- 著者
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新見 伸吾
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.2041, 2013 (Released:2013-08-14)
これまでに多くのバイオ医薬品が医療の現場に提供され,患者が恩恵を受けているが,有効性及び安全性の観点から世界的に最も問題となっているのが免疫原性である。一般的に,抗原が抗体の産生や細胞性免疫を誘導する性質を免疫原性と呼ぶが,バイオ医薬品の場合は,バイオ医薬品に対して抗体が産生されることを指す。 免疫原性の予測方法として使用頻度の高いのは,T細胞エピトープのin silico予測方法とT細胞を用いたアッセイである。T細胞反応の検出は,通常,ヒト由来の抗原提示細胞とT細胞存在下において,バイオ医薬品あるいはそのペプチドを添加し,T細胞の増殖あるいはサイトカインの遊離を測定することにより行なう。 臨床において免疫原性の主な原因として問題となっているのは,IFN-β等における凝集体,抗体医薬品における特に相補性決定領域のマウス及びヒト由来配列及び酵素補充療法における内在的な酵素欠損による異種タンパク質としての認識である。 産生された抗体は,バイオ医薬品のクリアランスの増加あるいは機能の中和により有効性を低下させる場合があるが,影響を及ぼさない場合もある。また,安全性についてはⅠ型アレルギー,Ⅲ型アレルギー,インフュージョン反応を起こす可能性がある。バイオ医薬品の免疫原性軽減戦略としては,methotrexateのような免疫抑制剤の投与,IVIG (intravenous injection of immunoglobulin)によるレギュラトリーT細胞の誘導,バイオ医薬品投与量の増加により免疫寛容の誘導等が考えられる。 本講演では上記について具体例を示し,免疫原性予測法の現状と問題点,臨床における免疫原性評価のポイント,免疫原性軽減戦略の現状と問題点について考察したい。