著者
斎藤 祐見子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.1, pp.34-38, 2007 (Released:2007-07-13)
参考文献数
35

Gタンパク質キメラを利用したアッセイ法により,オーファン受容体SLC-1に対する内在性リガンドをラット脳から精製し,メラニン凝集ホルモン(MCH)であることを同定した.MCHは魚類の体色変化を引き起こす一方,哺乳類では視床下部外側野に著しく局在し,摂食行動に深く関与することが知られていた.このように注目される鍵分子でありながらもMCH受容体の正体は謎であった.本受容体の発見により,様々な遺伝子改変動物が作製され,また,選択的アンタゴニスト開発および行動薬理学的解析が大きく進展した.この結果,MCH系は摂食/エネルギー代謝の他に,うつ不安行動にも関与することが強く示唆されている.MCH受容体は創薬創出の有望な標的分子となりつつある.
著者
斎藤 祐見子 Wang Zhiwei 丸山 敬
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.3, pp.190-195, 2006-03-01

オーファンGタンパク質受容体(GPCR)のリガンド探索は新規生理活性物質の発見と新規創薬標的に直結すると考えられている.あるオーファンGPCRのリガンドが既知物質と判明した場合でも研究が飛躍的に進展する.受容体同定により,そのリガンドの既知あるいは未知の生理作用の薬理学的解明が進み,創薬開発を開始することができる.メラニン凝集ホルモン(MCH)とその受容体はそのケースかもしれない.MCHノックアウト(KO)マウスは「ヤセ」であるため,摂食中枢の下流に位置する分子として大きな注目を集めた.1999年にオーファンGPCRの利用によりMCHの受容体が同定され,そのアンタゴニスト開発・KOマウス行動解析が一気に進む.驚いたことにMCHアンタゴニストは摂食行動は勿論「うつ状態」動物モデルに対しても効果を持つことが報告された.オーファンGPCRのリガンドとして発見された他の神経ペプチドも今後の精神病治療にとって有用な標的候補となる可能性がある.<br>
著者
斎藤 祐見子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脳に高発現するMCHR1は摂食・うつ不安に関与するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。分子薬理学的手法により以下のことを明らかにした。I. MCHR1の新しい調節部位の同定(1)MCHR1の細胞内第2ループに存在する高度保存領域DRYはGタンパク質活性化に直接関わる。(2)MCHR1のHelix8領域はGq共役性が鋭敏となる機能亢進型表出に関与する。II. MCHR1結合因子の同定:GαのGDP-GTP交換反応を促進することによりMCHR1のシグナルを抑制するRGSタンパク質を3種類同定し、それぞれMCHR1における相互作用部位が異なる可能性を見出した。