著者
大浜 和憲 下竹 孝志 石川 暢己 廣谷 太一 宮本 正俊 岡田 安弘 山崎 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.199-205, 2009
被引用文献数
1

【目的】漏斗胸は胸郭異常の中で最も多く,胸骨と下部肋軟骨が陥凹している状態である.2005年私たちは漏斗胸治療にVacuum Bellを用いた保存的治療(VB療法)を導入した.本稿では今までの治療経験を報告し,VB療法の有用性を検討する.【対象と方法】対象は漏斗胸11例,男性9例,女性2例で,年齢は6歳から29歳であった.11例中4例ではNuss手術が行われており,1例はバー感染のためバーが早期に抜去された症例で,3例はNuss手術後も前胸壁の陥凹を認めた症例であった.残る7例は未治療例であった.VB療法はベル型をしたVacuum Bellを患児の前胸壁陥凹部に押しあてて,持続的に大気圧より15%低い値まで陰圧をかけて陥凹部を持ち上げるものである.装着時間は朝夕30分ずつから開始して,副作用のないことを確認して,装着時間を徐々に延長する.【結果】経過観察期間は4か月から2年8か月(平均1年5か月)であった.治療前の胸骨陥凹は2mmから30mmで平均18mmであった.3か月後には0mmから20mm,平均10mm,そして経過中に0mmから20mm,平均9mmとなり,胸骨は有意に持ち上がった.副作用は1例で軽度の皮膚炎を認めただけで,重篤な副作用は認めなかった.【結論】漏斗胸11例に対してVB療法を行い,未だ観察期間は短いが,良好な結果を得た.適応を選べば有効な治療手段と考える.