著者
新山 智基
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.99-105, 2013

本稿の目的は、トーゴ共和国のブルーリ潰瘍の実態と、現地での国際支援の展開、また、隣国ガーナ共和国・ベナン共和国を比較対象とした支援モデルを明示し、国際機関 (WHO)・政府・NGOの3者間の連携・関係性を明らかにしていくことである。 1998年に設立されたGlobal Buruli Ulcer Initiativeの方針により、トーゴ共和国でもNational Buruli Ulcer Control Programmeが策定された。しかし、その実態は、国内の情勢不安や国家予算の脆弱さから、機能していたとは考えにくい。本格的に機能し始めたのは、DAHW (Deutsche Lepra-und Tuberkulosehilfe、ドイツ) やHandicap International (フランス) の支援組織が活動を開始した2007年以降である。 一般的に、感染症対策における支援機関には、国際機関や被援助国の政府、援助国の政府、NGO、企業などが挙げられる。ブルーリ潰瘍支援に関しては、現在のところ、WHO、被援助国の政府、NGOが挙げられる。これらの組織が、それぞれの役割を果たしながら、各国において連携・関係性を保っている。今回の一連の調査からトーゴ共和国では、不安定な国家情勢や予算の不足による進捗の遅れにより、国家プログラムが隣国のガーナ共和国・ベナン共和国に比べると十分機能せず、NGOが実施の肩代わりをしているのが実態で、隣国とは異なる支援モデルが展開されていることが明らかとなった。
著者
新山 智基
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.99-105, 2013 (Released:2016-06-30)
参考文献数
10

本稿の目的は、トーゴ共和国のブルーリ潰瘍の実態と、現地での国際支援の展開、また、隣国ガーナ共和国・ベナン共和国を比較対象とした支援モデルを明示し、国際機関 (WHO)・政府・NGOの3者間の連携・関係性を明らかにしていくことである。 1998年に設立されたGlobal Buruli Ulcer Initiativeの方針により、トーゴ共和国でもNational Buruli Ulcer Control Programmeが策定された。しかし、その実態は、国内の情勢不安や国家予算の脆弱さから、機能していたとは考えにくい。本格的に機能し始めたのは、DAHW (Deutsche Lepra-und Tuberkulosehilfe、ドイツ) やHandicap International (フランス) の支援組織が活動を開始した2007年以降である。 一般的に、感染症対策における支援機関には、国際機関や被援助国の政府、援助国の政府、NGO、企業などが挙げられる。ブルーリ潰瘍支援に関しては、現在のところ、WHO、被援助国の政府、NGOが挙げられる。これらの組織が、それぞれの役割を果たしながら、各国において連携・関係性を保っている。今回の一連の調査からトーゴ共和国では、不安定な国家情勢や予算の不足による進捗の遅れにより、国家プログラムが隣国のガーナ共和国・ベナン共和国に比べると十分機能せず、NGOが実施の肩代わりをしているのが実態で、隣国とは異なる支援モデルが展開されていることが明らかとなった。
著者
新山 智基
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.185-189, 2012-09-01 (Released:2012-09-28)
参考文献数
8

本稿の目的は、ガーナ共和国内のブルーリ潰瘍の実態と、保健医療に関連する制度である国民健康保険制度との関係を明らかにすることである。 1998 年に設立されたGlobal Buruli Ulcer Initiative を契機に、ガーナ共和国のブルーリ潰瘍対策は、National Buruli Ulcer Control Programme(NBUCP)によって管理・運営されている。ブルーリ潰瘍の治療に関連する費用(患部切除の手術や抗生物質投与に関わる処置など)は無料であり、国家予算と支援組織による寄付金によって運営されている。2003 年に開始された国民健康保険制度は、ブルーリ潰瘍を含む多くの病気が適応外である。そのため、国民健康保険制度を利用した治療は行われず、すべて NBUCP による費用で治療を行わなければならない。 しかし、治療費に関する費用のなかには、包帯などの関連する費用は含まれず、これに対して病院が自己負担しているケースも少なくない。また、運営予算のほとんどが支援組織による寄付によるものである。その実態は、国際援助に依存していることが明らかとなった。
著者
新山 智基
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度の大きな成果は、昨年度の調査を盛り込んだ博士論文「顧みられない熱帯病〈ブルーリ潰瘍問題〉に対する感染症対策ネットワーク構築と小規模NGOの役割」を執筆したことである。本論では次の5点について明らかにしている。第1に、グローバルな感染症対策ネットワークの構築可能性の論議に向け、感染症を取り巻く状況やミレニアム開発目標などの動向に加え、NGOのかかわり、ネットワーク構築といった先行研究の検討を行った。第2に、顧みられない熱帯病・ブルーリ潰瘍問題が抱える問題を明らかにした。第3に、第2で明らかにした問題に対して、どのような対策・支援が実施されてきたのか、ブルーリ潰瘍問題に取り組んできた国際機関(WHO)、政府(被援助国)、NGOの3者を取り上げながらの考察を試みた。第4に、支援団体のなかでも日本で数少ないブルーリ潰瘍支援団体である「神戸国際大学ブルーリ潰瘍問題支援プロジェクト」を取り上げ、活動などの分析を行った。第5に、以上のようなことを踏まえ、これまでブルーリ潰瘍問題に対して、どのような形での支援が展開されてきたのかを考察している。また、2011年3月には、ブルーリ潰瘍対策専門家会議(WHO Annual Meeting on Buruli Ulcer)での報告"An Integrated Approach to Education Aids in West Africa"を行った。