習慣や睡眠の質に差は認められなかったが,健常群に比べ,AACD群の日中の眠気が弱かった。</p>
著者
高見 奈津子 前平 奈加 石井 照子 宗形 成子 二瓶 忠臣 小室 英生 奥山 高司 関和 良太 江口 紘也 推名 翔太 大森 圭貢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】介護予防通所リハビリテーション(以下通所リハ)は介護予防,特に三次予防の役割を有する。高齢化が進み2010年,N市の高齢化率は23%となる中,当通所リハもこの役割を担ってきた。当通所リハでは①心身機能と生活状況聴取,②身体機能練習として四肢体幹筋力練習,バランス練習,起居移動動作練習を行っている。本研究の目的は,1.利用者の身体機能検査平均値と健常高齢者平均値との比較,2.転倒カットオフ値との比較,3.初回最終検査値の変化,これらより通所リハの効果を明らかにする事である。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】対象は,当通所リハ開始1か月以内に初回検査,その後平成26年4月から平成28年4月の間に最終検査を実施した75歳以上の要支援認定者(以下要支援者)17名(男性4名,女性13名)。年齢は初回最終検査の順に81.5±5.1歳と84.8±4.1歳。初回最終検査までの期間は平均37カ月±25カ月で最短7カ月,最長82カ月。通所頻度は週1から2回。検査項目は握力,5m最大歩行速度(以下歩行速度),ファンクショナルリーチテスト(以下FRT),timed up and goテスト(以下TUG)の結果を後方視した。先行研究に75歳以上要支援者の身体機能報告は少なかったため平均値を健常高齢者平均値と比較し,平均値を超えた割合を算出した。また対応のあるt検定を用い初回最終検査で各項目の違いを分析した。FRTとTUGは先行研究から転倒リスクのカットオフ値15.3cm以下と13.5秒以上に相当しない割合を算出した。次に検査項目毎に初回最終で維持向上した割合を算出した。更に各項目の初回最終の変化率を算出し介入期間との相関より関与期間の影響をみた。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】初回最終検査の平均値は,握力は20.0±7.2kg,19.5±6.9kg,歩行速度は0.73m/秒,0.86m/秒,FRTは18.6±7.2cm,20.2±6.9cm,TUGは17.9±10.8秒,18.0±9.0秒であった。t検定ではいずれの項目も有意差はなかった。健常者の平均値を超えた割合は,初回最終検査の順に握力は59%と71%,歩行速度は29%と18%,FRTは12%と24%,TUGは0%と0%であった。転倒リスクとの比較では初回最終検査の順にFRTが64.7%と71%,TUGが41.2%と34.4%であった。初回最終検査の間で維持向上した割合は握力52.9%,歩行速度58.8%,FRT64.7%,TUGは58.8%であった。また関与期間と初回最終変化率は5m最大歩行速度以外では相関がなかった。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】身体機能は加齢に伴う有意な低下がなく,半数以上の身体機能が維持向上できていると考えられた。また健常高齢者との比較でもTUGを除くいずれの項目も平均値を超えた割合は増加しており通所リハによる効果があったと考えられた。関与期間にはややばらつきがみられたが歩行速度以外は相関がなく影響は少なかった。しかしバランス機能が健常高齢者の平均値より低い傾向にある事,初回最終で維持改善しない者が存在する事より今後はその者に対する関わり方を検討することで更なる効果が期待できると考えられた。</p>
著者
平澤 有里 笠原 酉介 大森 圭貢 渡辺 敏 武者 春樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1202-D1202, 2005

