著者
岸川 禮子 長野 準 勝田 満江 宗 信夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.355-363, 1988
被引用文献数
18

福岡市において1972年より現在までDurhamの標準花粉検索器を用いて空中花粉調査を行っている.スギ・ヒノキ科の飛散花粉が最も多く, スギはおおよそ2月-3月, ヒノキ科は3月-4月に飛散している.花粉飛散量と飛散開始時期が毎年著しく変化する.気象条件との関係を検討した結果, 飛散量は前年度7月の月平均気温(r=0.878, p<0.001), 飛散開始日はその年度1月の月平均気温(r=-0.765, p<0.001)と最も高い相関を示した.一方, スギ・ヒノキ科花粉によるスギ花粉症新患者数(九大耳鼻科外来)とスギ・ヒノキ科花粉飛散量の年次変動はほぼ平行している(r=0.906, p<0.01).スギ・ヒノキ科花粉を一括した飛散花粉の予報はある程度可能で, 臨床家や患者にとって重要な情報となると考えられる.
著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.
著者
岸川 禮子 宗 信夫 井上 定三 上村 正行 家守 千鶴子 河田 賢治 栗田 建一 城崎 拓郎 竹田 和夫 野上 兼一郎 三橋 勝彦 宿久 修 山田 篤伸 奥村 康 西間 三馨 石川 哮
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.127-136, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24

通常の薬物治療を行っているスギ花粉症患者を対象に,カテキンより強力な抗アレルギー性を有すると報告されているメチル化カテキン含有品種べにふうき茶の飲用効果を,やぶきた茶飲用群と花粉飛散時期に比較検討した. 福岡県内 12 施設の耳鼻咽喉科医院を受診したスギ花粉症患者 486 例に,単盲検法に準じてべにふうき茶飲用群(A 群)とやぶきた茶飲用群(B 群)に分けて 2005 年 2 月 1 日から毎日,スギ,ヒノキ科花粉飛散終了まで飲用させた.症状の重症度,薬剤使用量および QOL 障害度をスコア化して 2 群間内で比較した. A 群と B 群との間で眼・鼻症状の日毎推移・QOL 障害度に差はなかった.しかし,スギ花粉飛散時期において合計薬剤スコアが A 群において低く,とくに飛散ピーク時期以降 A 群が B 群より低く推移する傾向が得られた (p < 0.1). 花粉飛散時期に通常量のべにふうき茶を飲用することで,スギ花粉症増悪時に薬剤使用量が対照茶より少なく経過する傾向が得られたことから,補完的治療対策の 1 つの選択肢となる可能性が示唆された.
著者
市瀬 孝道 玉利 真由美 嵐谷 奎一 吉田 安宏 野口 恵美子 岸川 禮子 吉田 誠 西川 雅高 吉田 成一 定金 香里 藤枝 重治
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、黄砂がスギ花粉症、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の病態を炎症性メディエータの発現を伴って増悪させることを動物実験で実証した。また黄砂が炎症誘導にあずかる転写因や遺伝子群の発現を変化させることを明らかにした。黄砂の継続的な曝露では、黄砂は一旦アレルギー気道炎症を悪化させるが、 曝露の長期化につれて TGF-β 誘導による免疫寛容が起こり、アレルギー気道炎症が減弱化することが分かった。調査研究では、黄砂飛来時に花粉症を持った人、あるいは持たない人の眼、鼻、咽頭等に影響が見られた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では黄砂日と呼吸機能や症状の変化との間に関連性が見られなかった。黄砂日における来院患者には鼻炎や花粉症患者が多く、続いて気管支喘息患者で、主訴は咳が最も多く半数を超えていた。以上の結果から、 黄砂はアレルギー疾患を増悪する環境要因であることが判明した。
著者
鶴谷 秀人 佐伯 敬 岸川 禮子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-94, 1993-04-20 (Released:2020-09-01)
参考文献数
4

慢性呼吸不全患者の管理を行っていくうえで,循環動態の管理や合併した循環器疾患の治療は重要であり,ときに難渋することがある.そこで実際に遭遇する頻度の高い病態として,呼吸不全とは別個に合併する虚血性心疾患,左心不全,および呼吸器疾患ゆえみられる右心不全,不整脈についてそれぞれの診断と対応について述べた.いずれの病態においても治療の原則は,現存する呼吸不全状態を可能な限り改善維持することが必要と考えられる.
著者
岩永 知秋 横田 欣児 岸川 禮子 池田 東吾 鶴谷 秀人 広瀬 隆士 西間 三馨
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.9-13, 1997-01-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
10

