著者
原田 隆史 高久 雅生 小野 永貴 杉岡 秀紀 真山 達志 逸村 裕 江草 由佳 岡部 晋典 小泉 公乃 山本 順一 安形 輝 桂 まに子 岸田 和明 佐藤 翔
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,「資料」「来館者」「非来館者」「知の拠点」「図書館制度・経営」という5つの観点を研究する5 つのグループを設定して,日本の公共図書館全体を対象とする大規模な質的・量的調査を実施する。これによって日本の公共図書館に関して,それぞれの機能・サービスの基準とし,規模や地域経済など,図書館の状況に応じたベースラインを明らかにする。本研究により日本の公共図書館すべてに適用可能な評価パッケージを開発可能にすることが可能になると考えられる。
著者
小泉 公乃
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.63, pp.41-59, 2010

原著論文【目的】本研究の目的は, 第一に, これまで定性的に述べられてきた大学図書館における図書館員と教員の選書が, 利用者の貸出や蔵書構築にどのような影響を与えているのかを定量的に明らかにすることである。第二は, 蔵書の状況や利用者の貸出の状況を定量的に分析することで, 図書館員と教員の選書の特徴を明らかにすることである。第三は, 複数の蔵書評価法を選書研究に適用することで, その有効性を探ることである。【方法】定量的な蔵書評価法である利用統計分析法とチェックリスト法を採用し, 慶應義塾大学三田メディアセンターの経済学分野の図書を対象に, 図書館員と教員の選書を比較した。利用統計分析法では, 1)蔵書受入冊数, 2)蔵書回転率, 3)非貸出図書の所蔵率, 4)年5回以上貸出のある図書の割合, 5)利用者別の貸出率, 6)利用者別の蔵書回転率, 7)オブソレッセンスという七つの観点から分析を行なった。また, チェックリスト法では, 1)他大学図書館の目録, 2)経済学分野で書評された図書, 3)『選定図書総目録』, 4)修士・博士論文の引用文献という四つの観点からチェックリストを作成し, 分析を行なった。【結果】図書館員と教員の選書には, 明らかな特徴の違いがあった。利用統計分析法から, 図書館員は和図書を多く選書し, 教員は図書館員に比べると洋図書を多く選書していた。図書館員が選書した和図書は多く貸し出され, 教員が選書した図書はその多くが貸し出されていなかった。図書館員が選書した図書は, 利用者の種類を問わず, 繰り返し貸し出されていた。また, 図書館員が選書した図書は, 長期にわたり貸し出される傾向にあった。チェックリスト法からは, 図書館員の選書は教員に比べて, チェックリストとの重複率が格段に高いことがわかった。複数の蔵書評価法を適用することで, 選書者の特徴を実証的に提示できたことから, 蔵書評価法は選書研究に有効な手法であることが明らかになった。
著者
百鳥 直樹 小泉 公乃
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.24-41, 2024 (Released:2024-02-29)
参考文献数
73

本研究の目的は,2000 年代前半の国立大学改革によって変化した国立大学図書館組織を類型化したうえで,その特徴を解明することである。現在の国立大学図書館組織を8 つに類型化し特徴を明らかにした。組織分類の特徴から,1)法人化前の組織形態を継続する組織,2)学内の他部門と統合した組織,3)図書館以外の業務も担当する組織と,組織が多様化していることを確認した。また,法人化前後の比較や学部数による大学規模の分析から, 大規模な国立大学(8 学部以上)が法人化前の組織体制を継続しているのに対し,中小規模の大学(7 学部以下)では他部門組織との統合,統合に伴う管理職数の削減,図書館管理職の職位の格下げが行われていることが明らかになった。そして,これら組織再編の多くが,大学全体の業務の合理化・集約化を目的に行われた。
著者
德安 由希 小泉 公乃
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.95-111, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
61

本研究の目的は,積極的に行政支援サービスに取り組む公共図書館がどのようにサービスを構築し,発展させてきたかを解明することである。愛知県の田原市図書館を対象に,資料調査と館長,副館長,図書館員,行政職員(サービス利用経験有)への半構造化インタビューによる事例分析を行った。結果,田原市図書館では,地域課題によって図書館員と行政職員の意識と行動が互いに変化し,両者の関係性の強化を契機に従来のサービスを転換する形で行政支援サービスを構築していた。構築後も図書館員の継続的な努力によってサービスは緩やかに進展し,図書館と行政部局の連携による新たな成果の創出にまで発展していることが明らかになった。さらに,図書館と行政職員の意識や行動をサービスが変化した時期と関連づけながら,サービスに与えた影響を整理し,サービスの構築過程を4 段階別に描いた上で,行政支援サービスに関連する図書館員の専門的知識を考察した。
著者
小泉 公乃 吉田 右子 池内 淳 松林 麻実子 和気 尚美 河本 毬馨
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

