著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 服部 潤 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群は、坐骨神経が梨状筋下孔を通過する際に梨状筋により絞扼を受け、殿部痛と下腿への疼痛・痺れを出現させる。しかし、臨床上よく観察すると、同時に外側大腿皮神経(以下、LFCN)領域である鼠径部外側から大腿後外側に疼痛・痺れを認める症例に遭遇する。 今回、梨状筋症候群にLFCN障害を合併する割合と、その合併機序について考察を加えたので報告する。 尚、症例には、本研究の説明を十分に行い、承諾を得た上で実施した。【対象及び方法】 2012年1月から6月までに当院を受診、梨状筋症候群と診断された30例30肢(男性:9例、女性:21例、平均年齢54.0±20.3歳、左:13肢、右:17肢)である。当院における梨状筋症候群の診断は、①梨状筋の圧痛と下肢への放散痛を認める事、②各種梨状筋症候群の整形外科テストが陽性である事、③長母趾伸筋、長母趾屈筋の筋力低下を認める事、④画像上、明らかな脊髄内病変を認めない事の全4項目を満たしたものであり、これを単独型とした。 さらに、⑤疼痛・痺れがLFCN領域まで及んでいる事、⑥LFCNが走行する鼠径部でチネル徴候を認める事、⑦膝関節30°屈曲位での股関節伸展・内転・外旋(LFCN伸張テスト)でLFCN領域に疼痛・痺れを認める事の全7項目を満たしたものを梨状筋症候群とLFCN障害の合併型とした。【結果】 単独型は、22例22肢(男性:8例、女性:14例、平均年齢:49.5±21.3歳、左:7肢、右:15肢)であり、73.3%であった。 合併型は、8例8肢(男性:1例、女性:7例、平均年齢:60.8±15.1歳、左:6肢、右:2肢)であり、26.7%であった。【考察】 梨状筋症候群の特異的所見は、殿部痛と坐骨神経領域における疼痛・痺れである。しかし、臨床ではLFCN領域にも症状を認めるケースは少なくない。本研究の結果では、梨状筋症候群に合併するLFCN障害は26.7%であった。 LFCNは鼠径部の筋裂口内の腸骨筋表層に位置し、骨盤内から骨盤外へ出る境界部では非常に狭いスペースを鋭角に曲がっているため、機械的に絞扼や摩擦されやすい環境下にある。さらに、同部のLFCNは、鼠径靭帯と共に、腸骨筋や縫工筋に被覆されているため、これらの筋に攣縮や短縮に伴う筋内圧が上昇した場合、LFCNの絞扼はより顕著になる。LFCNの走行は上前腸骨棘の内側から表層に出て尾側かつ外側へ向かい、大腿遠位から後外側まで枝を伸ばしている。そのため、股関節の伸展・内転・外旋で伸張される。また、梨状筋は、その解剖学的走行上、屈曲・内転・内旋で伸張され、攣縮が生じている場合、坐骨神経を絞扼する。つまり、梨状筋とLFCNは股関節の内転運動にて伸張されるといった共通の特徴を有している。これらの解剖学的理由から、梨状筋に攣縮が生じ伸張ストレスが加えられる事により坐骨神経を絞扼すると同時にLFCNも伸張されやすいと考えられる。 以上より、梨状筋症候群にはLFCN領域の疼痛または痺れも出現しやすく、臨床では評価しておく必要がある。 また、今後の課題として、どの筋がLFCNを絞扼させやすいのかを鑑別し、治療へつなげる事が重要であると考えられる。
著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.100, 2011 (Released:2011-12-22)

【はじめに】 内側型変形性膝関節症(以下,内側OA)は,関節軟骨の変性を基盤とした非炎症性の疾患である.臨床的症状として動作の開始時・立ち上がり・階段昇降時に膝関節内側部痛を訴え,様々な病態を合併する.その中でも,鵞足炎はもっとも多い合併症の一つであるが,内側OAは,膝内反,下腿内旋位を呈しているため,鵞足はむしろ弛緩しており,これまでのところ,鵞足炎を有した内側OAの発症機序は明らかにされてこなかった. 今回,内側型OAの荷重・非荷重のX-pを検討する事で,鵞足炎の引き金となる特徴的な所見が得られたので報告する. 