A 53-year-old man with multidrug resistant tuberculosis (MDR-TB) had been persistently positive for acid-fast bacilli (AFB) both on sputum smear and also on culture with the Ogawa egg medium for 30 years since 1951. The case had been treated previously with isoniazid, rifampin, streptomycin, ethambutol, kanamycin, ethionamide, paraaminosalicylate and cycloserine; however, M. tuberculosis strains isolated from this patient acquired a high resistance to all of these agents. Then, a new regimen of chemotherapy, INH combined with ofloxacin (OFLX) and amoxicillin-clavulanic acid (AMPC/CVA), was applied to the case. He was successfully treated with this regimen, and a marked decrease in the amount of AFB on smear as well as on culture was observed during the course of chemotherapy. No adverse effects were seen meanwhile. These data suggest that it is worth while to try a regimen containing AMPC/CVA and OFLX in the treatment of MDR-TB.
著者
押川 千恵 岸川 禮子 下田 照文 岩永 知秋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.132-137, 2017-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
22

タマネギを摂取することにより耳下腺の腫脹を繰り返し、アナフィラキシー症状を呈したアレルギー性耳下腺炎を経験した。症例は 57 歳、男性で、カレーライス(卵、牛肉、ニンジン、タマネギ入り)を摂取後に両耳下腺の腫脹とともにかゆみ、呼吸困難を伴うアナフィラキシー症状を起こした。ステノン管からの唾液は漿液性で混濁は認めず、唾液中に多数の好酸球が認められ、CT、エコー検査にて耳下腺内の導管拡張所見がみられた。アレルギーが関与する反復性耳下腺炎としては、ステノン管から粘稠な線維素塊の排液を認める線維素性唾液管炎が知られているが、本症例では線維素塊の排液は認められず、アレルギー性耳下腺炎の診断とした。抗原特異的 IgE 検査ではヤケヒョウヒダニ、スギ、タマネギが陽性で、タマネギ経口負荷検査にて耳下腺の腫脹が誘発されたことより、タマネギが原因抗原と同定した。タマネギの摂取を回避し、抗アレルギー剤を適宜使用することで良好なコントロールが得られている。これまで食事と関連するアレルギー性耳下腺炎や線維素性唾液管炎の報告はあるが、原因抗原を同定できることは非常にまれである。頻度は少ないが、反復する耳下腺腫脹を認める場合は、本疾患を念頭に置いておく必要がある。
著者
岸川 禮子 宗 信夫 井上 定三 上村 正行 家守 千鶴子 河田 賢治 栗田 建一 城崎 拓郎 竹田 和夫 野上 兼一郎 三橋 勝彦 宿久 修 山田 篤伸 奥村 康 西間 三馨 石川 哮
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.127-136, 2007
被引用文献数
1

通常の薬物治療を行っているスギ花粉症患者を対象に,カテキンより強力な抗アレルギー性を有すると報告されているメチル化カテキン含有品種べにふうき茶の飲用効果を,やぶきた茶飲用群と花粉飛散時期に比較検討した.<br> 福岡県内 12 施設の耳鼻咽喉科医院を受診したスギ花粉症患者 486 例に,単盲検法に準じてべにふうき茶飲用群(A 群)とやぶきた茶飲用群(B 群)に分けて 2005 年 2 月 1 日から毎日,スギ,ヒノキ科花粉飛散終了まで飲用させた.症状の重症度,薬剤使用量および QOL 障害度をスコア化して 2 群間内で比較した.<br> A 群と B 群との間で眼・鼻症状の日毎推移・QOL 障害度に差はなかった.しかし,スギ花粉飛散時期において合計薬剤スコアが A 群において低く,とくに飛散ピーク時期以降 A 群が B 群より低く推移する傾向が得られた (p < 0.1).<br> 花粉飛散時期に通常量のべにふうき茶を飲用することで,スギ花粉症増悪時に薬剤使用量が対照茶より少なく経過する傾向が得られたことから,補完的治療対策の 1 つの選択肢となる可能性が示唆された.<br>
著者
岸川 禮子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.684-695, 1990
被引用文献数
7

