著者
服部 潤吉
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.185-196, 2008-03-10

わが国では精神科病院において長期入院の問題が続いている。入院患者の特徴は統合失調症、長期入院、高齢者が多いことなどである。以前から、それらの人たちの受け入れ先としてグループホームの重要さが言われている。グループホームは単なる住居ではなく、自由でさまざまな支援と仲間がいることが特徴である。ここでは新潟県内の精神障害グループホーム調査から、そこでの障害者の特徴、支援の内容、課題などについて研究した。特に2005年から実施された障害者自立支援法後も、精神障害者の生活を支えるものとなっていないばかりか、むしろより困難な状況になっていることがわかった。今後の課題について考察する。
著者
田島 恵莉香 富永 大志 高橋 遼 吉村 久仁子 服部 潤 竹内 康雄
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.599-604, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
19

カフェイン過量摂取の報告は本邦でも年々増加傾向にある. 本稿ではカフェインの大量服用から急性カフェイン中毒に至ったが, 急性期に血液透析を施行し, 良好な経過をたどった症例を経験したので報告する. 症例は基礎疾患のない32歳女性, 市販の眠気予防薬にてカフェイン24gを自殺目的で摂取後, 嘔吐, 振戦を認め, 当院へ受診となった. 来院時患者は興奮状態であり, 頻脈, 頻呼吸, 振戦, 発汗, 筋緊張の亢進を認めた. 心拍数は142回/分で二段脈を認めた. カフェイン致死量を超える24gを摂取しており, 難治性不整脈の出現が危惧されたため, 血液透析を施行したところ, 速やかに臨床症状は改善し, カフェイン血中濃度も著明に低下した. 致死量を内服した急性カフェイン中毒の症例に対して, 血液透析は有効な治療手段の一つであると考えられる.
著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 服部 潤 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群は、坐骨神経が梨状筋下孔を通過する際に梨状筋により絞扼を受け、殿部痛と下腿への疼痛・痺れを出現させる。しかし、臨床上よく観察すると、同時に外側大腿皮神経(以下、LFCN)領域である鼠径部外側から大腿後外側に疼痛・痺れを認める症例に遭遇する。 今回、梨状筋症候群にLFCN障害を合併する割合と、その合併機序について考察を加えたので報告する。 尚、症例には、本研究の説明を十分に行い、承諾を得た上で実施した。【対象及び方法】 2012年1月から6月までに当院を受診、梨状筋症候群と診断された30例30肢(男性:9例、女性:21例、平均年齢54.0±20.3歳、左:13肢、右:17肢)である。当院における梨状筋症候群の診断は、①梨状筋の圧痛と下肢への放散痛を認める事、②各種梨状筋症候群の整形外科テストが陽性である事、③長母趾伸筋、長母趾屈筋の筋力低下を認める事、④画像上、明らかな脊髄内病変を認めない事の全4項目を満たしたものであり、これを単独型とした。 さらに、⑤疼痛・痺れがLFCN領域まで及んでいる事、⑥LFCNが走行する鼠径部でチネル徴候を認める事、⑦膝関節30°屈曲位での股関節伸展・内転・外旋(LFCN伸張テスト)でLFCN領域に疼痛・痺れを認める事の全7項目を満たしたものを梨状筋症候群とLFCN障害の合併型とした。【結果】 単独型は、22例22肢(男性:8例、女性:14例、平均年齢:49.5±21.3歳、左:7肢、右:15肢)であり、73.3%であった。 合併型は、8例8肢(男性:1例、女性:7例、平均年齢:60.8±15.1歳、左:6肢、右:2肢)であり、26.7%であった。【考察】 梨状筋症候群の特異的所見は、殿部痛と坐骨神経領域における疼痛・痺れである。