著者
扇谷 明
出版者
JAPAN EPILEPSY SOCIETY
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-116, 2001

John Hughlings Jackson (1835-1911)による現代てんかん学への貢献は測り知れないものがあり、最近になってもJacksonの再評価が行われている。ここではJacksonの現代てんかん学への貢献を次の3つのテーマに分けてみる。1) Jacksonは後にJackson発作と名付けられたてんかん発作の研究から始め、その研究を通してJacksonは今日のてんかんの定義とほぼ変わらない革新的な定義づけを行った。またその発作の研究から脳外科治療の端緒が開かれる。2) 発作後精神病の機序を進化-解体および陽性-陰性症状という後にジャクソニズムと呼ばれる理論で解明していく。3) Jacksonの患者であり、医師である症例Zとの出会いなどを通してdreamy stateの概念を確立し、さらに側頭葉てんかんの概念を確立してゆく。
著者
扇谷 明
出版者
医学書院
雑誌
神経研究の進歩 (ISSN:00018724)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.648-657, 1997-08-10

側頭葉てんかんでは,発作症状として情動発作があり,発作間欠期にはしばしば情動変化がみられる。情動発作としてよくみられるものに,発作性恐怖,発作性うつがあり,稀なものとして発作性快(性的オルガスムを含む),笑い発作がある。またよくみられるdreamy stateは,本質的には親密感familialityの変容としてとらえられるため,情動発作といえる。これらの脳における座として,扁桃体がもっとも関与していることがわかり始めた。それは最近,盛んに行われるようになった側頭葉切除術の結果である。この側頭葉てんかんにおける情動変化のメカニズムとして,LeDouxが新たに証明した視床―扁桃体の直接経路を援用すれば,理解されやすい。しかし,情動が認知・行動レベルに及ぼす変化を考慮する場合,他の大脳の領野,とりわけ前頭前野,海馬などのネット・ワークが必要となる。