著者
重宗 明子 三浦 清之 上原 泰樹 小林 陽 古賀 義昭 内山田 博士 佐本 四郎 笹原 英樹 後藤 明俊 太田久稔#清水博之#藤田米一#石坂昇助#.中川原捷洋#奥野員敏#山田利昭#小牧有三#堀内久満#福井清美#大槻寛#丸山清明
出版者
農業技術研究機構中央農業総合研究センター
雑誌
中央農業総合研究センター研究報告 (ISSN:18816738)
巻号頁・発行日
no.16, pp.17-37, 2011-03

「華麗舞」は1979年に北陸農業試験場(現中央農業総合研究センター・北陸研究センター)において,超多収品種の育成を目的として,インド型多収品種「密陽23号」を母とし,日本型多収品種「アキヒカリ」を父とする人工交配を行って育成された品種である.1990年から「北陸149号」の系統名で関係各府県における奨励品種決定調査試験およびその他の試験に供試してきたものであり,2006年10月4日に新品種として「水稲農林415号」に命名登録された「華麗舞」の特性の概要は以下のとおりである.1. 出穂期は「コシヒカリ」より4~5日早く,成熟期は「コシヒカリ」より5~9日早く,育成地では"中生の早"である.2. 稈長は「コシヒカリj」より20cm程短く" 短",穂長は「コシヒカリ」より長く" やや長"穂数は「コシヒカリ」より少なく"少",草型は"穂重型" で,脱粒性は"難"である.粒形は"細長"である.千粒重は「コシヒカリ」よりやや軽い. 3.収量は,標肥では「コシヒカリ」より少ないが,多肥では「コシヒカリ」並である.4.炊飯米は, 「コシヒカリ」.「日本晴」よりも粘りが少なく,硬い.表面の粘りが少ないのでとろみのあるカレーソースとのなじみが良く,カレーライスへの嗜好性が高い.5. いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaとPibを併せ持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性は"中",穂いもち圃場抵抗性は不明である.穂発芽性は"やや易",障害型耐冷性は"極弱"である.
著者
長岡 一朗 三浦 清之 上原 泰樹 笹原 英樹 清水 博之 太田 久稔 後藤 明俊 重宗 明子 小牧 有三 大槻 寛
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.6-9, 2015-05-30 (Released:2017-03-27)
参考文献数
1

水稲新品種「夢の舞」は,北陸では早生に属する粳種で,同熟期の「ひとめぼれ」に対して多肥条件で1割程多収であり,いもち病圃場抵抗性は葉いもち,穂いもちともに「やや強」,障害型耐冷性が「極強」である.
著者
福嶌 陽 太田 久稔 梶 亮太 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.439-444, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

東北地域の飼料用水稲品種においては,育苗の際に種子の発芽・出芽が不良となることが問題となっている.その原因を解明することを目的として,飼料用を含む20の水稲品種・系統を用いて,温湯消毒および低温浸種が発芽に及ぼす影響を調査した.60℃・30分の長期間の温湯消毒によって,発芽率は低下した.その低下程度は,主食用品種よりも飼料用品種,糯品種,インド型品種で大きかった.東北地域の主な飼料用品種の中では,「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」,「うしゆたか」,「夢あおば」で発芽率が特に低下した.また,穂発芽状態の種子は,温湯消毒によって発芽率が顕著に低下したことから,穂発芽性が“易”の飼料用品種は,種子が穂発芽状態にあり,温湯消毒によって発芽率が低下する危険性があると推察された.12℃の低温および5℃の極低温の浸種試験においては,東北地域の主要な飼料用品種の中で「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」が5℃の極低温によって発芽率が低下した.以上の結果から,東北地域の飼料用水稲品種の一部においては,長時間の温湯消毒や極低温の浸種によって,発芽率が低下する危険性があると推察された.
著者
佐藤 宏之 井辺 時雄 根本 博 赤間 芳洋 堀末 登 太田 久稔 平林 秀介 出田 収 安東 郁男 須藤 充 沼口 憲治 高舘 正男 平澤 秀雄 坂井 真 田村 和彦 青木 法明
出版者
農業技術研究機構作物研究所
巻号頁・発行日
no.9, pp.63-79, 2008 (Released:2010-07-07)

