著者
國分 美華子 田中 夏子 榮 結以 掛谷 亮太 野澤 佳司 村津 匠 瀧澤 英紀 小坂 泉 阿部 和時
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.271-274, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
5

治山・砂防堰堤(以下,堰堤)は,渓流生態系に影響を及ぼすと考えられる。本研究では,水生昆虫に焦点をあて,堰堤建設による渓流環境の変化が水生昆虫の生息状況にどのような影響を与えるか検討した。調査は,神奈川県西丹沢地区の中川支流の白石沢上流で行った。堰堤直上流部の土砂堆積域(以下,堰堤土砂堆積域),堰堤の直下流域及び付近に堰堤が建設されていない自然渓流域にて水生昆虫の採集を行った。データ解析の結果,総個体数は堰堤土砂堆積域で最も多く,総種数は自然渓流域で最も多かった。このことから,堰堤建設による渓流の安定化・単調化は,水生昆虫の生息場所を減少させ種の多様性を低下させていると考えられた。
著者
掛谷 亮太 瀧澤 英紀 小坂 泉 園原 和夏 石垣 逸朗 阿部 和時
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-307, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

スギ間伐林分と未間伐林分において 11本のスギを対象に根系分布調査を行った。間伐,未間伐林分のスギともに根系材積は樹幹指数と良好な相関性を持つこと,間伐の実施如何にかかわらず立木本数密度と高い相関性があることが示された。また,根系分布調査結果から崩壊地底面と側面のすべり面に生育する根の量を算出したところ,間伐林分では林齢の増加に伴って根の量が増加しないことが示された。このことは,森林の崩壊防止機能がすべり面に生育する根によって発揮されるとの既往の考えと整合性が取れないことになる。このため,表層型崩壊が発生するような急斜面の表層土は,土質的に明瞭なすべり面が形成され難いことを考えて,崩壊発生時には表層土全体が歪み,亀裂が発生して崩壊に至ること,また表層土中で大量に生育している根系が歪や亀裂の発生を抑制することで崩壊防止機能を発揮していると仮定した。この仮定に基づいて表層土中の根系量を算出したところ,間伐林分では表層崩壊が多く発生しやすい 10~30年生にかけて根系量が未間伐林分よりも多いこと,また既往の研究成果と同じく林齢の増加に伴って崩壊防止機能が強くなることを裏付ける結果が得られた。