福岡市の花粉症の実態と空中花粉を経年的に調査して地域性を見い出し, 花粉症患者の発症と空中花粉飛散との関係を検討した.市内6施設の耳鼻科医院で, 問診表により花粉飛散期間に一致してアレルギー性鼻炎をもつ症例を1983年から7年間にわたり, 調査・集計した.同時に7ヵ所で空中花粉を重力法により調査し、1月から6月まで半年間のスギ花粉, ヒノキ科花粉およびイネ科花粉について集計した.集計された花粉症患者(4193名)は男女比が4:6で30代(41.9%), 20代(19.8%), 40代(18.4%)の順に多くみられた.スギ花粉症はイネ科花粉症との重複例(23.0%)を含め92.6%, イネ科単独花粉症は7.3%である.関東地方の症例に比較して症状が軽度で, 花粉症の重症度は地域性のあることがわかった.空中花粉捕集数の経年変化は毎年著しい変動を示した.福岡市のスギ花粉症患者はスギ・ヒノキ科空中花粉捕集数の多い年は患者が多く, 少ない年は患者数が減少する傾向にある.
著者
市瀬 孝道 西川 雅高 今井 透 吉田 成一 定金 香里 岸川 禮子 世良 暢之 世良 暢之
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は日本に風送された汚染黄砂の呼吸器系への影響を、実験動物を用いて明らかにすると共に黄砂現象中の健康被害を、呼吸器系を中心とした疫学調査によって明らかにすることを目的する。我々は動物実験で風送黄砂が卵白アルブミンによって誘発される気管支喘息様病態やスギ花粉による鼻炎を悪化させることを明らかにした。また我々は北九州地域における疫学調査おいて、黄砂が花粉症や目の症状を悪化させることを明らかにした。
著者
岸川 禮子 児塔 栄子 岩永 知秋 宗 信夫 家守 千鶴子 庄司 俊輔 西間 三馨 石川 哮
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.369-378, 2001
被引用文献数
8

1987年から,全国11施設で重力法による空中花粉調査を行ってきた.スギ花粉症患者の抗原曝露について明らかにする目的でスギ,ヒノキ科花粉飛散状況の年次変化について検討した.スギ花粉は日本列島の中央部,ヒノキ科は西日本に多く,両者を併せると浜松市が最も多かった.重力法による花粉飛散開始日はすでに患者が発症している報告があり,初観測日から飛散開始日までも飛散期間とみなした.スギ花粉初捕集日からヒノキ科花粉飛散終了日まで平均約100日間で,飛散量の多い地域ほど期間が長かった.この12年間では各地の花粉捕集量の増加傾向,地球温暖化の影響といわれる飛散開始の早期化は明らかではなかった.秋のスギ花粉が各地で捕集された.1994年以降増加傾向にあり,抗原として無視できないようになった.スギ花粉症・感作率増加原因の一つとして,秋のスギ花粉飛散による年間抗原曝露期間の長期化が示唆された.
著者
寺尾 浩 岸川 禮子 加藤 真理子 野田 啓史 岩永 友秋 庄司 俊輔 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1119-1122, 2004
被引用文献数
4

症例は65歳の男性. 主訴は全身の発赤, 腫脹, 掻痒, 意識消失. 既往歴は34歳時より糖尿病発症, 近医受診中. 現病歴は34歳時にパーティーでビールを摂った後, 20分後に全身の発赤, 腫脹, 意識消失が出現した. その後, 患者は様々な食物(すべて小麦が使われていた)摂取後に散歩をし, 蕁麻疹, 意識消失を生じていた. 平成13年2月肉団子入りの食事を摂った後, 散歩に出かけ, 帰宅後, 全身の発赤, 腫脹, 意識消失が出現した. 初診時検査では血清IgE値253IU/ml, IgE RAST値は小麦で2.13UA/ml(クラスを示した. 運動負荷試験方法では空腹時負荷異常なし, アレルギー除去食(小麦, エビ, カニ除去)摂取後, 運動負荷異常なし, 食パン1/2枚摂取後運動負荷異常なし, 食パン1枚摂取後運動負荷で全身に蕁麻疹出現. 以上より小麦を原因とするfood-dependent exercise-induced anaphylaxisと診断した. 物理的アレルギーのなかで, 運動という物理的刺激によりアナフィラキシー症状を呈する疾患を運動誘発性アナフィラキシーという. そのなかでも, 特定の食物摂取時にのみ運動誘発性アナフィラキシー症状が現れる場合, 食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FEIAn)という.