著者
北台 紀夫 青野 真士 大野 克嗣
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.155-176, 2016-09-25 (Released:2016-09-25)
参考文献数
156

The origin of life must be studied through addressing a problem of the emergence of a free-energetically open complex system, rather than a problem of abiotic syntheses of various building blocks of life (Aono et al., 2015). One of the key aspects of the origin question is the origin of metabolism, since no (genetic) information may be preserved without ample and ordered materials supply. Thus, from the perspective of the origin of ‘proto-metabolism' we critically review currently prevailing approaches to the origin problem. Then, referring to the latest biological and geochemical findings, we will describe a scenario of the electrochemically driven emergence of ‘proto-metabolism' together with experimental proposals.
著者
青野 真士 大古田 香織
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.580-584, 2020-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
46

本稿では,単細胞アメーバ生物・粘菌が環境に適応し最適な形状に変形する振る舞いに学び,「巡回セールスマン問題」や「充足可能性問題」といった組合せ最適化問題の解を,アナログ/ディジタル電子回路を用いて探索するユニークな計算システムを紹介する.「アメーバ型アルゴリズム」を実装するこれらの組合せ最適化マシンは,回路を流れる電流ダイナミクスの並行性や,デバイスの揺らぎからもたらされる確率的動作を活用し,そこそこ質の高い合法解を素早く確実に得る手段を提供する.その計算原理はさまざまな物理デバイスにより実装できるため,さらなる大規模化と小型・低消費電力化が可能であり,クラウドサービスのみならず,新たなIoTやエッジ計算応用への展開を期待できる.
著者
金 成主 青野 真士 原 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.83, pp.19-24, 2010-06-11
被引用文献数
1

単細胞アメーバ・真性粘菌Physarumの光刺激回避行動に着想を得た「綱引きモデル」という並列探索アルゴリズムを提案する。このモデルでは、アメーバの複数の分枝が、環境情報を収集する探索エージェントとして機能する。アメーバは、その総リソース量(総体積)を保存しつつ、複数の分枝を伸縮させることで光刺激を受容し、どの分枝を伸長させるかを決定する。このとき、保存則を介して生じる分枝間の「非局所的な相関」が、「多本腕バンディット問題」における"exploration-exploitation dilemma"と呼ばれるトレードオフ状況の効率的解決に寄与することを示す。また、他の分枝から伝わる光刺激情報がパフォーマンスに及ぼす影響についても報告する。
著者
黒川 顕 戎崎 俊一 丸山 茂徳 原 正彦 クリーヴス ヘンダーソン 鎌形 洋一 磯崎 行雄 青野 真士
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

H29年度は立案した計画に基づき、以下の活動を実施した。1. キックオフWSの開催:H29年度から14課題からなる第二期の公募班が新たに領域に加わった。計画班と公募班との連携を強めるために、キックオフWSを開催した。2. 中規模WSの開催:領域全体での合同班会議を白馬八方文化会館にて開催した。3. Origin of Life 国際シンポジウムの開催:新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏」と合同で、化学進化および初期生命体に関する国際シンポジウムを開催した。4. 総括班会議を年6回開催した。会議後には計画班横断WSを開催し計画班間の連携を強めた。5. 地球生命アーカイブの開発:微生物統合データベースの開発ならびに東工大地球史資料館のデータベースの整理作業を継続した。また、領域の最先端研究内容をわかりやすく発信するために製作している映像ライブラリ「全地球史アトラス映像」をインターネットで配信できるよう、YouTubeチャンネルを開設した。さらに、「全地球史アトラス映像vol.3」を完成させた。6. 地域活性化イベント:中規模WSと同時に長野県白馬村役場にて教育講演会「白馬とカガクの奇跡episode2」を長野県教育委員会および白馬村の後援を受け開催し、最新の研究成果および白馬と生命起源との関係性に関する講演を行った。また、白馬高校(2017年10月19日)および大町岳陽高校(2017年12月21日)に出張講義を行った。また、大町岳陽高校では、理数科の生徒の課題研究に協力し、3つの班の課題を引き受け、共同研究を実施した。3班のうち1班の研究は、日本ゲノム微生物学会第12回年会にてポスター発表をした。
著者
金 成主 成瀬 誠 青野 真士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.6, pp.261-268, 2017-06-01

我々は先行研究において,意思決定問題を物理的に解く新しい計算原理である「綱引き原理」を提案した.本研究では,無線通信におけるチャネル割当ての全体最適解の計算を,「ユーザ内意思決定」と「ユーザ間相互作用」を表現する綱引き原理の導入により物理的に実現できることを示す.そこでは,複数のシリンダ内の二種類の流体のダイナミックスが利用される.この「全体最適意思決定装置」を使うことにより,膨大な計算コストが要求される評価値の計算を流体の物理プロセスに委ねることができ,高々ユーザ数に比例したコストを要する操作(シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで,全体最適解を得ることができる.これは,自然現象の揺らぎ,保存則,アナログ性から,知的能力を引き出す新しい試みである.