著者
押川 千恵 岸川 禮子 下田 照文 岩永 知秋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.132-137, 2017-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
22

タマネギを摂取することにより耳下腺の腫脹を繰り返し、アナフィラキシー症状を呈したアレルギー性耳下腺炎を経験した。症例は 57 歳、男性で、カレーライス(卵、牛肉、ニンジン、タマネギ入り)を摂取後に両耳下腺の腫脹とともにかゆみ、呼吸困難を伴うアナフィラキシー症状を起こした。ステノン管からの唾液は漿液性で混濁は認めず、唾液中に多数の好酸球が認められ、CT、エコー検査にて耳下腺内の導管拡張所見がみられた。アレルギーが関与する反復性耳下腺炎としては、ステノン管から粘稠な線維素塊の排液を認める線維素性唾液管炎が知られているが、本症例では線維素塊の排液は認められず、アレルギー性耳下腺炎の診断とした。抗原特異的 IgE 検査ではヤケヒョウヒダニ、スギ、タマネギが陽性で、タマネギ経口負荷検査にて耳下腺の腫脹が誘発されたことより、タマネギが原因抗原と同定した。タマネギの摂取を回避し、抗アレルギー剤を適宜使用することで良好なコントロールが得られている。これまで食事と関連するアレルギー性耳下腺炎や線維素性唾液管炎の報告はあるが、原因抗原を同定できることは非常にまれである。頻度は少ないが、反復する耳下腺腫脹を認める場合は、本疾患を念頭に置いておく必要がある。