著者
坪 敏仁 西村 雅之 橋場 英二 大川 浩文 石原 弘規 廣田 和美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.212-215, 2013 (Released:2013-11-19)
参考文献数
14

発熱は中枢神経障害に悪影響を与える。心停止後の中枢神経保護のため軽度低体温療法を施行し,施行後中枢性発熱を見た症例に黄連解毒湯を投与し,その体温に及ぼす作用を検討した。対象は7例で,低体温療法から復温後の発熱を認めた時点から,黄連解毒湯を胃チューブから計48回投与した。著効1例,有効5例,無効1例であった。体温低下は投与初期に著しく,最大低下体温は39.1 ± 0.7度から37.6 ± 0.7度と平均1.55 ± 0.7度であった(p <0.05)。しかし,すべての投与時の変化は37.7 ± 0.6度から37.5 ± 0.7度と平均0.35 ± 0.77度であり有意ではなかった。黄連解毒湯は軽度低体温療法後の中枢性発熱に対して,短期間の調節には試みてよい方法と思われた。
著者
丹羽 英智 木村 太 廣田 和美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.468-473, 2015-07-15 (Released:2015-09-18)
参考文献数
18

帝王切開術を全身麻酔で管理する場合,吸入麻酔薬と静脈麻酔薬のどちらが母児の管理上,利点を多く有するかは不明である.今回,われわれは,当教室の臨床データ(2002~2013年,N=635)を示しつつ最近の文献をもとにどちらが良い麻酔法かを考察する.妊娠子宮筋を用いた基礎研究の結果は,全身麻酔で用いられるほぼすべての薬剤が子宮筋の収縮を抑制することを示した.これは,児娩出までの間は生体に有利に働くが,児娩出後は,母体の出血量の増加につながる.しかしながら,術中の出血量は静脈麻酔薬と揮発性麻酔薬の間に差を認めなかった.一方,母体のPONV発生頻度が低い点では,TIVAにおける母体の満足度が高くなることが推察される.
著者
廣田 和美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.42-49, 2007 (Released:2007-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

弘前大学医学部附属病院では, 全身麻酔管理の80%以上にプロポフォールを主体にケタミンやフェンタニルを加えた全静脈麻酔法 (TIVA) を用いて施行している. TIVAにより, 地球温暖化やオゾン層破壊の原因となる亜酸化窒素や揮発性吸入麻酔薬の使用を減らすことができる. また, 現在までの研究報告をみると揮発性吸入麻酔薬が炎症促進作用を示すのに対し, 静脈麻酔薬プロポフォール, ケタミンは抗炎症効果を示す可能性が高い. また, プロポフォールにがん転移抑制効果があるのに対し, 揮発性吸入麻酔薬では転移を促進させるとする論文も発表されている. したがって, 環境に優しく侵襲防御に有利なプロポフォールを中心としたTIVAは, 今後さらに普及していくものと予測される.
著者
北山 眞任 廣田 和美 佐藤 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.967-973, 2010 (Released:2011-02-07)
参考文献数
22
被引用文献数
2

下腹部手術の術後鎮痛は,IV-PCAなどを用いたオピオイドが一般的であるが,体性痛への不十分な効果と過量による副作用が問題となる.一方,局所麻酔薬治療(神経ブロックなど)の併用により,オピオイド減量と術後鎮痛の質的改善が知られている.近年の超音波ガイド下局所麻酔法の普及は,TAPブロックなど腹壁神経ブロックの効果の確実性を高めた.当施設では開腹手術や腹腔鏡手術などに腹壁の末梢神経ブロックを積極的に使用し,鎮痛効果の改善と術中の筋弛緩を得ている.今後,腹壁ブロックの術後鎮痛と患者満足度を向上させる多面的鎮痛(multimodal analgesia)の一つとしての可能性を検討したい.