著者
舘山 元春 坂井 真 須藤 充
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-7, 2005 (Released:2005-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
12 9

複数の低アミロース性母本に由来する系統を供試し,イネの食味に大きく影響する胚乳アミロース含有率の登熟気温による変動を調査した.日本の寒冷地域で作付けされている,「ミルキークイーン」(wx-mq保有),「彩」(du(t)保有),および「スノーパール」の低アミロース性母本に由来する育成系統と,「山形84号」(wx-y保有),「探系2031」,対照としてうるち品種の「つがるロマン」(Wx-b保有)を供試した.人工気象室,ガラス温室および自然条件を組み合わせ,低,中,高温の3つの温度条件で登熟させた時の胚乳アミロース含有率を測定した.「つがるロマン」のアミロース含有率の変動幅は12~23%(高温区~低温区)であり,登熟気温変動1 °C当たりのアミロース含有率の変動幅(Δ AM/ °C)は0.8~1.1%であった.これに対し「ミルキークイーン」由来の系統,ならびに「山形84号」のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より小さかった.一方,「スノーパール」の母本で「ミルキークイーン」や「山形84号」とは異なる Wx座の突然変異による「74wx2N-1」に由来する系統のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より大きく, Δ AM/°Cは「つがるロマン」の1.4~1.9倍であった.「探系2031」のアミロース含有率は,「つがるロマン」と他の低アミロース系統の中間であり, Δ AM/°Cは「つがるロマン」とほぼ等しかった.「ミルキークイーン」由来の系統あるいは「山形84号」と,「74wx2N-1」に由来する系統間に見られるアミロース含有率の温度による変動幅の差は,その保有する低アミロース性遺伝子の違いによる可能性が示唆された.
著者
舘山 元春 坂井 真 須藤 充
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-7, 2005-03-01
参考文献数
23
被引用文献数
4 9

複数の低アミロース性母本に由来する系統を供試し,イネの食味に大きく影響する胚乳アミロース含有率の登熟気温による変動を調査した.日本の寒冷地域で作付けされている,「ミルキークイーン」(<i>wx-mq</i>保有),「彩」(<i>du(t)</i>保有),および「スノーパール」の低アミロース性母本に由来する育成系統と,「山形84号」(<i>wx-y</i>保有),「探系2031」,対照としてうるち品種の「つがるロマン」(<i>Wx-b</i>保有)を供試した.人工気象室,ガラス温室および自然条件を組み合わせ,低,中,高温の3つの温度条件で登熟させた時の胚乳アミロース含有率を測定した.「つがるロマン」のアミロース含有率の変動幅は12~23%(高温区~低温区)であり,登熟気温変動1 &deg;C当たりのアミロース含有率の変動幅(&Delta; AM/ &deg;C)は0.8~1.1%であった.これに対し「ミルキークイーン」由来の系統,ならびに「山形84号」のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より小さかった.一方,「スノーパール」の母本で「ミルキークイーン」や「山形84号」とは異なる <i>Wx</i>座の突然変異による「74wx2N-1」に由来する系統のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より大きく, &Delta; AM/&deg;Cは「つがるロマン」の1.4~1.9倍であった.「探系2031」のアミロース含有率は,「つがるロマン」と他の低アミロース系統の中間であり, &Delta; AM/&deg;Cは「つがるロマン」とほぼ等しかった.「ミルキークイーン」由来の系統あるいは「山形84号」と,「74wx2N-1」に由来する系統間に見られるアミロース含有率の温度による変動幅の差は,その保有する低アミロース性遺伝子の違いによる可能性が示唆された.<br>
著者
舘山 元春 坂井 真 須藤 充
出版者
日本育種学会
巻号頁・発行日
pp.1-7, 2005 (Released:2011-03-05)

複数の低アミロース性母本に由来する系統を供試し、イネの食味に大きく影響する胚乳アミロース含有率の登熟気温による変動を調査した。日本の寒冷地域で作付けされている、「ミルキークイーン」(wx-mq保有)、「彩」(du()保有)、および「スノーパール」の低アミロース性母本に由来する育成系統と、「山形84号」(wx-y保有)、「探系2031」、対照としてうるち品種の「つがるロマン」(Wx-b保有)を供試した。人工気象室、ガラス温室および自然条件を組み合わせ、低、中、高温の3つの温度条件で登熟させた時の胚乳アミロース含有率を測定した。「つがるロマン」のアミロース含有率の変動幅は12-23%(高温区-低温区)であり、登熟気温変動1℃当たりのアミロース含有率の変動幅(ΔAM/℃)は0.8-1.1%であった。これに対し「ミルキークイーン」由来の系統、ならびに「山形84号」のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より小さかった。一方、「スノーパール」の母本で「ミルキークイーン」や「山形84号」とは異なるWx座の突然変異による「74wx2N-1」に由来する系統のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より大きく、ΔAM/℃は「つがるロマン」の1.4-1.9倍であった。「探系2031」のアミロース含有率は、「つがるロマン」と他の低アミロース系統の中間であり、ΔAM/℃は「つがるロマン」とほぼ等しかった。「ミルキークイーン」由来の系統あるいは「山形84号」と、「74wx2N-1」に由来する系統間に見られるアミロース含有率の温度による変動幅の差は、その保有する低アミロース性遺伝子の違いによる可能性が示唆された。
著者
佐藤 宏之 井辺 時雄 根本 博 赤間 芳洋 堀末 登 太田 久稔 平林 秀介 出田 収 安東 郁男 須藤 充 沼口 憲治 高舘 正男 平澤 秀雄 坂井 真 田村 和彦 青木 法明
出版者
農業技術研究機構作物研究所
巻号頁・発行日
no.9, pp.63-79, 2008 (Released:2010-07-07)

「ミルキープリンセス」は、縞葉枯病抵抗性を備えた栽培特性の優れる低アミロース米品種を育成することを目標に、「関東163号」を母、「鴻(こう)272」を父とする交雑組み合わせから育成された品種である(「鴻272」は、「コシヒカリ」の低アミロース性突然変異系統であり、「ミルキークイーン」の姉妹系統)。1997年から「関東194号」の地方系統名で、関係府県に配付して地域適応性を検討すると共に、品質・食味等の特性を調査した。2003年に「水稲農林387号」として登録され、「ミルキープリンセス」と命名された。この品種の特性は以下の通りである。1. 出穂期及び成熟期は「ミルキークイーン」より2日程度早く、育成地では“早生の晩”に属する粳種である。耐倒伏性は「ミルキークイーン」より強く“強”である。2. 収量性は、育成地における標肥栽培(N成分:6~8kg/a)では「ミルキークイーン」を10%程度下回るが、多肥栽培(N成分:10~14kg/a)では「ミルキークイーン」並である。3. 低アミロース性遺伝子Wx-mqを保有し、白米のアミロース含有率は約9%の低アミロース米品種である。炊飯米の粘りは「コシヒカリ」に優り、「ミルキークイーン」並である。食味総合評価値は、「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」並の“上中”である。4. 縞葉枯抵抗性遺伝子Stvb-iを保有し、同病害に対して“抵抗性”である。5. Wx-mq及びStvb-i遺伝子を併せ持つ低アミロース米品種は、現時点で本品種以外には育成されていないことから、2遺伝子のDNA鑑定法(佐藤ら(2002)、斎藤ら(1999))を併用することで、「ミルキープリンセス」は他の水稲品種との識別が可能である(2007年現在)。以上の特性から、「ミルキープリンセス」は縞葉枯病常発地や肥沃地向けの低アミロース米品種として、普及・活用が期待される。