【対象および方法】 平成21年4月から平成23年5月までに当院を受診し,内側OAと診断された47例47足である(男性:13例13足,女性:34例34足,年齢:68.02 ±11.21歳).OAの重症度分類は,腰野の分類で,grade 0は0例,grade1は16例,grade2 は25例,grade 3は4例, grade 4 は2例,grade 5は0例である. 方法は, 鵞足部に圧痛や同部に疼痛が認められた群を鵞足炎群(25例25足,男性:4例,女性21例,平均年齢:66.10±12.36歳)と圧痛や同部に疼痛が認められなかった群を非鵞足炎群(22例22足,男性:9例,女性13例,平均年齢:69.14±9.62歳)に分類した.つづいて,X-pより荷重時・非荷重時の大腿骨内側顆と脛骨内側顆の距離を計測(荷重時値・非荷重時値,単位:_mm_)した.さらに,非荷重時と荷重時における大腿骨内側顆の距離の差(移動量,単位:_mm_)を計測した.また,FTA,非荷重時FTAについても計測した.尚,統計学的処理はノンパラメトリック検定,Mann-WhitneyU検定を使用した. 【結果】 鵞足炎群の非荷重時値は7.21±3.05_mm_,荷重時値は8.33±3.23_mm_,移動量は内側へ1.12±1.61_mm_,FTAは183.91±4.75°,非荷重時FTAは181.38±2.11°であった.非荷重値と荷重値は,有意差を認めた (p<0.01).鵞足炎無し群の非荷重時値は8.26_mm_±2.2_mm_,荷重時値は7.31±2.49_mm_,移動量は外側0.96±1.13_mm_,FTAは182.77±1.82°,非荷重時FTAは180.77±2.41°であった.非荷重値と荷重値では有意差は認められなかった.また,鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値,の有意差が認められなかったが,鵞足炎群と鵞足炎無し群の移動量の差は,有意差を認めた(p<0.001). 【考察】 鵞足炎は,鵞足構成筋による鵞足腱炎と鵞足腱深層に位置する滑液包による鵞足包炎の両者を含み,スポーツ障害として代表的な疾患である.その臨床的な特徴所見は,鵞足部への圧痛や同部への動作時痛である.圧痛の原因は,脛骨回旋の不安定性により鵞足腱や鵞足滑液包表面に対する直接的な摩擦や圧迫が持続的に加わり,生理的限界を超える過大な応力が炎症を引き起こすと言われている.スポーツ障害膝における鵞足炎の発症は,外反膝・knee in toe outを呈するアライメントである事が多い.鵞足腱には伸張ストレスが加わりやすいため,その発症は理解しやすい.しかし,内側OAでは鵞足はむしろ弛緩位であるため,その肢位を考慮すると発症要因が不明となる. そこで,我々はX-pにて内側OAにおける荷重位・非荷重位を比較検討してみた.鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値の有意差が認められなかったことから,大腿骨内側顆の形態的構造が鵞足炎を発症するとは考えられない.しかし, 鵞足炎群における非荷重時値と荷重時値の差は認められ,鵞足炎無し群では認められなかったこと,さらに,鵞足炎群の移動量と鵞足炎無し群の移動量の差も認められたことから,鵞足炎群では,荷重時に大腿骨の内側への移動量が大きくなることで,鵞足構成筋に伸張ストレスが生じ,鵞足炎が発症したと考えられる. 鵞足周囲における停止部の詳細な構造は,縫工筋腱は下腿筋膜に覆われ,その間に長い線維束が存在する.縫工筋を覆っている下腿筋膜の深層にも線維束が位置し,その直下に薄筋腱が位置している.そして,半腱様筋腱,半膜様筋腱の拡張線維,内側側副靭帯という順で停止している.つまり,大腿骨の内側偏位に対して,鵞足構成筋はスタビライザーとして機能するが,縫工筋・薄筋は長い線維束や下腿筋膜で覆われているため,可動性・滑動性が少ないと考えられる.特に,薄筋腱は大腿骨内側顆の内側かつ深層を走行するため,内側偏位に対して直接的にストレスを受けやすいと考えられる.一方,半腱様筋腱の表層には,縫工筋腱・薄筋腱を覆っている様な組織・線維は存在しないため,可動性・活動性があり大腿骨内側偏位に対するストレスから免れやすいと考えられる. これらのことから,大腿骨の内側偏位には鵞足筋の中でも,縫工筋腱,薄筋腱が伸張ストレスをうけやすく,鵞足炎を生じたのではないかと考えられる.
