著者
江頭 竜一 斎藤 潤
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.218-226, 2007-07-01
参考文献数
10
被引用文献数
1 7

メタノール水溶液を溶媒とした吸収油の液液抽出に対して,連続式向流接触スプレー塔型の抽出装置を適用した。スプレー塔は構造が簡素であることから,塔内の物質移動現象を検討するのに適している。まず,物質移動係数の算出に必要となる吸収油─メタノール水溶液間の液液平衡を実測し既往の結果と比較した。本報で得られた液液平衡関係と既往の結果とは良好に一致し結果の再現性,信頼性を確認した。ついで,スプレー塔による液液抽出における操作性ならびに分離性について検討した。連続(抽出)相に比較して分散(抽残)相の密度は十分大きく良好な向流接触操作が可能であり,本報の範囲においては分散相の飛まつ同伴やフラッディングは観察されなかった。0.5 mほどの研究室規模のスプレー塔により十分な物質移動が検出され,塔内の物質移動現象の検討が可能であった。同素環化合物など吸収油中の他の成分に比較して含窒素複素環式化合物が選択的に抽出され,これらの成分の分離が可能であった。また,この分離は平衡関係に基く分離であった。本スプレー塔において,含窒素複素環式化合物の収率および分離の選択性は,最高でそれぞれ0.4および30程度であった。連続(抽出)相流量の増加とともに,総括物質移動係数は増加し,連続相側に物質移動抵抗が存在した。<br>