著者
阿部 和時 黒川 潮 竹内 美次
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.225-235, 2004-09-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 3

間伐は健全な人工林を成立させ, 良質な木材を生産するために欠くことのできない重要な施業である。近年, 日本の人工林では森林・林業を取り巻く情勢が悪化して間伐を実施することができず, 細い木が林立した立木本数密度の高い人工林が増えている。このような林分では根系の発達が悪く, 森林が持つ表層崩壊防止機能が劣るのではないかとの懸念が強い。このため, 既往の研究をもとに間伐の影響も加えた森林の崩壊防止機能を評価できる方法を提案することを目的とした。ここでは日本の主要造林樹種であるスギの人工林を対象とした。本手法を提案するに当たり, 立木密度1400本/haの間伐林分と3400本/haの非間伐林分における根系分布状態を比較調査した結果, 根の全体積や深さ方向への体積分布, 最大分布深さ等について両者の間に明瞭な違いがなかったため, 根の分布量推定には同じ方法を用いることにした。また, 間伐された木の根が徐々に腐朽して崩壊防止機能が減少する過程を根の引き抜き試験によって調査したところ, 間伐後約10年で根の引き抜き抵抗力は消失することが明らかになった。これらの調査結果を加え, 間伐・非間伐林分における崩壊防止力の変化を評価できる手法を完成した。この手法を用いてシミュレーションしたところ, 強い間伐を多く実施した林分の方が崩壊防止力は低いことが示された。特に, 30~40年生以上の壮齢林における間伐は崩壊防止力の上昇傾向を大きく鈍らせた。しかし, 一般的に間伐が15年生頃から行われることを考えると, 表層崩壊が多発しやすい20年生以下の幼齢林では間伐の影響が現れることはなかった。また, 20年生以上の林分で一般的な強度の間伐が行われても, 斜面安全率が1.0を下回らないことが示された。この結果から, 間伐は病中害や気象害などに強い健全な森林を造成するために実施し, このような健全な森林が形成されることで必然的に崩壊防止機能も発揮されると考えるべきであることを指摘した。
著者
掛谷 亮太 瀧澤 英紀 小坂 泉 園原 和夏 石垣 逸朗 阿部 和時
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-307, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
13

スギ間伐林分と未間伐林分において 11本のスギを対象に根系分布調査を行った。間伐,未間伐林分のスギともに根系材積は樹幹指数と良好な相関性を持つこと,間伐の実施如何にかかわらず立木本数密度と高い相関性があることが示された。また,根系分布調査結果から崩壊地底面と側面のすべり面に生育する根の量を算出したところ,間伐林分では林齢の増加に伴って根の量が増加しないことが示された。このことは,森林の崩壊防止機能がすべり面に生育する根によって発揮されるとの既往の考えと整合性が取れないことになる。このため,表層型崩壊が発生するような急斜面の表層土は,土質的に明瞭なすべり面が形成され難いことを考えて,崩壊発生時には表層土全体が歪み,亀裂が発生して崩壊に至ること,また表層土中で大量に生育している根系が歪や亀裂の発生を抑制することで崩壊防止機能を発揮していると仮定した。この仮定に基づいて表層土中の根系量を算出したところ,間伐林分では表層崩壊が多く発生しやすい 10~30年生にかけて根系量が未間伐林分よりも多いこと,また既往の研究成果と同じく林齢の増加に伴って崩壊防止機能が強くなることを裏付ける結果が得られた。
著者
黒川 潮 小川 泰浩 岡部 宏秋 阿部 和時
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.63-79, 2010
被引用文献数
1

近年の土砂災害。2000年6月より始まった三宅島雄山の噴火活動は、それ以前まで約20年周期で活動してきた形態と異なり、約2,500年ぶりとなるカルデラを形成する活動となった。8月末までの7回の噴火により約1,100万m3の火山灰を噴出し、現在でも噴火口から二酸化硫黄(SO2)を主成分とする火山ガスを放出している。そのため、三宅島の住民約3,800名は9月2日の避難指示を受けて全島避難し、その避難生活は2005年2月まで4年5ヶ月の長期間に及んだ。全島避難中、山頂付近を中心として大量の樹木が枯死し、三宅島の森林面積4,000haのうち、およそ60%の2,500haに被害が生じた。保水力を失った地表面に堆積した火山灰は年間約3,000mmもの降雨によって表面が侵食され現在でも泥流の発生源となっている。このため復旧においては山腹付近における早期の緑化が求められたが、当時三宅島における緑化はいくつかの点において困難な状況であった。1つ目として激しい表面侵食によって種子が定着する前に流されてしまうこと。2つ目として火山ガスに耐性のある植物種を選定する必要があること。3つ目として三宅島は離島という隔離された環境にあるため、種子が大量に確保できる外来草本による緑化を行うことは島固有の生態系に影響を与えると考えられることである。本稿では以上の問題点を踏まえ、著者らが2000年の三宅島噴火活動後からこれまでに実施してきた土砂生産・流出の実態調査及び植生回復に向けた復旧対策についてとりまとめたものを報告する。
著者
阿部 和時 黒川 潮 浅野 志穂 岡本 隆 松山 康治 落合 博貴 寺嶋 智巳 島田 和則 野口 宏典 大丸 裕武 宮縁 育夫 小川 泰浩
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-96, 2002-08-31
被引用文献数
6 5

2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し,現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では,このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので,空中写真による森林被害区分を行い,それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果,降灰が堆積し形成された地表面は流速が20〜35cm/secと早く,浸透性が低いこと,しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE)によって相対的な面状侵食の危険度を,火口を中心とした14.5km^2の範囲について示した。