著者
孫 明 高橋 照夫 戸次 英二
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.53-60, 1997-07-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

本研究は, リンゴ収穫のロボット化を実現するために必要な果実検出の視覚システムを開発しようとするものである。本報では, 2値画像で果実の描画率が80%以上得られることを目標に, 色信号を用いた画像処理法を検討した。果実, 葉, 枝等の色信号濃度ヒストグラムの解析から求めたしきい値で, 収穫時のカラーTV画像に2値化処理を施した。その結果, 赤色系果実に対して色差信号G-Yのしきい値-5を用いると, 順光状態では目標の描画率80%を得られたが, 逆光状態では果実の輝度が低下して目標に達しなかった。黄緑色系果実に対しては, 2原色の差信号R-Bでしきい値30を用いると, 果実の輝度が110以上において描画率80%以上を得られた。ただし, 逆光では目標に達せず, また太陽光の葉面反射で果実と葉との識別を誤ることがあった。
著者
戸次 英二
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

生籾の減圧乾燥における乾燥速度と胴割れ発生率との関係を明らかにするため、透明な真空容器内に生籾を脱ぷした玄米を入れ、それをガラス窓付き恒温・恒湿器内に収め、外部から玄米粒表面の状態変化を観察できるようにした。実験は圧力と温度と相対湿度の三つのパラメータを適宜組み合わせて行った。この結果を籾に関連づけるため、生籾を供試した実験も部分的に併行させた。1.設定絶対圧力5,40,75,101kPa(常圧)(ゲージ圧:-96,-61,-26,0kPa)のうち、5kPaで乾燥速度は著しく高まった。2.真空容器を加熱して内部温度を25,35,45℃に高めると、35℃までは効果は低いが、45℃では著しく高まった。減圧には加温併用が必要である。3.真空容器内の相対湿度はエア.リーク時(真空ポンプoff)に低湿の周囲空気が侵入して降下し、周囲湿度が低いほど乾燥速度を多少ではあるが高めた。減圧度が大きいほど効果があった。4.全胴割れ率は乾燥速度が高まると上昇した。玄米では特有の表面割れが多く現われたが、内部胴割れ率は軽で低かった。籾では逆に表面割れが少なく、内部胴割れ率が高くなった。5.玄米は表皮が薄い膜であるから機械的な摩擦や空気圧変化で損傷し易く、また遠心式籾摺機で脱ぷすると肉眼で観察できない微細な傷が薄い皮膜につき、それを減圧乾燥すると発達して肉眼で見えるようになった。減圧解除時の時間は表面割れに関連しなかった。玄米の減圧乾燥は表面割れを防げないから無理であり、籾の状態では可能である。6.乾燥速度と胴割れに関する品種間差異は、常圧下の熱風乾燥と同様に認められた。玄米で長粒種は中粒種に比べ内部胴割れは少ないが、表面割れは多かった。結局、この生籾の減圧乾燥では、圧力を5kPa程度まで下げ、温度を35〜40℃、真空容器周辺の相対湿度を低い状熊にすると、乾燥速度及び多少の表面割れを含めた全胴割れ率は常圧下の熱風乾燥なみとなる。