著者
幸田 亮一
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.629-648, 2010-03-25 (Released:2017-05-24)

第二次大戦中に軍需生産を支え活況を呈したドイツの工作機械工業は,敗戦後,一転して危機の時代を迎えた。本稿の課題は,ドイツ工作機械工業が経験した困難の実態はいかなるもので,復興はいかにして可能だったのかを,旧西ドイツ地域を中心に,連合国の政策転換を踏まえつつ,個別企業の具体的動向を含めて解明することである。本稿の結論は以下のとおりである。第1に,戦災ならびに戦後のデモンタージュ(設備撤去)は,短期的には大きな損害を個別企業に及ぼしたものの,長期的に見ると過剰設備の除去と新市場の創出をもたらした。第2に,通貨改革と租税改革は直接的に,マーシャルプランは見返り資金という形で間接的に工作機械企業の復興を促した。第3に,立地の変化を見ると,ソ連占領地区から逃避・移転した企業により,西部ドイツ,西南部ドイツの比重が増大した。総じて,このような困難期を乗り越えることができたのは,東側から西側へ移転した複数のメーカーの事例が端的に示すように,長年にわたり築かれてきた知的・人的蓄積であったといえる。