著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.
著者
下田 照文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3067-3075, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
11

喘息発作の重症度を的確に判断して治療を開始する.最初に短時間作用性β2-刺激薬を反復吸入させる.発作の初期に全身性ステロイド薬の投与は症状の速やかな回復を促進するのに役立つ.アミノフィリンの点滴静注の併用は追加効果を期待できず副作用の危険性が増加するので推奨できない.患者が低酸素であれば酸素を投与する.治療効果のモニターとして,主観的な症状だけではなく,客観的な指標である呼吸機能(ピークフローや一秒量),酸素飽和度,動脈血ガスの測定を考慮する.
著者
押川 千恵 岸川 禮子 下田 照文 岩永 知秋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.132-137, 2017-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
22

タマネギを摂取することにより耳下腺の腫脹を繰り返し、アナフィラキシー症状を呈したアレルギー性耳下腺炎を経験した。症例は 57 歳、男性で、カレーライス(卵、牛肉、ニンジン、タマネギ入り)を摂取後に両耳下腺の腫脹とともにかゆみ、呼吸困難を伴うアナフィラキシー症状を起こした。ステノン管からの唾液は漿液性で混濁は認めず、唾液中に多数の好酸球が認められ、CT、エコー検査にて耳下腺内の導管拡張所見がみられた。アレルギーが関与する反復性耳下腺炎としては、ステノン管から粘稠な線維素塊の排液を認める線維素性唾液管炎が知られているが、本症例では線維素塊の排液は認められず、アレルギー性耳下腺炎の診断とした。抗原特異的 IgE 検査ではヤケヒョウヒダニ、スギ、タマネギが陽性で、タマネギ経口負荷検査にて耳下腺の腫脹が誘発されたことより、タマネギが原因抗原と同定した。タマネギの摂取を回避し、抗アレルギー剤を適宜使用することで良好なコントロールが得られている。これまで食事と関連するアレルギー性耳下腺炎や線維素性唾液管炎の報告はあるが、原因抗原を同定できることは非常にまれである。頻度は少ないが、反復する耳下腺腫脹を認める場合は、本疾患を念頭に置いておく必要がある。