著者
新見 槙子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.81-126, 2011

原著論文【目的】本研究の目的は, 1990年代以降から現在までを中心とする, アメリカの学部学生用図書館のサービスと概念の変化の検討をとおして, 学部学生用図書館の変遷を明らかにすることである。【方法】まず, 既往文献をもとに従来から指摘されている学部学生用図書館の変化を整理した。その後, 2009年に学部学生用図書館を設置していた全23大学を対象とする現状調査を行った。調査方法は, ウェブサイトと文献を利用した文献調査とし, 1990年代以降のサービスの内容と実施の背景(理由やプロセスなど)を調査した。顕著な変化があった4大学, 学部学生用図書館を新設した2大学の事例を記述した後に, 1990年代以降の学部学生用図書館の傾向, 変化の背景をまとめた。最後に, 既往文献の整理と本研究の調査結果をもとに, 学部学生用図書館の概念の変化を検討した。【結果】1990年代以降の学部学生用図書館において, 1)サービス面での変化として, a)サービスの集約化, b)教育への関与の強まり, c)学生の学習成果への関与が見られ, 2)実施体制面での変化として, a)図書館システム内での協働, b)教員や他部署との協働が見られた。学部学生用図書館の概念は, 従来の「研究大学における学部学生のための図書館とその図書館によるサービス」から「図書館システム全体による学部学生に対するサービス」に変化した。さらに現在では, 図書館の枠を超え, 「研究大学における学部学生に対するサービス」に変化しつつある。この概念の変化は, 図書館の取り組みが大学全体の取り組みのなかに組み込まれるようになった, あるいは図書館が大学全体というなかに自らの存在を位置づけるようになった現れであるといえる。
著者
新見 槙子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.2144, 2022-11-30 (Released:2022-12-23)

本稿の目的は,創刊号(1972)から120号(2022)までの『大学図書館研究』掲載論文の主題分析によって,執筆者の問題意識や関心の特徴,その変遷を明らかにすることである。【図書館運営】【情報管理】【サービス】の領域のうち,全年代で【情報管理】領域の割合が最も高いが,【サービス】領域の割合も増えつつある。2010年代以降は「電子リソース契約・管理」「オープンサイエンス」「学習支援・教育支援・研究支援」を主題とする論文が多い。『大学図書館研究』掲載論文は,日本の大学図書館の歩みの一端を反映している。