著者
後藤 寿夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

環形動物の細胞外ヘモグロビン(Hb)は分子質量が3.5MDaに及ぶ超分子であり、ヒトHbの約50倍、リポゾームの約2倍のサイズである。これまでに、構成要素として4種のグロビン鎖(a, A, b, B)と2種の非ヘム蛋白(リンカー、L1,L2)の存在し、12個のサブ構造体(S)がリンカーによって連結されていることが知られている。本研究では、サブユニット構成、リンカーの役割、リンカーとグロビン鎖の結合様式の3点に焦点を絞って調べた。主な結果は以下の通りである。1.アオゴカイHb等のサブ構造体の分子質量をESI-Tof-MSにより直接測定することに成功して、その構成が(3(a・A-b-B))であることを明らかにした(Green, B.N., Gotoh, T., et al., J.Mol.Biol.309,553,2001)。2.アオゴカイHbを蛋白質分解酵素で処理するとリンカー鎖が優先的に消化されることを見つけた。これを利用してサブ構造体を単離し、光散乱法により分子質量を計測した。サブ構造体がグロビン鎖の12量体(3(a・A-b-B))であるとの結論を得た(後藤寿夫ら、動物学会中国四国支部会・山口・2001.5.12,13)。3.アオゴカイHbのグロビン鎖のうち3種類((a, b, B)のアミノ酸配列を決定した。配列から求まる質量値はESI-Tof-MSで求めた値によく一致し、これらのグロビン鎖に糖鎖が含まれないことを示している。また、分子系統樹を描き、2系統あることを確認しするとともに、これら2系統(サブファミリー)は脊椎動物のヘモグロピンとミオグロビンが分岐した時期とほぼ同じ頃に分岐したことを明らかにした(本年度の動物学会中国四国支部会・高松で発表の予定)。4.リンカーは超分子構築の最終段階に効いていることを明らかにするとともに、リンカーの活性を検定することに初めて成功した(Gotoh et al.Arch.Biochem.Biophys.,360,75[1998])。なお、2と3については論文を準備中である。