著者
佐藤 宏之 井辺 時雄 根本 博 赤間 芳洋 堀末 登 太田 久稔 平林 秀介 出田 収 安東 郁男 須藤 充 沼口 憲治 高舘 正男 平澤 秀雄 坂井 真 田村 和彦 青木 法明
出版者
農業技術研究機構作物研究所
巻号頁・発行日
no.9, pp.63-79, 2008 (Released:2010-07-07)

「ミルキープリンセス」は、縞葉枯病抵抗性を備えた栽培特性の優れる低アミロース米品種を育成することを目標に、「関東163号」を母、「鴻(こう)272」を父とする交雑組み合わせから育成された品種である(「鴻272」は、「コシヒカリ」の低アミロース性突然変異系統であり、「ミルキークイーン」の姉妹系統)。1997年から「関東194号」の地方系統名で、関係府県に配付して地域適応性を検討すると共に、品質・食味等の特性を調査した。2003年に「水稲農林387号」として登録され、「ミルキープリンセス」と命名された。この品種の特性は以下の通りである。1. 出穂期及び成熟期は「ミルキークイーン」より2日程度早く、育成地では“早生の晩”に属する粳種である。耐倒伏性は「ミルキークイーン」より強く“強”である。2. 収量性は、育成地における標肥栽培(N成分:6~8kg/a)では「ミルキークイーン」を10%程度下回るが、多肥栽培(N成分:10~14kg/a)では「ミルキークイーン」並である。3. 低アミロース性遺伝子Wx-mqを保有し、白米のアミロース含有率は約9%の低アミロース米品種である。炊飯米の粘りは「コシヒカリ」に優り、「ミルキークイーン」並である。食味総合評価値は、「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」並の“上中”である。4. 縞葉枯抵抗性遺伝子Stvb-iを保有し、同病害に対して“抵抗性”である。5. Wx-mq及びStvb-i遺伝子を併せ持つ低アミロース米品種は、現時点で本品種以外には育成されていないことから、2遺伝子のDNA鑑定法(佐藤ら(2002)、斎藤ら(1999))を併用することで、「ミルキープリンセス」は他の水稲品種との識別が可能である(2007年現在)。以上の特性から、「ミルキープリンセス」は縞葉枯病常発地や肥沃地向けの低アミロース米品種として、普及・活用が期待される。
著者
平山 正賢 根本 博 平澤 秀雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.245-252, 2007-04-05
参考文献数
14
被引用文献数
2

畑圃場で栽培した中生及び晩生の日本陸稲8品種と水稲1品種を用いて,6年にわたり成熟期の根系の発達程度を調査し,深根性が耐干性に及ぼす影響を明らかにすると共に,中晩生品種群における深根性程度の基準品種を設定した.根系の発達程度の観察には発掘法,モノリス法,コアサンプリング法の3種類の方法を用いた.1994年〜1996年は発掘法により土壌層位毎に根数と根の太さを達観で観察し,根系の最深到達深度を計測した.1996年はモノリス法により根を採取し,層位毎に根長と根の乾物重を測定した.1998年,2001年,2002年はコアサンプリング法により根を採取し,層位毎に根の乾物重を測定した.調査期間を通して,耐干性程度の異なる中生・晩生熟期の日本陸稲品種では,根系の発達程度に品種間差が認められた.特に30cmより深い層の根量は大きな品種間差が認められた.ゆめのはたもちなど耐干性が強い品種は30cmより深い層の根量が安定して多いの対し,ミズハタモチなど耐干性が弱い品種は根量が少なかった,よって,耐干性の強弱と深根性との間には明らかな関連があることが圃場条件で実証された.今回の調査結果から,中生・晩生熟期の日本陸稲品種における深根性の基準品種として,深根性ゆめのはたもち,やや深根性陸稲農林編26号,やや浅根性ミズハタモチを設定した,また,根系の調査法として,コアサンプリング法による土壌深層の根量,モノリス法による土壌深層の根量及び発掘法により直接観察した根の深さとの間にはそれぞれ正の相関関係が認められ,コアサンプリング法が簡易かつ信頼性のある根系採取法として実用的であると考えられた.