著者
菅原 通子 今井 幸紀 齊藤 詠子 藤盛 健二 新井 晋 稲生 実枝 中山 伸朗 名越 澄子 伴 慎一 持田 智
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1686-1691, 2009 (Released:2012-07-26)
参考文献数
16

【目的と方法】プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor:PPI)の長期投与によって胃底腺ポリープが増大することが報告されている.その病態や機序を明らかにするため,PPI長期投与中に胃底腺ポリープが増大した13症例(男3例,女10例,年齢(平均±2SE)70.5±6.3歳)の臨床的,組織学的特徴を検討した.【結果】ポリープ増大が確認されるまでの内服期間(平均±2SE)は29.9±8.3カ月であり,ポリープの径は投与前5mm未満であったが,投与中に5~15mmに増大した.何れも内視鏡所見では水腫様外観を呈していた.Helicobacter pylori(H. pylori)感染は全例で認められなかった.血清ガストリン値は8例で測定され,うち4例で高値を示した.内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)施行例では,ポリープ増大前の生検組織と比較して,胃底腺ポリープに認められる拡張腺管の拡張の程度が増し,拡張腺管の数も増加していた.内分泌細胞の微小胞巣やカルチノイド腫瘍の所見は認められなかった.【結論】胃底腺ポリープの増大は,H. pylori陰性例にPPIを長期投与することによってPPIの種類に関係なく生じる.胃底腺ポリープ増大の機序のひとつとして,胃底腺ポリープに認められる拡張腺管の拡張の程度の増加,拡張腺管の数の増加の誘発が考えられた.
著者
太田 慎一 伴場 裕巳 今井 幸紀 新井 晋 藤原 研司
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.253-263, 2002-03-05
参考文献数
90
被引用文献数
1

大腸癌の予防は重要な課題であり,この点でプロスタグランジン合成酵素であるCOX-2が注目を集めている.家族性大腸腺腫症ではヒトで有意の腺腫に対する退縮効果が報告された.しかしながらその作用機序に関しては現在も様々な議論がある,ヒトの癌においては臨床的展開が期待されると共に癌発生機構解明の手がかりを与えてくれる可能性のある分野であり,今後の発展が期待される.