著者
恒川 元行
出版者
九州大学
雑誌
言語文化論究 (ISSN:13410032)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.157-166, 2008

ドイツは、「奇跡的」と形容される戦後の経済復興を支えるため、1960年前後から外国人労働者を積極的に受け入れてきた。その後、家族の呼び寄せなどにより定住化が進み、現在は2世、3世としてドイツに生活する外国人児童生徒のドイツ語能力や、ドイツ人児童生徒との共生が学校教育の重大なテーマとなっている。移民背景を持つ子どもたちにとって、健全な市民としてドイツ社会で生活するためには、能力に応じた学校教育が必要であり、そのためには家庭言語(母語)に次ぐ第2言語であり、学校言語でもあるドイツ語の一定能力が不可欠である。このため、ドイツでは、子どもたちのドイツ語能力を、すでに就学以前、幼稚園の時期から観察・記録し、着実に育成するための理念・方針が定められ、さまざまな施策が各州単位でもまた連邦レベルでも議論され、実践されている。 本講座では、ドイツでのこのような状況や施策を紹介したい。それは、結局、現在の日本の状況を考えることにもなる。なぜなら、人口減少を背景に今後ますます外来労働力に頼らざるを得ない日本が、数十年遅れてドイツと同じ道を歩んでおり、外国籍児童に就学義務がないこととも相まって、彼らの日本語能力や母語能力養成の問題が顕在化しつつあるからである。
著者
恒川 元行
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は、以下の4 点である : (1)ドイツ語辞書記述(独和、和独)の土台となる語彙データ入手手順の確立および語彙調査支援ソフトの開発、(2)5つのテキストを対象にした語彙調査の実施、(3)独自の語彙調査結果を検証・補足する目的での大規模ドイツ語コーパス(ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミーのDWDS コーパス等)の利用法調査、(4)平成21年度科研費基盤研究(C)「ドイツ語テキスト及び文における語彙出現予測分析とその和独辞典・教材への応用」(研究代表者:三重大学人文学部・井口靖教授)への展開。
著者
井口 靖 恒川 元行 成田 克史 黒田 廉
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

文を理解するために聞き手は出現する語彙の予測を行っていると想定する。そのひとつはある語からそれ以降の語を予測する場合で,これについてはコーパスを用いてさまざまなコロケーションを調査した。もうひとつは語彙の出現そのものの予測で,それはテキストの種類,分野などから予測できるのではないかと仮定した。そこで,分野別コーパスを構築し,その語彙頻度を大規模コーパスと比較することによりいくつかの実例を提示した。これらの結果を独和,和独辞典や教材に反映することを試みた。