著者
中村 聡 後藤 雄佐
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.324-329, 1996
被引用文献数
5

外観で容易に判断できる葉位齢(葉身が前の葉の葉鞘から抽出し終わった時点ごとに, 抽出を完了したばかりの葉の葉位で表す個体の齢)を用いて, スイートソルガムの茎基部(地表面付近)の第3節間から第10節間までの伸長を解析し, 非伸長節間(1cm未満)と伸長節間(1cm以上)との伸長様式を比較した. 晩生のシロップソルゴー2号(S2)と早生のハイシュガーソルゴー(HI)を, 第4葉から第14葉の各葉身がちょうど抽出完了するごとに20個体ずつサンプリングし, 節間位ごとの節間長を調査した. 第3節間から第6節間はすべて非伸長節間, 第9, 10節間はすべて伸長節間であったが, 第7, 8節間は, 非伸長節間と伸長節間が混在していた. タイムスケールに葉位齢を用いて, 非伸長節間と伸長節間の伸長様式を解析した結果, 次のようにまとめられた. 伸長節間(第n節間)は, 葉位齢n+2頃に急速に伸長し, 葉位齢n+3から葉位齢n+4にかけての時期にほぼ伸長が終わった. この伸長様式は, 前報での第10節間から第19節間までの伸長様式と同様であり, 品種の早晩によらず普遍的な伸長様式であると考えられた. 一方, 非伸長節間では, 両品種とも第n節間は葉位齢n+1から葉位齢n+2頃にかけて増大し, 葉位齢n+3頃に最終長に達する伸長様式を示した. 以上から, 非伸長節間の伸長様式も葉位齢によって把握することが可能となった. また, 非伸長節間の伸長と伸長節間の伸長とは質的に異なり, この違いは介在分裂組織の形成の有無によるものと推察された.
著者
後藤 雄佐 中村 聡 酒井 究 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.473-479, 1994-09-05
被引用文献数
2

スイートソルガムの生長の解析法を確立するために, 疎植区(100 cm×50 cm)と密植区(50 cm×20 cm)とを設け, 節間の伸長と肥大とを調べた. 供試品種は早生のSucrosorgo 301 (S 301)と晩生のSucrosorgo 405 (S405). 収穫物の中心となる茎は, 伸長した節間の集合体であり, 収穫物からその個体の生長を解析するためには, どの節間がいつ頃伸長・肥大したものかを推定できなくてはならない. すなわち, 外観から測定できる個体の齢と内部での節間の生長との関連性を把握する必要がある. そこで, 葉身が抽出完了した時点ごとに, その葉位で個体の齢を表し(葉位齢と呼んだ), 節間の伸長・肥大との関係を調べた. 葉位齢を用い第9節間〜第12節間の伸長過程を基に概念的な節間伸長の生長曲線を描いた. すなわち, 第n節間(IN n)は葉位齢n+1頃から急激な伸長を始め, 葉位齢n+2頃に最も急速に伸長し, 葉位齢n+3〜n+4頃に伸長が終わった. 節間伸長への栽植密度の影響は, 伸長の速度として認められた. 節間の太さについては, 同じ節間位で比較すると, 両品種とも疎植区のほうが密植区より常に太かった. 節間の肥大は, 一つの生長曲線にはまとめられなかった. 最も単純化した場合, 栽植密度によって異なる2つの生長曲線にまとめられた. INnは, 葉位齢nくらいまでは栽植密度の影響を受けずに肥大したが, 密植区は葉位齢n+1くらいから肥大速度が鈍り, 葉位齢n+2くらいで最大径となった. ところが疎植区は, 葉位齢n+5くらいまで肥大が続き, 最大径は密植区を上回った.
著者
星川 清親 中村 聡 後藤 雄佐 田中 正夫 壁谷 雄一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.610-615, 1994-12-05
被引用文献数
2

1991年にスイートソルガム14品種を用いて, 出穂期までの播種後日数(DAS-H)と収量及び収量に関与する諸形質との関係を調べた. さらにその中の8品種を1991年から3年間栽培し, 出穂期の年次変動, DAS-Hと収量との関係を解析した. 1991年の実験では, DAS-Hが多いほど, 茎乾物収量が多く, 品種間で直線的な関係が認められた. また, 収量に関与すると考えられる形質, つまり総葉数, 伸長節間数, 茎長, 茎直径についても同様な関係が認められた. 3年間の実験の結果, DAS-Hは, 品種によっては年ごとに大きく変動した. 例えばWrayの出穂期は, 1991年ではDAS-H88(8月31日, 1993年ではDAS-H125(10月5日)で, 播種後日数にして37日の差があった. これを出穂期までの積算温度(CAT-H)でみても同様で, 1991年と1993年とで585度日の差があった. また, 各品種をDAS-H順に並べると, その順位も年により変動し, 一部の品種では早生か晩生かを決定できないものもあった. すなわち, 1992年では中生品種と位置付けられるRio, Keller, Wrayは1991年では早生品種, 1993年では晩生品種に位置づけられる結果となった. 品種によって出穂期の年次変動が大きく, しかも収量及び収量関連形質の年次変動と異なるために, 3年間を通してみると, DAS-H (CAT-H)収量, または収量関連形質との相関は低かった. しかし, 年ごとのDAS-Hと収量または収量に関与する形質との間には, 高い正の相関が認められた.
著者
後藤 雄佐 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.496-504, 1988-09-05
被引用文献数
8

水稲の孤立個体における主茎と分げつとの生長の相互関係を葉齢に着目して調べた. 個体の齢を表す「葉齢」を分げつの齢を表すのにも用い, 各分げつの葉位を, 主茎の同伸葉の葉位で表したものを各分げつの相対葉位と規定し, さらに, 相対葉位で表した各分げつの葉齢を相対葉齢と規定した. これにより, 主茎と各分げつ間の生長の比較が可能となった. また, 同伸分げつを位置づける相対分げつ位(RTP)を規定し, これにより相対葉位を算出した. ポットに1個体植えした水稲品種ササニシキ, トヨニシキ, アキヒカリに肥料を充分に与え, 湛水状態で育て, すべての葉に印をつけて観察した. 初期に出現した分げつには, 主茎同様に出葉転換期が認められ, 生理的な変化が個体全体でほぼ同時期に起きたことが示唆された. 栄養生長期後半の観察では, 同一日には分げつ次位が高いほど, 相対葉位の高い葉が出現し, それに伴いRTPの高い嬢分げつが出現した. 各分げつの相対葉齢から主茎の葉齢を差し引いた差を相対葉齢差(D)と規定すると, Dは生長とともに直線的に増加し, 播種後94日目, 止葉の抽出直前に最大となった. また, Dは分げつ次位が高いほど大きく, 各時期におけるDは, ほぼ分げつ次位に比例して増大した. Dの値の大きさには, 品種間で差が認められた.