著者
斎藤 太郎
出版者
内閣府経済社会総合研究所
雑誌
経済分析 (ISSN:04534727)
巻号頁・発行日
vol.208, pp.4-24, 2023-10-25 (Released:2023-12-13)
参考文献数
16

景気動向分析、経済予測を行う民間調査機関の重要な役割のひとつは、経済成長率、物価上昇率などについて精度の高い予測値を作成することである。民間調査機関による実質GDP 成長率の予測誤差は 1980 年度から 2022 年度までの 43 年間の平均で 1.33% (平均絶対誤差)である。実績値が予測レンジ(予測値の最大値~最小値)から外れることも少なくないが、政府経済見通しと比べれば、民間調査機関の予測誤差のほうが小さい。景気の転換点に関する判断は遅れがちだが、成長率の予測値は景気拡張期に上振れ、景気後退期に下振れる傾向がある。このため、予測値の修正方向が景気の転換点を判断する上で有益な情報となりうる。 社会経済情勢の変化に伴い、足もとの景気動向を的確に把握した上で、短期間で予測値を作成することが求められるようになっている。また、従来よりも予測期間を延長する時期が早まり、経済見通しの予測期間が長期化している。 近年は、短期間で景気が大きく変動するケースが増えたことから、足もとの景気動向をより迅速に把握する必要性が高まっており、従来のマクロ経済統計を用いた分析だけでは対応しきれなくなっている。そうした中、オルタナティブデータの有用性が高まっているが、データの制約上の問題もあり、継続的な景気分析に用いるためには課題が多い。内閣府が月次 GDP を公表するようになれば、景気動向の迅速かつ的確な判断に資する可能性がある。