【目的】慢性心不全患者は,急性憎悪期に安静臥床や活動の制限を受けることが多い.そのため,入院を契機に歩行能力が低下する症例が少なくなく,その傾向は高齢であるほど顕著である.高齢患者の歩行能力を規定する因子としては下肢筋力があるが,高齢心不全患者の下肢筋力は健常高齢者に比べて低値であることがすでに報告されている.そこで本研究では,後期高齢心不全患者を対象に,歩行能力と心機能,下肢筋力の関係を検討したので報告する.<BR>【対象】対象は,75歳以上の後期高齢心不全患者計28名(男性9名 女性19名,平均年齢82±17歳,基礎疾患は陳旧性心筋梗塞10名,拡張型心筋症6名,その他12名)であった.いずれも心不全の急性期を脱しリハビリテーションが施行可能となった症例であり,重度の痴呆や運動器疾患を呈する症例は除外した.<BR>【方法】検討項目は,心機能として脳性ナトリウム利尿ペプチド(以下BNP)と左室駆出分画(以下EF),入院日数,下肢筋力,歩行能力とした.下肢筋力は,アニマ社製μ-TasMT-01を使用し,等尺性膝伸展筋力体重比を測定した.歩行能力は院内歩行の可否,可能な連続歩行距離とその制限因子を調査した.分析はSPSS12.0Jを使用し,χ<SUP>2</SUP>検定,Mann-WhitneyのU検定,Spearmanの相関係数を用いて検討した.<BR>【結果】平均値と標準偏差はそれぞれ,BNP1315±1095pg/ml,EF47.7±17.7%,入院日数41±24日間,下肢筋力29.3±9.1kg/kgであった.院内歩行可能が12名,不可能が16名であり,内4名は歩行不能であった.歩行の可否で有意差が認められたものは性別(p<0.05)下肢筋力(p<0.01)であり,性別では男性の方が歩行可能な症例が多かった.また,連続歩行距離(平均277±264m)と有意な相関が認められたものは年齢(r=0.555,p<0.05)と下肢筋力(r=0.686,p<0.01)であり,心機能(BNP,EF)と歩行能力は相関がなかった.連続歩行の制限因子は下肢疲労が14名(50%),息切れが10名(36%),異常心拍血圧反応が2名(7%),その他2名(7%)であった.<BR>【考察】今回の結果より,後期高齢心不全患者の歩行能力には下肢筋力が大きく関係していることが示唆された.連続歩行の制限因子が下肢疲労である症例が多く存在することは,同程度の心機能でも下肢筋力増強によりさらに歩行能力が向上する可能性があることを表している.後期高齢心不全患者のリハビリテーションは下肢筋力トレーニングが非常に重要であることが改めて考えられた.
著者
大森 圭貢 横山 仁志 青木 詩子 笠原 美千代 平木 幸冶 山崎 裕司 笹 益雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.106-112, 2004-04-20
被引用文献数
14

本研究は,立ち上がり動作が障害される下肢筋力水準を明らかにすることを目的として,等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連について検討した。対象は,運動器疾患を有さない65歳以上の高齢患者205名である。立ち上がり動作は,座面高40cm,30cm,20cmの台からの立ち上がりの可否を調査した。等尺性膝伸展筋力は,腰掛け座位で下腿を下垂させた肢位での筋力を徒手筋力測定器によって測定し,左右の脚の平均値を体重で除した値を百分率で表した。単変量解析によって,座面高40cm台からの立ち上がり不可能群,40cm可能群,30cm可能群,20cm可能群を比較した結果,年齢,身長,体重,Body Mass Index,等尺性膝伸展筋力に有意差を認めた。ロジスティック解析では,等尺性膝伸展筋力のみが,各座面高からの立ち上がりの可否に有意に影響を与えていた。等尺性膝伸展筋力が35%,45%,55%を上回った場合,それぞれ全ての者が40cm台,30cm台,20cm台からの立ち上がりが可能であった。一方,等尺性膝伸展筋力がこれらの値を下回る場合,筋力の低下に従って各座面高からの立ち上がり可能者の割合は減少した。等尺性膝伸展筋力が20%を下回った場合,40cm台,30cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。同様に等尺性膝伸展筋力が30%を下回った場合,20cm台からの立ち上がり可能者を認めなかった。これらのことは,高齢患者の等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力が密接に関連することを示しており,等尺性膝伸展筋力が一定水準を下回った場合,立ち上がり動作が困難になると考えられた。
著者
大森 圭貢
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (リハビリテーション科学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6179号)