著者
德中 真由美 大槻 克文 大場 智洋 太田 創 千葉 博 岡井 崇
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.91-95, 2013 (Released:2014-06-23)
参考文献数
22

サイトカインの均衡がとれている正常の状態と比較して,炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの均衡が崩れ,炎症性サイトカインが増加することが早産を誘発する可能性があると考えた.通常血中炎症性サイトカインは早産間近でないと上昇しないが,抗炎症性サイトカインは妊娠早期から変化が認められる可能性がある.妊娠初期において抗炎症性サイトカインであるIL-10を測定し,妊娠早期の早産および切迫早産の発症予知につながるかどうかを調べる目的で本研究を実施した.2010年5月から2012年7月までの間に昭和大学病院で妊娠初期から妊婦健診を受けた患者のうち,本研究に対して書面により同意し,2012年7月までに出産した149人を対象とした.妊娠初期(妊娠7週~14週)に血液検体を採取し,血漿中IL-10を測定した.測定にはHigh Sensitivity Human ELISA Kit(abcam, Cambridge,United Kingdom)を用いた.IL-10の計測値と妊娠・分娩経過との関連を以下の比較により検討した.検討(1):早産群(妊娠22~36週分娩)と正期産群(37~41週分娩の正期産群)との比較.検討(2):切迫早産入院あり群(切迫早産治療の目的で入院し安静・点滴・手術での治療をした)と切迫早産入院なし群との比較.6症例の早産群と143症例の正期産群では,母体年齢や経産回数に差は認めなかった.両群間のIL-10値に有意差を認めなかった.17症例の切迫早産入院あり群と132症例の切迫早産入院なし群では,母体年齢に差は認めなかったが経産回数には有意差を認めた.切迫早産入院あり群では入院なし群と比較し,IL-10が有意に高値であった.妊娠初期母体血液中のIL-10値を測定することが,切迫早産の予知の指標となる可能性が示唆された.