著者
平瀬 肇 今野 歩
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、マウス大脳皮質のニューロピル(神経網=微小突起の集合体)からのCa2+イメージングを行った。NMF解析法では、アストロサイトと神経細胞の局所ニューロピルシグナルを上手く分離できないことを実感しつつある。そこで、今年度の後半にニューロンには赤色蛍光Ca2+センサーを発現できるAAVベクターを利用した。本課題の目標の一つである「tDCS によるニューロピルの信号変化とその物理メカニズムの検証」をするために、遺伝子改変動物を用いて、光遺伝学的にアストロサイト由来ニューロピルのみに内因性Ca2+上昇を惹起する実験を行った。その結果、麻酔下と無麻酔の状態では異なる神経細胞の活動形式が観測された。今後は実験数を増やし、無麻酔の状態で起こる神経活動の変化のメカニズムを追究する予定である。また、もう一つの目標である「経験依存的なニューロピル反変化とグリア活性による動物の行動様式の変化」に取り組むために、顕微鏡下における恐怖条件付け学習装置の導入を行った。具体的には頭部を固定した状態で、筋電位信号を指標として聴覚刺激によるフットショックの条件付けを行った。試行錯誤が多かったが、漸く二光子イメージングが出来る段階に近づきつつある。さらに、アストロサイトの内因性Ca2+上昇が抑制される2型IP3受容体欠損マウスを用いて海馬脳波を測ったところ、経験依存的にリップル波の振幅と発生頻度が下がることを見出した。アストロサイトのCa2+上昇の後に起こる変化の物質的な面に迫るため、マイクロ電磁波を利用したマウス脳の固定も準備しつつある。昨年度に報告した薬理的に興奮させた状態でのニューロピルのシグナルであるが、思いがけない現象を見出しつつある。これについても2018年度中に論文発表を目指したい。
著者
平瀬 肇 篠原 良章 眞鍋 理一郎
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

脳機能の左右差はヒトではよく知られているが、その分子的基盤は、ほとんど分かっていない。また、マウスを用いた左右差の分子基盤を探る実験でも、神経伝達物質受容体の定量等のボトム・アップ的アプローチによるものが殆どである。さらに、体軸を形成する遺伝子のスクリーニングは数多いが、それらはすべて動物の初期発生期に誘導される分子に限られており、成熟した個体に対する徹底した遺伝子の網羅的スクリーニング皆無であった。哺乳類左右脳の遺伝子発現の違いを解明するために、平成21年度に収集した成獣ラット海馬CA3領域サンプルを次世代DNAシークエンサーを利用して遺伝子解析を行った。まず、収集された左右の海馬CA3サンプルより、short RNAライブラリを調製した。ライブラリ調整には理化学研究所オミックス基盤領域(鶴見)で開発されたLNAを用いてアダプターダイマーを除去する最新式のプロトコルを採用した。その結果、1サンプルあたり、約1000万タグ、左右合計6サンプルのshort RNAのシークエンシングに成功した。シークエンスされたshort RNAの中、約9割がmiRBase15に登録されているmicro RNAであった。micmoRNAの発現で際立った左右差が認められるものは殆ど無かった。また残る1割においては、バイオインフォマティック的手法により新規microRNA解析を行ったところ十数種類の新規microRNA候補遺伝子が見付かった。新規microRNA候補遺伝子の中から発現(タグ数)が高い2つの遺伝子の発現をin situ hybridization法を用いて確認した。新規microRNA候補遺伝子でも左右発現差が顕著な物は皆無であった。