著者
金 成主 成瀬 誠 青野 真士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.6, pp.261-268, 2017-06-01

我々は先行研究において,意思決定問題を物理的に解く新しい計算原理である「綱引き原理」を提案した.本研究では,無線通信におけるチャネル割当ての全体最適解の計算を,「ユーザ内意思決定」と「ユーザ間相互作用」を表現する綱引き原理の導入により物理的に実現できることを示す.そこでは,複数のシリンダ内の二種類の流体のダイナミックスが利用される.この「全体最適意思決定装置」を使うことにより,膨大な計算コストが要求される評価値の計算を流体の物理プロセスに委ねることができ,高々ユーザ数に比例したコストを要する操作(シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで,全体最適解を得ることができる.これは,自然現象の揺らぎ,保存則,アナログ性から,知的能力を引き出す新しい試みである.