「ミルキープリンセス」は、縞葉枯病抵抗性を備えた栽培特性の優れる低アミロース米品種を育成することを目標に、「関東163号」を母、「鴻(こう)272」を父とする交雑組み合わせから育成された品種である(「鴻272」は、「コシヒカリ」の低アミロース性突然変異系統であり、「ミルキークイーン」の姉妹系統)。1997年から「関東194号」の地方系統名で、関係府県に配付して地域適応性を検討すると共に、品質・食味等の特性を調査した。2003年に「水稲農林387号」として登録され、「ミルキープリンセス」と命名された。この品種の特性は以下の通りである。1. 出穂期及び成熟期は「ミルキークイーン」より2日程度早く、育成地では“早生の晩”に属する粳種である。耐倒伏性は「ミルキークイーン」より強く“強”である。2. 収量性は、育成地における標肥栽培(N成分:6~8kg/a)では「ミルキークイーン」を10%程度下回るが、多肥栽培(N成分:10~14kg/a)では「ミルキークイーン」並である。3. 低アミロース性遺伝子Wx-mqを保有し、白米のアミロース含有率は約9%の低アミロース米品種である。炊飯米の粘りは「コシヒカリ」に優り、「ミルキークイーン」並である。食味総合評価値は、「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」並の“上中”である。4. 縞葉枯抵抗性遺伝子Stvb-iを保有し、同病害に対して“抵抗性”である。5. Wx-mq及びStvb-i遺伝子を併せ持つ低アミロース米品種は、現時点で本品種以外には育成されていないことから、2遺伝子のDNA鑑定法(佐藤ら(2002)、斎藤ら(1999))を併用することで、「ミルキープリンセス」は他の水稲品種との識別が可能である(2007年現在)。以上の特性から、「ミルキープリンセス」は縞葉枯病常発地や肥沃地向けの低アミロース米品種として、普及・活用が期待される。
著者
福嶌 陽 太田 久稔 横上 晴郁 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.43-52, 2018-01-05 (Released:2018-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

東北地域における水稲19品種を,1950年以前に育成された品種 (Ⅰ群品種),1980年以前に育成された品種 (Ⅱ群品種),1980年以降に育成され,現在,普及している品種 (Ⅲ群品種),東北農研が育成した最近の主食用品種 (Ⅳ群品種),東北農研が育成した最近の飼料用品種 (Ⅴ群品種) に分類し,その特性を少肥移植栽培において比較した.稈長は,Ⅰ群品種で長く,Ⅱ群品種,Ⅲ群品種で中程度,Ⅳ群品種,Ⅴ群品種で短かった.一方,少肥移植栽培における収量には,品種群による明確な差異は認められなかった.これらのことから,東北地域の水稲品種における収量の歴史的増加の要因としては,施肥量が増加し,それに伴い稈長がやや短く耐倒伏性がやや優れたⅡ群品種,Ⅲ群品種が普及したことが挙げられた.形質間の関係をみると,穂数が少ない品種は,葉身幅が広く,節間直径が太く,1穂籾数が多く,千粒重が重いという関係が認められた.しかし,稈長は,他の形質と密接な関係は認められなかった.これらのことから,品種育成の歴史の中で,稈長が短くなることによって,必然的に変化した形質は少ないと推察された.玄米の外観品質 (品質)・食味に関しては,Ⅰ群品種,Ⅱ群品種は,様々な品質・食味の品種が混在しているのに対して,Ⅲ群品種,Ⅳ群品種は,いずれも品質・食味が優れていると推察された.以上の結果をもとにして,東北地域における水稲品種育成の今後の方向性について論じた.