著者
戸田 勉
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.A69-A83, 2010

本稿では、「無冠の帝王」と呼ばれた19世紀アイルランドの政治家で、自治運動の指導者であったチャールズ・スチュアート・パーネルの死が、アイルランドを代表する二人の作家ジェイムズ・ジョイスとW・B・イェイツにどのような影響を及ぼしたかについて、ゴシック的な観点を軸にして考察した。 ジョイスは、「パーネルの亡霊」というエッセイを発表し、パーネルを裏切ったアイルランド人を激しく糾弾したが、その後彼の作品からはパーネル主義が徐々に影を潜め始める。この変化は、アイルランドにおけるかつての共同体の崩壊をジョイスが認識したことと深く関わる。その認識から、ジョイスはパーネルを脱神格化・世俗化させる方向に向かった。 一方、イェイツは、貴族主義の模範としてパーネルを崇拝し、彼の死に気高い犠牲の精神を見た。イェイツは、パーネルの亡霊や葬儀を歌い、彼の不在を嘆き続けるが、最後には、祝祭的な詩によってパーネルを賛美する。ジョイスと同じように、共同体の崩壊を感じ取ったイェイツではあるが、彼はそこから失われたものの再構築に向かう。そのため、イェイツはパーネルの死を儀式化し、神話化する必要があった、と結論付けた。
著者
戸田 勉
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-57, 1992-12-10

本稿は、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』第二挿話「セイレーン」における技法「カノン形式のフーガ」の一側面を考察したものである。これまでこの技法に関して繰り広げられてきたさまざまな議論を踏まえつつ、フーガ形式の模倣反復という特質を「逃走」と「追跡」という動きに還元し、その観点から挿話全体の構成を分析した。一では、人物の外面的な動きを中心に考察し、ブルームにとってセイレーンとは誰(何)かについて探った。二ではーブルームの内面的な動きを追い、セイレーンの本当の姿について検討を加えた。三では、「丸刈り組」という曲とフルームの関係から、別な種類のセイレーンの正体を突きとめ、この挿話のもう一つの主題について考えた。
著者
戸田 勉
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-57, 1992-12-10 (Released:2020-07-20)

本稿は、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』第二挿話「セイレーン」における技法「カノン形式のフーガ」の一側面を考察したものである。これまでこの技法に関して繰り広げられてきたさまざまな議論を踏まえつつ、フーガ形式の模倣反復という特質を「逃走」と「追跡」という動きに還元し、その観点から挿話全体の構成を分析した。一では、人物の外面的な動きを中心に考察し、ブルームにとってセイレーンとは誰(何)かについて探った。二ではーブルームの内面的な動きを追い、セイレーンの本当の姿について検討を加えた。三では、「丸刈り組」という曲とフルームの関係から、別な種類のセイレーンの正体を突きとめ、この挿話のもう一つの主題について考えた。