- 著者
-
新沼 星織
宮澤 仁
- 出版者
- 東北地理学会
- 雑誌
- 季刊地理学 (ISSN:09167889)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.4, pp.214-226, 2012 (Released:2012-10-25)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
-
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4
本稿は,2011年の東日本大震災による医療機関への津波被害について,① その地域的特徴を分析し,② 被災患者の内陸部医療機関への搬送状況を検討した。① では,岩手県と宮城県を対象に分析した結果,診療所は中心市街地を沿岸部に形成する岩手県三陸南部地域から宮城県仙台湾地域の北部にかけて浸水率が高く,病院は大規模県立病院の高台立地傾向が強い岩手県より,小規模な市町立病院と民間病院を沿岸部に構える宮城県で浸水率が高いことが明らかとなった。そして ② では,医療機関の浸水率が高かった宮城県南三陸町に注目した調査の結果,隣接する登米市内の医療機関へは,外来診療患者は相当数搬送されていたものの,入院患者の搬送は,病床不足のため限定的であったことがわかった。このことは,平時より縮減体制にある医療システムは,災害時の脆弱性を増大させる可能性を示唆している。