しかし、臨床ではLFCN領域にも症状を認めるケースは少なくない。本研究の結果では、梨状筋症候群に合併するLFCN障害は26.7%であった。 LFCNは鼠径部の筋裂口内の腸骨筋表層に位置し、骨盤内から骨盤外へ出る境界部では非常に狭いスペースを鋭角に曲がっているため、機械的に絞扼や摩擦されやすい環境下にある。さらに、同部のLFCNは、鼠径靭帯と共に、腸骨筋や縫工筋に被覆されているため、これらの筋に攣縮や短縮に伴う筋内圧が上昇した場合、LFCNの絞扼はより顕著になる。LFCNの走行は上前腸骨棘の内側から表層に出て尾側かつ外側へ向かい、大腿遠位から後外側まで枝を伸ばしている。そのため、股関節の伸展・内転・外旋で伸張される。また、梨状筋は、その解剖学的走行上、屈曲・内転・内旋で伸張され、攣縮が生じている場合、坐骨神経を絞扼する。つまり、梨状筋とLFCNは股関節の内転運動にて伸張されるといった共通の特徴を有している。これらの解剖学的理由から、梨状筋に攣縮が生じ伸張ストレスが加えられる事により坐骨神経を絞扼すると同時にLFCNも伸張されやすいと考えられる。 以上より、梨状筋症候群にはLFCN領域の疼痛または痺れも出現しやすく、臨床では評価しておく必要がある。 また、今後の課題として、どの筋がLFCNを絞扼させやすいのかを鑑別し、治療へつなげる事が重要であると考えられる。
著者
服部 潤 赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群とは、坐骨神経をはじめとする末梢神経が骨盤出口部で梨状筋により絞扼や圧迫などの侵害刺激を受けることで、疼痛や痺れが惹起される病態である。また、障害される神経は、教科書的には坐骨神経とされているが、実際の臨床では後大腿皮神経や下殿神経の症状も呈することが多い。そのため、臨床症状が多様化ことも少なくない。今回、末梢神経障害を臨床症状から分類し、その割合について検討を行ったので報告する。【対象】 対象は、2012年1月から6月までに梨状筋症候群と診断された25例(男性8例、女性17例、右13肢、左11肢、左右1肢)である。平均年齢は54.3±19.7歳であり、発症から来院までの期間は平均52.7±66.0日であった。【方法】 末梢神経障害の識別方法について述べる。後大腿皮神経(第1-3仙骨神経)は、感覚枝のみを有する。そのため、臀部下部から大腿後面における神経領域内に疼痛及び感覚障害を認めた場合とした。総腓骨神経(第4腰神経-第2仙骨神経)と脛骨神経(第4腰神経-第3仙骨神経)は感覚枝と運動枝を有する。そのため、前者は、下腿外側から足背における疼痛及び感覚障害と長母趾伸筋の筋力低下を認めた場合とし、後者は、下腿後面から足底における疼痛および感覚障害と長母趾屈筋の筋力低下を認めた場合とした。上殿神経(第4腰神経-第1仙骨神経)と下殿神経(第5腰神経-第2仙骨神経)は運動枝のみを有する。前者は、中殿筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とし、後者は、大臀筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とした。 また、それぞれを単独例と合併例に分類した。【結果】 神経別に分類すると、総腓骨神経障害は22/25例(88.0%)、後大腿皮神経障害は21/25例(84.0%)と多く認められ、下殿神経障害は3/25例(12.0%)、上殿神経障害は2/25例(8.0%)となった。脛骨神経障害の症例は、0/25例(0%)であり、今回の検討では認めなかった。 症状別に分類すると、後大腿皮神経+総腓骨神経16/25例(64.0%)、後大腿皮神経+下殿神経1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+下殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経+下殿神経群が1/25例(4.0%)であった。単独例は、総腓骨神経3/25例(12.0%)、後大腿皮神経2/25例(8.0%)であった。【考察】 梨状筋症候群は、坐骨神経の障害とされているが、今回の調査では主に総腓骨神経と後大腿皮神経による障害を多く認める結果となった。また、少数ではあるが下殿神経と上殿神経障害も認められた。つまり、梨状筋症候群の病態把握や治療には、坐骨神経のみならず、他の末梢神経障害の合併も考慮した複合的な病態把握が重要と考えられる。
