著者
大浦 大輔 角屋 智香 横浜 拓実 新谷 好正 岩崎 素之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10624, (Released:2019-01-12)
参考文献数
19
被引用文献数
2

要旨:急性期虚血性脳卒中に対する血栓除去術では再灌流までの時間が重要であり,術前検査は短時間であることが望まれる.一方で大動脈解離に起因した脳神経症状を呈する症例が報告されており,これを鑑別することは安全な治療を行う上で重要である.我々は3Tesla MRI による胸部スクルーニングMRA を含めた短時間脳卒中プロトコールを169 例に試行した中で2 例の急性A 型大動脈解離を検出した.2 症例とも意識障害により大動脈解離に典型的な胸痛および背部の疼痛の訴えはなく,検査前に急性A 型大動脈解離を示唆する症状は認めなかった.従来,3Tesla MRI での胸部大血管高速MRA は局所磁場不均一から撮像が難しかったが,我々が開発した飽和効果を利用した胸部MRA sequence により迅速に大動脈解離が鑑別され,その後の適切な処置につながった2 症例について報告する.
著者
新谷 好正 伊東 雅基 井戸坂 弘之 中林 賢一 卯月 みつる 新谷 知久 早瀬 知 馬渕 正二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.889-896, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

脳動脈瘤の開頭手術において, クリッピングのために瘤の減圧を要する場面に時折遭遇するが, 母血管の一時遮断が困難な例がみられる. そのような例に房室伝導を強力に抑制する作用をもつadenosine triphosphate (ATP) の急速静注による短時間の循環停止 (transient cardiac arrest : TCA) 法が有効である. 経験した全例において短時間の心停止に伴う動脈瘤の著明な減圧が得られ, 安全なクリッピングに大きく寄与した. 合併症はみられなかった. TCA法に習熟した麻酔科医との緊密な連携が不可欠であるが, 本法は母血管の一時遮断に並んで考慮すべききわめて有用な方法である.