著者
廣内 康彦 鈴木 詠子 光岡 ちほみ 金 海栄 北島 俊一 榎本 眞 久木野 憲司
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.33, pp.284, 2006

虚血による梗塞とは部位的に異なった遠隔非虚血部の黒質および視床に遅発性の障害が起こることをサルで確認できたので報告する。 5歳齢カニクイザル雄の5頭を用いて、麻酔下で内頸動脈分岐近位部のMCA本幹を縫合糸により永久閉塞し、6時間、1、2、4および8週後にMRI検索を実施、安楽死後に10%緩衝ホルマリン液で灌流固定した脳を摘出した。さらに定法に従い脳パラフィン標本を作製し、病理組織学的検索を行った。 その結果、MRI-T2強調画像上の高信号抽出像にそれぞれ一致し、梗塞側黒質と視床域にMCA閉塞1週後には浮腫を、また4週から8週後には、神経細胞の減少、軸索変性による硝子体の出現、反応性アストロサイトの増生および肥大の増強を観察した。梗巣を反映するMRI像は、その部位や浮腫および上記病変の程度と一致することから、遠隔非虚血部の障害の早期発見と病像の経時的変化を臨床的に追及できる可能性が示唆された。