著者
德安 由希 小泉 公乃
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.95-111, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
61

本研究の目的は,積極的に行政支援サービスに取り組む公共図書館がどのようにサービスを構築し,発展させてきたかを解明することである。愛知県の田原市図書館を対象に,資料調査と館長,副館長,図書館員,行政職員(サービス利用経験有)への半構造化インタビューによる事例分析を行った。結果,田原市図書館では,地域課題によって図書館員と行政職員の意識と行動が互いに変化し,両者の関係性の強化を契機に従来のサービスを転換する形で行政支援サービスを構築していた。構築後も図書館員の継続的な努力によってサービスは緩やかに進展し,図書館と行政部局の連携による新たな成果の創出にまで発展していることが明らかになった。さらに,図書館と行政職員の意識や行動をサービスが変化した時期と関連づけながら,サービスに与えた影響を整理し,サービスの構築過程を4 段階別に描いた上で,行政支援サービスに関連する図書館員の専門的知識を考察した。