著者
新里 喜宣
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.95-109, 2017-06-03 (Released:2019-05-31)
参考文献数
24

本稿は1960年代から80年代までを対象とし、この時期に台頭した巫俗言説の構造を文化および宗教という観点から捉え、その多様な展開を明らかにしようとする試みである。1950年代において、巫俗はほぼ迷信としてのみ語られていた。しかし、1960年代を基点として国家の民俗政策、そして研究者による学術活動などが本格化することで、巫俗は韓国文化の源泉としてその価値が肯定されるようになっていく。国家や知識人が巫俗を文化として語る際、それが迷信として批判されていることも相まって、巫俗の歴史性にのみ焦点が当てられる傾向が見出せる。現存する巫俗は迷信だが、巫俗は韓国文化の源泉として意味があるという言説である。他方、主に研究者やシャーマンによる巫俗言説は現存する巫俗を肯定し、その宗教的世界観に目を向けようとする。文化と宗教という巫俗言説は、時に対立しながらも韓国社会において巫俗の位相を押し上げる役割を担った。