著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.100, 2011

【はじめに】内側型変形性膝関節症(以下,内側OA)は,関節軟骨の変性を基盤とした非炎症性の疾患である.臨床的症状として動作の開始時・立ち上がり・階段昇降時に膝関節内側部痛を訴え,様々な病態を合併する.その中でも,鵞足炎はもっとも多い合併症の一つであるが,内側OAは,膝内反,下腿内旋位を呈しているため,鵞足はむしろ弛緩しており,これまでのところ,鵞足炎を有した内側OAの発症機序は明らかにされてこなかった. 今回,内側型OAの荷重・非荷重のX-pを検討する事で,鵞足炎の引き金となる特徴的な所見が得られたので報告する. 【対象および方法】平成21年4月から平成23年5月までに当院を受診し,内側OAと診断された47例47足である(男性:13例13足,女性:34例34足,年齢:68.02 ±11.21歳).OAの重症度分類は,腰野の分類で,grade 0は0例,grade1は16例,grade2 は25例,grade 3は4例, grade 4 は2例,grade 5は0例である. 方法は, 鵞足部に圧痛や同部に疼痛が認められた群を鵞足炎群(25例25足,男性:4例,女性21例,平均年齢:66.10±12.36歳)と圧痛や同部に疼痛が認められなかった群を非鵞足炎群(22例22足,男性:9例,女性13例,平均年齢:69.14±9.62歳)に分類した.つづいて,X-pより荷重時・非荷重時の大腿骨内側顆と脛骨内側顆の距離を計測(荷重時値・非荷重時値,単位:_mm_)した.さらに,非荷重時と荷重時における大腿骨内側顆の距離の差(移動量,単位:_mm_)を計測した.また,FTA,非荷重時FTAについても計測した.尚,統計学的処理はノンパラメトリック検定,Mann-WhitneyU検定を使用した.【結果】鵞足炎群の非荷重時値は7.21±3.05_mm_,荷重時値は8.33±3.23_mm_,移動量は内側へ1.12±1.61_mm_,FTAは183.91±4.75°,非荷重時FTAは181.38±2.11°であった.非荷重値と荷重値は,有意差を認めた (p<0.01).鵞足炎無し群の非荷重時値は8.26_mm_±2.2_mm_,荷重時値は7.31±2.49_mm_,移動量は外側0.96±1.13_mm_,FTAは182.77±1.82°,非荷重時FTAは180.77±2.41°であった.非荷重値と荷重値では有意差は認められなかった.また,鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値,の有意差が認められなかったが,鵞足炎群と鵞足炎無し群の移動量の差は,有意差を認めた(p<0.001).【考察】 鵞足炎は,鵞足構成筋による鵞足腱炎と鵞足腱深層に位置する滑液包による鵞足包炎の両者を含み,スポーツ障害として代表的な疾患である.その臨床的な特徴所見は,鵞足部への圧痛や同部への動作時痛である.圧痛の原因は,脛骨回旋の不安定性により鵞足腱や鵞足滑液包表面に対する直接的な摩擦や圧迫が持続的に加わり,生理的限界を超える過大な応力が炎症を引き起こすと言われている.スポーツ障害膝における鵞足炎の発症は,外反膝・knee in toe outを呈するアライメントである事が多い.鵞足腱には伸張ストレスが加わりやすいため,その発症は理解しやすい.しかし,内側OAでは鵞足はむしろ弛緩位であるため,その肢位を考慮すると発症要因が不明となる.そこで,我々はX-pにて内側OAにおける荷重位・非荷重位を比較検討してみた.鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値の有意差が認められなかったことから,大腿骨内側顆の形態的構造が鵞足炎を発症するとは考えられない.しかし, 鵞足炎群における非荷重時値と荷重時値の差は認められ,鵞足炎無し群では認められなかったこと,さらに,鵞足炎群の移動量と鵞足炎無し群の移動量の差も認められたことから,鵞足炎群では,荷重時に大腿骨の内側への移動量が大きくなることで,鵞足構成筋に伸張ストレスが生じ,鵞足炎が発症したと考えられる.鵞足周囲における停止部の詳細な構造は,縫工筋腱は下腿筋膜に覆われ,その間に長い線維束が存在する.縫工筋を覆っている下腿筋膜の深層にも線維束が位置し,その直下に薄筋腱が位置している.そして,半腱様筋腱,半膜様筋腱の拡張線維,内側側副靭帯という順で停止している.つまり,大腿骨の内側偏位に対して,鵞足構成筋はスタビライザーとして機能するが,縫工筋・薄筋は長い線維束や下腿筋膜で覆われているため,可動性・滑動性が少ないと考えられる.特に,薄筋腱は大腿骨内側顆の内側かつ深層を走行するため,内側偏位に対して直接的にストレスを受けやすいと考えられる.一方,半腱様筋腱の表層には,縫工筋腱・薄筋腱を覆っている様な組織・線維は存在しないため,可動性・活動性があり大腿骨内側偏位に対するストレスから免れやすいと考えられる. これらのことから,大腿骨の内側偏位には鵞足筋の中でも,縫工筋腱,薄筋腱が伸張ストレスをうけやすく,鵞足炎を生じたのではないかと考えられる.