21世紀社会における中心的課題は,産業構造の変化や不安定化する国際政治によって生じた社会分断を克服することであり,地域コミュニティの中心にある図書館は社会分断克服空間への変化を求められている。本研究では,①包括的文献レビュー,②北欧北米と日本における図書館の政策分析,③北欧北米と日本の先進的な図書館を対象とした詳細な事例分析,④先進的な図書館の立地する地域を対象としたエスノグラフィ,⑤新しく創造された社会分断克服空間を対象とした図書館評価法の開発という5つの研究を通して,伝統的な図書館から21世紀の次世代図書館への<革新メカニズム>を解明したうえで,<新しい図書館評価法>を開発する。
著者
國本 千裕 宮田 洋輔 小泉 公乃 金城 裕奈 上田 修一
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.199-212, 2009

本研究は読書の行為に焦点を当て「読書とはいかなる行為であるのか」を明らかにすることを目的としている。既存の読書研究は,読書の対象や,児童や生徒に対する読書指導といった側面に焦点を当てるものが多かった。これに対して本研究は,個人の行う読書は様々な次元からなる行為であると考え,成人を対象として読書の次元を明らかにしようと試みた。20代から40代の計29名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを5回実施し,発言を分析した結果,読書とは,対象(何を読むのか)に加えて,志向(なぜ・何のために読むのか),行動(どのように読むのか),作用(読んだ結果何を得るのか),場所(どこで読むのか)の五つの次元から成る行為であることが明らかになった。特に対象は,物理的媒体,ジャンル,内容評価といった観点からみられる可能性が示唆された。
著者
杉内 真理恵 羽生 笑子 上田 修一 倉田 敬子 宮田 洋輔 小泉 公乃
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.127-151, 2011

【目的】本論文の目的は, 学術論文の著者, 主題, 研究方法, 理論の使用を分析することにより, 1970年から2009年までの日本の図書館情報学の研究状況を明らかにすることである。【方法】対象とした雑誌は, 査読制度を採用しているLibrary and Information Scienceと『日本図書館情報学会誌』 (『図書館学会年報』) である。1970年から2009年の間の掲載論文のうち, 投稿論文826篇を調査対象とした。各論文に対して, ①著者, ②主題, ③研究方法, ④理論の使用の分析を行った。著者に関しては, 論文ごとの著者数, 第一著者の所属機関, 職業を集計した。主題は14に区分し, さらに図書館学と情報学にまとめた。研究方法は, 最初に6アプローチに分類した後, 実証的研究のみデータ集計方法とデータ分析方法を調査した。また, 年別の論文数やページ数の推移を集計した。【結果】日本の図書館情報学論文ではこの40年間に, (1)大学院生を含め大学に所属する著者の増加, (2)情報学は一時多かったが, 次第に減少傾向にあり, 図書館学が再び中心となっている, (3)実証的方法を採用する論文が増加している, などの傾向があった。しかし, 主題について大きな変化はなかった。全体の論文数は, 1990年代から2000年代後半にかけて低下したが, 現在は, 増加傾向にある。前者の原因は, 両誌の厳格な査読制度の採用にあり, 後者の原因は, 大学院生の増加や研究助成制度の充実にあると考えられる。原著論文
著者
グッド長橋 広行 グッド 和代 小泉 公乃
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.318-325, 2014-08-01

本稿の目的は,米国の大学・公共図書館におけるファンドレイジング活動を明らかにすることである。まず卓越した大学図書館と公共図書館におけるファンドレイジング活動の概要を,グッド広行・和代が複数の事例をもとに記述した。次に図書館長らのインタビューをもとに,ピッツバーグ・カーネギー図書館の業務プロセスを小泉公乃が明らかにした。これらのことから,米国の図書館におけるファンドレイジング活動は,1)成功を収めたファンドレイジングの手法が多岐に渡り,2)担当は主に専門家と図書館員から構成され,3)資金は主として新しい試みに投資される傾向にあり,4)経営戦略と不可分なものであることがわかった。
著者
小泉 公乃
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.294-299, 2011-08-01

本稿の目的は,1)経営戦略という概念,2)営利企業を対象とした経営戦略論と図書館経営,3)図書館固有の経営特性という観点から,図書館経営における経営戦略論とは何かについて論じることにある。まず始めに,経営戦略は経営の各領域を統合する概念であることを述べる。次に,1)営利企業を対象とした経営戦略論の中でも,複雑あるいは急進的に組織を変える理論を図書館に適用すると問題が生じやすいこと,また,2)特に図書館はマーケティングの領域が不得意であるが,一方で,3)組織に漸進的な変化を求める経営戦略論は比較的成果を上げていることを説明する。そして最後に,図書館固有の経営特性を経営の各領域に触れつつ経営戦略の観点から論じる。