著者
小出 勝義 赤泊 圭太 吉岡 裕雄 後藤 由和 渥美 陽二郎 白野 美和
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.220-226, 2021-12-31 (Released:2022-01-28)
参考文献数
25

歯科訪問診療の患者背景は複雑であり,担当歯科医師はそのなかから義歯製作後に患者が使用可能か不可能かを客観的に判断することは難しい。そこで,新義歯装着の可否を判断する予測因子を探索することを目的として,2013年から2018年の5年間に当科での歯科訪問診療の要請があった初診患者において義歯製作を行い,その後継続して義歯の使用が可能であった患者を「義歯使用可能群」,義歯製作を行ったがその後義歯が使えず使用を中断した患者を「義歯使用不能群」に分類した。義歯使用可能群294名と義歯使用不能群25名における患者の口腔内状態,全身状態,治療依頼者などとの関連について調査した。 義歯使用不能群では,義歯使用可能群と比べ座位保持状態が不良な者の割合が多かった(オッズ比7.870,95%信頼区間=3.098~19.992,p<0.001)。また,義歯使用不能群では,パーキンソン病の既往を有する者(p=0.048),含嗽不能の者(p=0.012)の割合が多かった。座位保持は,義歯の装着に影響を及ぼす身体機能を判断するのに有効であり,義歯を必要とする高齢者の義歯使用可否にも大きく影響すると考えられる。 歯科訪問診療において座位保持の可否が義歯装着の可否を判断する一助となる可能性が示された。
著者
後藤 由和
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.861-870, 2009-11-15 (Released:2010-02-06)
参考文献数
20

目的:自殺行為に関する研究では,主に3つの自殺企図手段分類方法が用いられている。すなわち,国際疾病分類第9版(以下International Classification of Diseases, Ninth Revision; ICD-9),飛鳥井分類(相対的危険群,絶対的危険群),そして侵襲度分類法(Non-violent群,Violent群)である。本研究は,これらの分類方法の違いが自殺企図手段と精神障害の関係に影響を与えるかを明らかにすることにある。対象と方法:救急搬送例のうち主要5精神障害(うつ病,双極性障害,統合失調症,適応障害,人格障害)と診断された169名を研究対象とした。3つの分類方法に準じた自殺企図手段と精神障害の関連について,対応分析法を用いて解析した。結果:ICD-9分類においては,E953(縊首,絞首,窒息)とうつ病およびE950(固体または液体による中毒)と適応障害は,それぞれ強い関連性があった。E957(高所墜落)は,統合失調症と弱い関係にあった。飛鳥井分類上の相対危険群は精神障害との関連性は弱かったが,絶対危険群は統合失調症と強い関係にあった。侵襲度分類においては,Non-violent群は双極性障害とViolent群は統合失調症とそれぞれ強い関係にあった。結語:自殺企図手段と精神障害の関係は手段分類法によりかなり異なっていた。