著者
赤羽根 良和 永田 敏貢 斉藤 正佳 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.125, 2011 (Released:2011-12-22)

【はじめに】 外傷性頚部症候群(以下、WAD)は交通外傷をはじめ、外力によって発生する頭部・頚部・肩甲部痛を包括した症候群である。その病態は筋、筋膜、靭帯、椎間関節、椎間板などの頚椎支持機構の損傷を意味する。その中でも筋の損傷は、修復過程の中で攣縮に伴う硬結状態を呈しやすく、鋭い疼痛の発生や頚椎可動域の著しい制限を引き起こすといわれている。 本研究では数あるWADの症状の中で、後頭部から頭頂部にかけての範囲に生じる頭痛について、運動療法と物理療法において治療成績を比較検討したので報告する。 【対象の選定について】 対象の選定方法としては、_丸1_愁訴に頭痛を認めること、_丸2_大後頭神経に限局した圧痛があり、圧迫を加えると後頭部に放散痛を認めること、_丸3_頚部の屈曲可動域が屈曲30°以下に制限されていること、_丸4_肩峰床面距離(以下AFD)は2横指以上認め、いわゆる猫背姿勢を呈すること、_丸5_頭痛は臥床時と比較して座位・立位姿勢の持続により増悪しやすいこと、_丸6_定期的に週に3回の来院が可能であることの6項目を全て満たしたものとした。 【対象】 対象は、停車中に側方および後方からの追突により頭・頚部を交通外傷されて、対象の選定条件を全て満たした30例(男性12例、女性18例、平均年齢42.8歳)とした。さらに運動療法を実施した15例(男性6例、女性9例、平均年齢42.5歳)と物理療法を実施した15例(男性6例、女性9例、平均年齢43.1歳)に分類した。 頭痛を主体としたWADの治療効果を検定するに当たり、交通外傷後から運動療法および物理療法の開始期間、頭痛が発生するまでの期間、初診時のX線側面像における第1頚椎の前縁と後縁を結んだ上縁から、第7頚椎椎体上縁までのなす角(以下、頚椎前弯角と略す)、初診時の頚部屈曲角度、初診時のAFDは両群間に有意差はなく、妥当な比較検討が可能と判断した。 治療効果の判定には頚椎屈曲角度、頚椎伸展角度、AFD、頭痛が消失した割合を、治療開始後2週、4週、6週の時点で求めて運動療法群と物理療法群で比較検討した。 【運動療法】 _丸1_姿勢の矯正を目的としたエクササイズ 猫背姿勢となった脊柱アライメントを、生理的な頚椎の前弯と胸椎の後弯位を再獲得し、頭部の位置が矯正されることを目的に実施した。 _丸2_頭半棘筋のリラクゼーション 損傷した頭半棘筋の攣縮を改善させ、筋肉内を貫通する大後頭神経が除圧されることを目的に実施した。 【物理療法】 ソーマダイン 損損した軟部組織の修復および治癒の促進を目的に、愛知電子工業社のソーマダイン(SIRIUS)を使用した。 【解析手順】 頚部の屈曲角度、伸展角度、AFD、頭痛消失期間について運動療法群と物理療法群で比較検討をした。統計学的検討においては、スチューデントのT検定およびマン・ホイットニーのU検定を用いた。 【結果】 頚部の屈曲角度の推移は、治療開始後2、4週では有意差を認めなかったものの、6週では運動療法群の方が有意に改善された(p<0.05)。 頚部の伸展角度の推移は、治療開始後2週では有意差を認めなかったものの、4、6週では運動療法群の方が有意に改善された(p<0.05)。 AFDの推移は、治療開始後2、4、6週において、有意に可動域は良好であった(p<0.05)。頭痛が消失した割合は、治療開始後2、4週では有意差を認めなかったものの、6週では運動療法群の方が消失した割合が多かった(p<0.05)。 【考察】 頚部周囲筋群などの攣縮に伴う頚部の屈曲制限は、治療開始後6週以降において、頭半棘筋のリラクゼーションと大後頭神経を除圧する運動療法が有効と考えられた。 またWAD患者では、頚部・胸部周囲筋のバランス機構が破綻するため、頚椎の前弯消失と胸椎過後弯化を招来し、頭部は胸郭よりも前方位となり、肩甲帯はプロトラクトする。このため早期から頚部の伸展角度とAFDを改善させ脊柱姿勢を矯正することは、頚部周囲筋群の持続的な攣縮を緩和するきっかけになり、頭痛の速やかな改善につながると考えている。 また頭痛の改善については、治療開始後6週以降において運動療法群の方が有意に消失した割合が多かった。これは早期から頭半棘筋のリラクゼーション、大後頭神経の除圧および姿勢の矯正を速やかに図ったことが要因と考えられる。しかし治療開始4週間以内であればソーマダインは運動療法と同様な頭痛の治療効果が期待できると考えられる。4週以内であれば、簡便であり短い治療時間で効果が発揮できるソーマダインが有効であり、また4週以上継続する場合は、運動療法に治療方針を変えるなどの治療戦略が重要と考えられた。