著者
赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 服部 潤 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>外傷性頚部症候群(WAD)とは、交通外傷後の包括した臨床症状を意味し、我々はこれまでに、頭頚部移行部障害に対する運動療法の有効性について報告してきた。<br> 今回、WAD後に頚胸椎移行部障害(CTD)を呈した症例に対し、当院で実施している運動療法を行った結果、良好な経過が得られたので、その方法論について紹介する。<br> 尚、本研究は患者に対して十分な説明と了解を得た上で実施した。<br><b>【対象】 </b>2009年4月から2012年4月までに、交通外傷により頚(C)・胸椎(T)を損傷し、当院を受診した症例のうち、対象の選定を全て満たした20例(男性16例、女性4例、年齢39.6±13.4歳)を対象とした。<br> 対象の選定は、①臨床症状の主体は頚背部痛であること②頚部の伸展時痛を認めること③両肩関節の拳上時痛を認めること④C7/T1を徒手で固定すると、頸椎の伸展時痛や両肩関節の拳上時痛が消失すること⑤C7/T1の椎間関節に圧痛を認めること⑥第1肋骨(R1)に圧痛を認めること⑦消炎鎮痛剤の投与や物理療法を実施するも3ヶ月以上明らかな変化を認めないことである。これらを全て満した場合をCTDと判断した。<br><b>【方法】 </b>運動療法は患者を側臥位にさせて実施した。<br> 椎間関節に対する治療は、PTの一方の手でC7棘突起を固定し、他方の手でT1棘突起を把持する。そこから他方の手でT1を尾側方向に滑らせ、椎間関節を離解する。つづいて、深層筋群を収縮することでT1を頭側方向に滑らせ、椎間関節を閉塞する。この操作を繰り返し行うことで、椎間関節の可動域を増大させていく。<br> R1に対する治療は、PTの一方の手で患者の肩関節を拳上させる。他方の手で、中斜角筋と前鋸筋が結合するR1を尾側に押し込みながら各筋のIb抑制を行う。この操作を片方ずつ実施する。R1に圧痛が消失することを目的に実施する。<br><b>【結果】 </b>椎間関節の圧痛が消失した推移は、4週以内が13名、8週以内が20名、12週以内が20名であった。R1の圧痛が消失した推移は、4週以内が12名、8週以内が18名、12週以内が20名であった。頸椎の伸展時痛が完全に消失した推移は、4週以内が10名、8週以内が16名、12週以内が20名であった。<br><b>【考察】 </b>WADでは、頚背部痛を呈することが多く、3ヶ月以上持続すると、慢性化することも少なくない。<br> 生理学的に、頚部の屈曲運動は上位頸椎が主体であるが、伸展運動は頚椎間のみならず、可動域の少ない頚胸椎移行部間でも生じる。また、両肩関節の拳上時には頚胸椎移行部での屈曲運動とR1の拳上運動が生じる。そのため、CTDを呈すると、これらの一連の運動は制限され、疼痛が誘発される。その一方で、C7/T間を徒手で固定すると、これらの疼痛は消失する。この検査はCTDを見極めるための重要な所見であり、また、椎間関節の圧痛も、そこに病態が潜んでいるのか判断するに有効である。<br> 運動療法の目的は、椎間関節の滑り運動の誘導と、R1に付着する筋の柔軟性を獲得することである。これにより、CTDとR1の生理的な連結運動が再獲得できたことが、症状消失に至ったと考えられる。<br><b>【結論】 </b>WADでは頚背部痛を呈することが多く、その中の一つの病態であるCTDは、我々の実施している運動療法が有効と考えられた。