- 著者
-
後藤 由和
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.11, pp.861-870, 2009-11-15 (Released:2010-02-06)
- 参考文献数
- 20
目的:自殺行為に関する研究では,主に3つの自殺企図手段分類方法が用いられている。すなわち,国際疾病分類第9版(以下International Classification of Diseases, Ninth Revision; ICD-9),飛鳥井分類(相対的危険群,絶対的危険群),そして侵襲度分類法(Non-violent群,Violent群)である。本研究は,これらの分類方法の違いが自殺企図手段と精神障害の関係に影響を与えるかを明らかにすることにある。対象と方法:救急搬送例のうち主要5精神障害(うつ病,双極性障害,統合失調症,適応障害,人格障害)と診断された169名を研究対象とした。3つの分類方法に準じた自殺企図手段と精神障害の関連について,対応分析法を用いて解析した。結果:ICD-9分類においては,E953(縊首,絞首,窒息)とうつ病およびE950(固体または液体による中毒)と適応障害は,それぞれ強い関連性があった。E957(高所墜落)は,統合失調症と弱い関係にあった。飛鳥井分類上の相対危険群は精神障害との関連性は弱かったが,絶対危険群は統合失調症と強い関係にあった。侵襲度分類においては,Non-violent群は双極性障害とViolent群は統合失調症とそれぞれ強い関係にあった。結語:自殺企図手段と精神障害の関係は手段分類法によりかなり異なっていた。